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『……さん……奈月さん?』
どれくらい思考が止まっていたのだろう。耳元で聞こえた呼び掛けに我に返る。メモを差し出した部下も不安げな顔で奈月を見ていて、口の動きだけでありがとう、と伝え一度深呼吸をする。
「小鳥遊さん、この度は申し訳ございません。打ち合わせですが、日を改めさせていただけますでしょうか?」
『それは構いませんが……』
「ご迷惑をおかけします。対応が決まり次第、ご連絡を差し上げます」
何度も平謝りを続けながら電話を切る。そしてメモをくれた部下の背を軽く叩き、仕事に戻るよう促して、バッグを掴んだ奈月はフロアを出た。向かったのは1階上のフロア。視線を巡らせ、パソコンに向かう女性の姿を見つけて真っ直ぐに近付いていく。
「日高部長」
テンマ化粧品で初の女性営業部部長、日高万里江(ひだかまりえ)が顔を上げる。細面の美人で、バリバリに働く彼女は奈月の憧れだ。奈月は彼女に部下のメモを見せる。すると、彼女はすぐ行動を見せる。
部下に的確な指示を飛ばし、パソコンの電源を落とした彼女は奈月と連れだって歩きながら表にタクシーを呼ぶ。先に乗るよう促され、向かったのは大学病院。年に一度の健康診断で訪れる以外、お世話になる機会は少ない場所は少し緊張する。受付で確認をして、病室へ向かうまで2人とも無言だった。
どれくらい思考が止まっていたのだろう。耳元で聞こえた呼び掛けに我に返る。メモを差し出した部下も不安げな顔で奈月を見ていて、口の動きだけでありがとう、と伝え一度深呼吸をする。
「小鳥遊さん、この度は申し訳ございません。打ち合わせですが、日を改めさせていただけますでしょうか?」
『それは構いませんが……』
「ご迷惑をおかけします。対応が決まり次第、ご連絡を差し上げます」
何度も平謝りを続けながら電話を切る。そしてメモをくれた部下の背を軽く叩き、仕事に戻るよう促して、バッグを掴んだ奈月はフロアを出た。向かったのは1階上のフロア。視線を巡らせ、パソコンに向かう女性の姿を見つけて真っ直ぐに近付いていく。
「日高部長」
テンマ化粧品で初の女性営業部部長、日高万里江(ひだかまりえ)が顔を上げる。細面の美人で、バリバリに働く彼女は奈月の憧れだ。奈月は彼女に部下のメモを見せる。すると、彼女はすぐ行動を見せる。
部下に的確な指示を飛ばし、パソコンの電源を落とした彼女は奈月と連れだって歩きながら表にタクシーを呼ぶ。先に乗るよう促され、向かったのは大学病院。年に一度の健康診断で訪れる以外、お世話になる機会は少ない場所は少し緊張する。受付で確認をして、病室へ向かうまで2人とも無言だった。
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