俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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 ホッとしたのも束の間、侑李の言葉に変な声で応じてしまった。恥ずかしさに自分で自分の口を塞ぐ。そんな奈月の様子に、侑李は笑いながら立ち上がり、窓際のチェストの所まで歩いていく。それを見て、何となく後を追うと、振り返った彼が手を差し伸べてきた。

「これね、チェストじゃないんだ」

 近付いていくと、奈月の腰の辺りに侑李が手を回す。並んで見下ろすそれは、やはりチェストにしか見えない。
 ちょっと身体を引いて、まじまじと見た奈月は、ふと、天板のところに窪みがあることに気付いた。

「ここをこうするんだ」

 奈月が気付いた窪みに、侑李が指を引っ掛ける。そのまま天板を持ち上げたので、奈月は思わずあっと声を上げた。

「え、ドレッサー?」

 持ち上がった天板の内側にはめられていたのは、大きな鏡。折り畳み式の三面鏡になっていて、ライトまで付く。
驚いて唖然としている奈月の肩をトントンと叩いた侑李が見せたのは、見せたのは、ミックスウッドの小さな丸い椅子。

「ごめんね、勝手に買ってしまって。でも、見つけた時に可愛いなって。奈月さんが気に入ってくれるかが心配だったんだけど」

「私のために?」

 どうかな、と首を傾げた侑李はどこか不安そうだった。そんな彼に、息が詰まって言葉が出てこない。どう気持ちを伝えたらいいか分からず、抱きついて背中に回した腕でギュッと彼を抱き締めた。

「使ってくれるかな?」

「っ……もちろん」

 吐息と共に吐き出した声が、僅かに掠れた。堪えきれず溢れた涙を瞬きで追いやる。すると、抱きしめ返してくれた彼の大きな手が奈月の後頭部をそっと撫でた。
 幸せだ。幸せ過ぎて怖いくらいに。
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