俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「いつから、起きてたの?」

「いつかな……完全に覚醒したのは、奈月さんが俺の唇をじーって見てた時?」

 完全に、ということは、その前から起きていたということだろうか。ならきっと一部始終、全部バレてる。バレてるなら、もう仕方ない。
 観念して布団から顔を出すと、侑李は抱きしめる腕に少し力を入れた。

「捕まえた。ごめんね、奈月さん」

「謝らなくていいです。私が悪いもの」

「いや、恥ずかしがるあなたが可愛くて、ちょっと意地悪し過ぎたんだ。ごめんね」

 胸に抱き寄せられ、頭を撫でられる。このナデナデはヤバい。気持ち良すぎて、彼の温もりも心地よくて眠気がまた来てしまいそう。

「今日は日曜日ですが、ご予定は?」

「あ、特には……」

 土日は休みだから、今日も特に予定はない。帰れば持ち帰りの仕事があるにはあるが、急ぎではないし、暇だったらやっとこうくらいのレベルだ。

「じゃあ、朝ごはんを食べて、予定を考えようか」

 奈月の頭を撫でながら微笑む侑李に、目を瞬かせる。

「侑李さんは、お仕事……」

「今日は休み」

 だからゆっくりできるよ、と微笑む彼の笑顔は極上で。奈月は小さくため息を吐いてしまった。

「奈月さん?」

「あ、ごめんなさい。なんか、幸せだなって」

 言いながら、何を口走っているんだと口に手をやる。すると、その手を取った侑李が、奈月の指に音を立ててキスをした。

「それは、俺とこうしていられることが?」

 ブルーの瞳がじっと奈月を見つめる。徐々に近付いてくる彼の顔にキスの気配を感じて、そっと目を閉じると唇を啄まれた。

「……だって、夢みたいで。侑李さんとこうしてるなんて」

「俺も夢みたいだ。今も、嫌われやしないかとヒヤヒヤしてる」

「前も言ってた。嫌われるのが、怖いって」

 あれは侑李が、実は取引先の副社長だったと知った日。奈月が怒っているのではないかと恐れ、彼女が離れて行くのが怖くて本当の肩書きを言えなかったと話してくれた彼の表情はまるで嘘がバレた時の子供のようで。恐々と頬に触れてきた彼を抱き締めて安心させたいとすら思った。自分より年上の、しかも男性を少しだけ可愛いと思ったのはあれが初めて。そんなこと、口が裂けても言えやしないけれど。

「情けないけど、奈月さんには嫌われたくない。あなたが離れていってしまうのは嫌なんだ。いい歳した大人が駄々こねてるみたいで、みっともないけど」

 侑李の言葉に奈月は驚くばかりだけど、困ったように笑う顔は嘘を吐いているようには見えなくて。イケメンの彼から送られた真っ直ぐな言葉に、くすぐったい気持ちになる。
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