俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「奈月さん、タオルこれ使って」

「あ、はい」

 差し出されたタオルを受けとると、彼はこちらに背を向けたままだった。程よく筋肉のついた背中は、思わず見惚れてしまう。だが、彼が昨日と同様にズボンだけ身に付けているのを見て、思わず言葉が出ていた。

「侑李さん、脱がないの?」

「え?」

 脱いだ服をまとめていたらしい彼が、驚いた顔をしてこちらを振り返る。服を脱ぎ去っていた奈月は、慌ててタオルで身を隠す。すると、彼も慌てて顔を逸らした。

「すみません」

「いえ」

 今から一緒にお風呂に入るというのに、ここでこんな状態で大丈夫だろうか。でも、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。

「脱がない方が、いいでしょう?」

 侑李も恥ずかしいのだろうか。こちらに背を向けて何やらごそごそしているが、その手は脱いだシャツを掴んだり離したりしているだけ。その様子が何だが可愛く見えてくる。

「奈月さん?」

 戸惑うような侑李の声が聞こえる。それもそうだろう、奈月が突然、彼の背に後ろから抱きついたのだ。
身体を隠していたタオルは腕にかけている。そのため、互いに何も隔てていない素肌が触れ合っている。

「ズボン、濡れちゃいます」

 昨日は身体を拭いてもらっただけ。でも、奈月が風邪をひかないようにと、床にお湯をかけていたせいで彼のズボンが濡れていたのは知っている。

「うん……でも……」

 躊躇うのは奈月を気遣ってのことだろうか。昨日、彼のズボンの膨らみに気付いてしまった時のことを思い出す。奈月の唇を奪った後、我慢できなかったと言った侑李のブルーの瞳に滲む欲情。あの瞳でまた見つめられたいと思ってしまう自分は、おかしいのだろうか。

「奈月さん、胸……」

 胸が当たっているのは分かってる。黙っていると、はぁ、とため息をついた侑李が奈月の腕を解こうとしてきた。抵抗するように腕に力を込めてさらに抱き締めると、彼が息を詰めた。

「ズボン、脱いできてください、ね」

 固い背中に頬を擦り寄せて囁く。そっと撫でたお腹は割れていて、段になっている。
 奈月はそのまま身体を離すと、逃げるように浴室に入る。心臓はバクバクだ。でも、彼とそういうことになることを望んでいる自分がいる。でなければ、自分から誘うようなことはしない。

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