俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「何か気になることでもある?」

「あ、いえ……」

 聞きながら、侑李はテーブルにマグカップを置く。奈月の前に置かれたそれは、一緒に買い物に行った時のもの。それを今日、初めて使う機会が来たことが嬉しかった。

 自分のマグカップは持ったまま、奈月から少しだけ距離を取って座った侑李に少し寂しさが過ぎる。避けられてるかな、と思ったけど気のせいだろうか。

「あの、そこのチェスト、この前からありました?」

 気を取り直して、奈月は窓際のチェストを指さす。このリビングで過ごしたのは、数える程だ。それもほんの僅かな時間。緊張もあったし、人の家の中をジロジロ見るものではないかな、とあまり細かいところまで見てはいなかったけど、窓際の壁はよく目に入った。
 単に今座っているソファーからよく見える場所というだけでなく、緊張によって彼から視線を逸らした先にあるのがその壁だったから。高鳴ってしまう心臓を落ち着けるため、穴が開きそうな程眺めた壁側。だから覚えている。あそこには何も置かれていなかったはずだ。
 奈月の指さす先を視線で追い、ああ、と頷いた侑李はカップに口をつけながらサラッと言う。

「ああ、買ったんだ」

「へぇ。可愛いですね」

 侑李の部屋の調度品は趣味が良い。木の温もりが感じられるブラウンを基調とした木目の家具。奈月が気になったチェストもブラウン調。だが、既にある家具が暗めのウォールナットであるのに対して、チェストは少し明るめのチェリーウッドだった。
 デザインは他の調度品同様、シンプルなもの。脚が高いな、と思うけど床掃除がしやすそう。引き出しの数も少し少なめな気がするけれど、取手が触り心地が良さそうで可愛らしい。

「気に入った?」

「え? ええ……」

 指先で慎重にカップを持ち上げ、コーヒーを啜っていると、カップを置いた侑李が身を乗り出してきた。長い足を少し開いて座る彼が、膝に肘を着き、奈月を下から覗き込んで来たので驚いてしまった。
 落としそうになったカップを彼が下から支えてくれて、恐る恐るテーブルに戻す。突然、視界にイケメンが入ってくるとビックリする。恋人になったとはいえ、これは慣れるものなのだろうかと不安さえ感じた。

「あれ、使ってね」

「へ?」

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