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奈月のことを家に連れて来てしまったのは、かなり強引だったと自覚している。だが、亜也の件で電話口で明らかに動揺していたのが分かっていたのに、何もできなくて。もどかしさを感じていた中、彼女の怪我を知った。
会社が別なのだし、例え一緒でも四六時中一緒にいられる訳じゃない。それでも侑李は悔しかった。彼女のことは自分が、と強い思いが湧き上がる。
自分がこんなに独占欲が強い人間だと思わなかったな、と奈月から身体を離してその頬を撫でる。気持ち良さそうに目を細める奈月は猫のようだ。
仕事の時はキリッとしているのを、打ち合わせの時に初めて知った。あの時は挨拶の後、目を合わせてくれなくなって、怒らせたのではと焦ったけれど。こうして侑李に身を預け、受け入れてくれていることにホッとする。
ピンク色の唇に軽く音を立ててキスをする。一瞬、驚いたように見開かれた奈月の瞳は黒に近い茶色。恥ずかしげに微笑みながら、顎を上げ、目を閉じた彼女の唇を何度か啄むと甘い吐息を吐くから堪らない。
思わず彼女の後頭部を支える手に力を入れて、背中に添えていた手で腰のラインを撫でた。
「あ……」
聞こえて来た可愛らしい音楽。キスを止めて顔を上げると、軽やかな女性の声が風呂が焚けたことを告げる。
「お風呂、入っていいのかな?」
家の中に入った時に給湯器のボタンを押していた。でも、ふと怪我をした当日にお風呂には入れなかっただろうかと思い至った。包帯を巻かれた手に視線をやると、彼女もまた同じように自分の手を見る。
「お風呂に浸かるのはダメなんで、軽く体を拭こうかと……」
「ああ、でもタオルが絞れないもんね」
両手が使えないというのはやっぱり不便だ。家族と暮らしていれば手助けしてもらえるだろうが、一人暮らしではそうもいかない。
「じゃあ、風邪ひかないように、サッと身体拭こうか。手伝うよ」
「手伝うって……」
「だって、一人じゃ無理でしょ?」
「いや、でも……」
侑李の家のお風呂は洗面所の先にある。背中を押して、洗面所に向かおうとすると、奈月がそっと離れる。
「一人で……」
「タオル絞れないのに?」
視線を彷徨わせる奈月に問いかけながら、侑李は自分でも意地悪なことを言ったなと感じる。だが、一瞬言葉に詰まった後、こちらを睨んでくる奈月が可愛くて、悪いと思いつつ笑ってしまう。
「っ、意地悪です」
「そんな睨んでも、可愛いだけだよ」
どうしてこんなに愛しいのだろう。笑った顔も、泣いた顔も、こうしてムスッと侑李を睨む顔ですら可愛いと思う。自分の頭がおかしくなったんじゃないかと思うくらい、彼女に夢中な自分に気付いてしまう。だが、ずっと警戒されるのは悲しいから、彼女を安心させるため、侑李は言葉を紡ぐ。
会社が別なのだし、例え一緒でも四六時中一緒にいられる訳じゃない。それでも侑李は悔しかった。彼女のことは自分が、と強い思いが湧き上がる。
自分がこんなに独占欲が強い人間だと思わなかったな、と奈月から身体を離してその頬を撫でる。気持ち良さそうに目を細める奈月は猫のようだ。
仕事の時はキリッとしているのを、打ち合わせの時に初めて知った。あの時は挨拶の後、目を合わせてくれなくなって、怒らせたのではと焦ったけれど。こうして侑李に身を預け、受け入れてくれていることにホッとする。
ピンク色の唇に軽く音を立ててキスをする。一瞬、驚いたように見開かれた奈月の瞳は黒に近い茶色。恥ずかしげに微笑みながら、顎を上げ、目を閉じた彼女の唇を何度か啄むと甘い吐息を吐くから堪らない。
思わず彼女の後頭部を支える手に力を入れて、背中に添えていた手で腰のラインを撫でた。
「あ……」
聞こえて来た可愛らしい音楽。キスを止めて顔を上げると、軽やかな女性の声が風呂が焚けたことを告げる。
「お風呂、入っていいのかな?」
家の中に入った時に給湯器のボタンを押していた。でも、ふと怪我をした当日にお風呂には入れなかっただろうかと思い至った。包帯を巻かれた手に視線をやると、彼女もまた同じように自分の手を見る。
「お風呂に浸かるのはダメなんで、軽く体を拭こうかと……」
「ああ、でもタオルが絞れないもんね」
両手が使えないというのはやっぱり不便だ。家族と暮らしていれば手助けしてもらえるだろうが、一人暮らしではそうもいかない。
「じゃあ、風邪ひかないように、サッと身体拭こうか。手伝うよ」
「手伝うって……」
「だって、一人じゃ無理でしょ?」
「いや、でも……」
侑李の家のお風呂は洗面所の先にある。背中を押して、洗面所に向かおうとすると、奈月がそっと離れる。
「一人で……」
「タオル絞れないのに?」
視線を彷徨わせる奈月に問いかけながら、侑李は自分でも意地悪なことを言ったなと感じる。だが、一瞬言葉に詰まった後、こちらを睨んでくる奈月が可愛くて、悪いと思いつつ笑ってしまう。
「っ、意地悪です」
「そんな睨んでも、可愛いだけだよ」
どうしてこんなに愛しいのだろう。笑った顔も、泣いた顔も、こうしてムスッと侑李を睨む顔ですら可愛いと思う。自分の頭がおかしくなったんじゃないかと思うくらい、彼女に夢中な自分に気付いてしまう。だが、ずっと警戒されるのは悲しいから、彼女を安心させるため、侑李は言葉を紡ぐ。
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