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翌日、会社に向かった奈月は、いつも以上に仕事をこなした。というのも、少しでも手が開くと、昨夜のことを思い出してしまうから。そうなると恥ずかしすぎて居た堪れない。
怪我をしたことで、心配をかけてしまったのは悪いと思うけど、まさか一緒に住むことになるなんて。おまけに食事の用意も彼が率先してしてくれて、まさに至れり尽くせりだった。
お風呂まで手伝ってもらうことになるとは思わなかったけど、その後の甘い行為は男性経験のない奈月にはハードルが高すぎて。はじめての絶頂でまさかの寝落ちするわ、朝、裸で抱き合って目を覚ました時は心臓が止まるかと思った。
けれど、起きてすぐに好きな人の顔を見れるというのはこんなに幸せな気持ちになるものか、と思った。奈月が起きたことに気付き、微笑む侑李はイケメン度が増していて、まだ少し眠たそうな顔はちょっと幼く感じた。これが毎日のことだと幸せすぎて心臓がいくつあっても足りない。だが、この同棲生活は奈月の怪我が治るまでだ。
昼過ぎに病院に行き、亜也の見舞いも済ませ、夕方五時。侑李の会社と進めているプロジェクトは、奈月が引き継ぐことになった。
応接室に通され、出されたお茶を飲んでいると、髪をかき上げながら侑李が入ってくる。慌てて立ち上がると、彼はフッと微笑んだ。
「すみません、お待たせしましたね」
「いえ、そんな」
奈月の前に腰を下ろしながら、座るように促してくる侑李はスマートだ。だが、朝に見た姿より少し疲れが見える。何よりネクタイが僅かだが曲がっていて、髪も乱れていた。
だが、付き合っているとはいえ、今は仕事中。いくら二人きりとはいえ、指摘するのはいかがなものか。それよりも、謝罪が先だ。
「この度は、こちらの都合で申し訳ございません」
「いいえ、不測の事態ですし、香山さんが引き継いで下さるなら安心です」
ニッコリと微笑む侑李はやっぱりイケメンだな、と思う。たぶん営業スマイルなのだろうけど、この笑顔を見せられたら大概の女の子はコロッといってしまうのではないかと思う。亜也は彼との打ち合わせの内容を奈月に伝える時、事務的なことしか報告はして来なかったが、僅かでも恋心を抱いていたりしないのだろうか。
「真壁さんのお加減はいかがですか?」
「はい、お陰様で。幸い脳にも異常はないとのことで、私どもも安心しました」
「それは良かった。香山さんも無理はなさらないでくださいね。手伝えることがありましたらなんなりと仰ってください」
手伝えること、という言葉に、身体がビクリと反応する。思わず息を詰めたのは、昨夜のことを思い出してしまったから。
「ありがとうございます」
顔に貼り付けた営業スマイルだったが、声は若干震えていた気がする。少し乱れた彼の髪に、あの時はもっと、なんて脳内がピンクになりかけてしまい、慌てて邪念を振り払う。今は仕事をしに来ているのだ。目の前に彼氏がいて、2人きりだろうと、ちゃんと線引きはしなくては。
「で、では、会場についてですが……」
もたもたと書類を広げ、仕事について話を進める。そうして話を始めれば、奈月の仕事スイッチはすぐに入る。
打ち合わせは順調に進んだ。初回にも思ったことだが、所々挟まれる侑李の指摘は的確だ。副社長を務めるくらいだから当然なのだろうけど、やはり彼は仕事ができるのだなと再確認する。
「本日はお時間いただき、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。香山さん、この後は社にお戻りに?」
「あ、いえ。今日はこのまま直帰します」
資料を片付けながら、ふと彼はどうなんだろうと思う。チラリと盗み見ると、彼はこちらを見ていたようで、ブルーの瞳とバッチリ目が合ってしまった。
「良かったら、この後お食事いかがですか?」
ニッコリと微笑むイケメン。その破壊力にクラッとした。
怪我をしたことで、心配をかけてしまったのは悪いと思うけど、まさか一緒に住むことになるなんて。おまけに食事の用意も彼が率先してしてくれて、まさに至れり尽くせりだった。
お風呂まで手伝ってもらうことになるとは思わなかったけど、その後の甘い行為は男性経験のない奈月にはハードルが高すぎて。はじめての絶頂でまさかの寝落ちするわ、朝、裸で抱き合って目を覚ました時は心臓が止まるかと思った。
けれど、起きてすぐに好きな人の顔を見れるというのはこんなに幸せな気持ちになるものか、と思った。奈月が起きたことに気付き、微笑む侑李はイケメン度が増していて、まだ少し眠たそうな顔はちょっと幼く感じた。これが毎日のことだと幸せすぎて心臓がいくつあっても足りない。だが、この同棲生活は奈月の怪我が治るまでだ。
昼過ぎに病院に行き、亜也の見舞いも済ませ、夕方五時。侑李の会社と進めているプロジェクトは、奈月が引き継ぐことになった。
応接室に通され、出されたお茶を飲んでいると、髪をかき上げながら侑李が入ってくる。慌てて立ち上がると、彼はフッと微笑んだ。
「すみません、お待たせしましたね」
「いえ、そんな」
奈月の前に腰を下ろしながら、座るように促してくる侑李はスマートだ。だが、朝に見た姿より少し疲れが見える。何よりネクタイが僅かだが曲がっていて、髪も乱れていた。
だが、付き合っているとはいえ、今は仕事中。いくら二人きりとはいえ、指摘するのはいかがなものか。それよりも、謝罪が先だ。
「この度は、こちらの都合で申し訳ございません」
「いいえ、不測の事態ですし、香山さんが引き継いで下さるなら安心です」
ニッコリと微笑む侑李はやっぱりイケメンだな、と思う。たぶん営業スマイルなのだろうけど、この笑顔を見せられたら大概の女の子はコロッといってしまうのではないかと思う。亜也は彼との打ち合わせの内容を奈月に伝える時、事務的なことしか報告はして来なかったが、僅かでも恋心を抱いていたりしないのだろうか。
「真壁さんのお加減はいかがですか?」
「はい、お陰様で。幸い脳にも異常はないとのことで、私どもも安心しました」
「それは良かった。香山さんも無理はなさらないでくださいね。手伝えることがありましたらなんなりと仰ってください」
手伝えること、という言葉に、身体がビクリと反応する。思わず息を詰めたのは、昨夜のことを思い出してしまったから。
「ありがとうございます」
顔に貼り付けた営業スマイルだったが、声は若干震えていた気がする。少し乱れた彼の髪に、あの時はもっと、なんて脳内がピンクになりかけてしまい、慌てて邪念を振り払う。今は仕事をしに来ているのだ。目の前に彼氏がいて、2人きりだろうと、ちゃんと線引きはしなくては。
「で、では、会場についてですが……」
もたもたと書類を広げ、仕事について話を進める。そうして話を始めれば、奈月の仕事スイッチはすぐに入る。
打ち合わせは順調に進んだ。初回にも思ったことだが、所々挟まれる侑李の指摘は的確だ。副社長を務めるくらいだから当然なのだろうけど、やはり彼は仕事ができるのだなと再確認する。
「本日はお時間いただき、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。香山さん、この後は社にお戻りに?」
「あ、いえ。今日はこのまま直帰します」
資料を片付けながら、ふと彼はどうなんだろうと思う。チラリと盗み見ると、彼はこちらを見ていたようで、ブルーの瞳とバッチリ目が合ってしまった。
「良かったら、この後お食事いかがですか?」
ニッコリと微笑むイケメン。その破壊力にクラッとした。
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