俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

文字の大きさ
上 下
61 / 96

10-8

しおりを挟む
「少し足開いて」

「ぁ……」

 新たな泡を追加して、彼の手が内腿を撫でる。ゆっくりと上ってくる指先の動きに、堪らず仰け反ると、彼の胸に寄りかかる格好になった。

「洗ってるだけだよ、奈月さん」

 耳元にかかる彼の熱い吐息。指先が付け根をなぞるように動くと、腰が揺れてしまう。足先まで丁寧に指を滑らせた侑李は、自分の胸に寄りかからせた奈月の身体に湯をかける。そして、頬に優しくキスをした。

「終わったよ。ほら、ちゃんとあったまって」

 身体は熱を帯びている。身体の奥で燻るそれは、むしろもどかしいほどだ。
 侑李に立たされた奈月は、湯船に入り、少し乱れた息を整える。その間にさっと身体を洗った侑李は、縮こまる奈月の隣に入ってくると、浮力を利用して自分の足に座らせた。

「気持ちよかった?」

「は、い……」

 抱き寄せられるまま、彼の肩に頭を乗せる。

「包帯、濡らさないようにしないと」

「あっ……」

 腕を持たれて、引き上げられる。そうなると、腕は彼の首に回され、抱きつく形になってしまう。

「こ、れ……」

 カッと顔が熱くなったのは単にお風呂に浸かっているせいだけじゃない。向かい合わせになったことで、彼の胸板に奈月の胸が。そして、太腿に彼の雄々しいモノが当たっていた。

「ごめん、怖い?」

 聞いてくる侑李の眉間に皺が寄っている。奈月は首を横に振り、自分からさらに距離を詰めた。

「私と、いるから?」

「そう。奈月さんといるから」

 吐息が交わるほど顔を寄せると、彼の方からキスをされた。啄むようなキスに微笑むと、またキス。だんだん回数が増えて、舌が絡まり出した頃、侑李の手が腰のラインをなぞった。

「っ、は……」

 浴室に響いた自分の甘い声に、キスをやめた奈月は彼に抱きつく。

「のぼせてしまうね」

 恥ずかしくて顔が上げられなくなった奈月の背を撫で、ぎゅっと抱きしめた侑李はそのまま浴槽を出る。

「あ、歩けますから」

「いいから。しっかり掴まって」

 いわゆるお姫様抱っこで運ばれて、脱衣所で下されたのだが、問答無用で彼に身体を拭かれてしまう。
 彼は用意していた奈月のルームウェアではなく、自分のスウェットの上を取ると頭から被せてくる。そして椅子に座るよう促すと、ドライヤーを取り出し手際良く髪を乾かし始めた。

「なんか、お姫様気分です」

「それは良かった」

 鏡越しに微笑む彼はやってることは執事みたいだけど、見た目は完璧王子だ。しかも、彼はスウェットのズボンを履いただけ。とても目のやり場に困る。

「えっ、ちょ……歩けますからっ」

 ドライヤーを片付ける姿にまで見惚れてしまったせいで、反応が遅れた。慌てる奈月を軽々と抱き上げ、クスクス笑う彼は心底楽しそう。力強い腕に安心感はあるものの、地に足がついてないとやっぱり不安はあるもので、思わずしがみついてしまった。

「怖い?」

「ていうか、こんなことされたことないから……」

「大丈夫、落としたりしないから」

 笑いながら有無を言わさず寝室に連れて行かれ、正直困ってしまう。広いベッドの中程に奈月を下ろした侑李は、ベッドに腰掛けて肩に掛けていたタオルでガシガシと頭を拭いている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海
恋愛
 古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。  とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。  そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー  住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。 ※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。 ✧ ✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧ ✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ 【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

処理中です...