俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

文字の大きさ
上 下
58 / 96

10-5

しおりを挟む
「っ、最後まで……します、か?」

 我ながら大胆なことをしている。お酒も入っていないのに、彼のキスに酔わされているのか。昨日の行為が蘇り、下腹部が濡れているのが自分でも分かった。
 男と女がすることくらい、経験はなくとも知っている。はじめては痛みを伴うらしいことも。
 すると、一瞬目を見張った侑李は、困ったように笑う。

「それは……」

「したく、ない? やっぱり、処女は面倒臭い?」

 これは雑誌の知識だけど。前に彼には否定されたけど、昨夜の行為で気になったこと。

「したくないわけない」

「んっ……」

 噛み付くようなキスをされ、驚きながらも受け入れる。すると、唇を離した侑李に抱きしめられた。

「奈月さんは初めてだから。無理強いしたくなかった」

 頬を寄せてくる侑李を何だか可愛く感じて、奈月は彼の頭に手を伸ばしそっと撫でる。驚いた顔で奈月を覗き込んできた彼に、自らキスをした。

「初めては、侑李さんがいい」

 好きだから、触れ合いたい。怖くても、いや、怖いからこそ、相手は好きな人でなくてはと思う。

「無理しなくても……」

「最初に痛いのは仕方ないんでしょ? 侑李さんが相手だから、我慢できる、と思う」

 最後にちょっと自信がなくなって、語尾が変になる。すると、彼がフッと笑う。

「じゃあ……できるだけ痛くないように、いっぱい奈月さんを愛すから」

「……うん」

 コツンと合わさったおでこ。微笑みながらキスをしてくれる侑李が愛しい。だから大丈夫、耐えられる、と奈月は自分を鼓舞した。
 覚悟は決めたものの、いざ洗面所に2人で入ると恥ずかしさが込み上げてきた。所在なく視線をさ迷わせていると、様子に気付いた侑李が微笑んだ。

「奈月さん、怖い?」

 そっと彼の手が頬を包む。ゆっくりと上を向かされ、優しいブルーの瞳と目が合った。

「大丈夫」

「本当? 無理しなくても……」

 頬を撫でる侑李の手が離れそうになり、奈月は自分の手を重ねる。手のひらは痛いから、指先だけを這わせると、彼が少し息を飲んだのが分かった。

「隅々まで、洗ってくれるんでしょう?」

 言った後に恥ずかしくなってしまう。すると、微笑んだ侑李がチュと唇を合わせてきた。

「はい。じゃあ……」

「あ、でも……やっぱり、脱ぐのは、自分で……」

 服を脱がされるっていうのはやっぱり恥ずかしいし、脱げない訳じゃないから申し訳ない。そう思って言うと、彼は微笑んで分かったと言った。そして、彼は奈月に背を向け自分もシャツを脱ぎ始める。衣擦れの音が洗面所に響くのが何だか卑猥に感じたのは、彼との行為を期待してしまっているからだろうか。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。

恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。 副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。 なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。 しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!? それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。 果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!? *この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 *不定期更新になることがあります。

初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。 一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感! ◆Rシーンには※印 ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます ◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...