俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「面倒臭い、ですよね……」

「何が?」

「その……男性経験が、ない、とか」

 言いながら恥ずかしくなって、侑李の胸を軽く押して離れようとした。だが、彼はそれを許さず、代わりに奈月の腰に手を回してきた。

「面倒臭くなんかないよ。もしかして、誰かに言われた?」

「いいえ。でも、よくそんな話、聞くから……」

「他の男性がどうかは知らないけど、俺は嬉しいよ。男は、好きな子の最初の男になりたいものだから」

 優しい声に顔を上げると、侑李は微笑んでいて、その顔に奈月は泣きそうになる。

「奈月さんのはじめて、全部俺にくれる?」

「はい……」

 答えると同時にまた唇を重ねられ、今度は舌が口内に入ってきた。腰に回った手が腰に回った手がそっとくびれを撫でて、奈月はくすぐったさに身を捩る。

「ぁ……んっ」

 思わずくぐもった声を上げてしまった。声を我慢しようとするが、彼の舌が深く絡まってくると何も考えられなくなる。
 濡れた音を立てて唇が離れ、そっと目を開けると、銀色の糸が二人の唇を繋いでいるのが見えた。プツリと切れた糸は奈月の唇を濡らし、侑李が微笑みながら濡れた彼女の下唇を吸った。

「ごめん、あんまり可愛い反応するから、やめてあげられなかった」

「い、え……」

 恥ずかしかったけど、嫌じゃなかった。むしろ、唇が離れてしまって寂しいとしさら感じている。

「奈月さん、一緒に寝る?」

「一緒、に?」

「そう。ただ、一緒に。奈月さんを抱きしめて、眠るだけ」

 ゆっくりと抱き寄せられ、奈月は小さく頷いた。すると、彼は布団に入ってきて、奈月を抱きしめたまま横になる。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 枕元のリモコンで電気を消した侑李は、奈月のおでこにキスをする。腕枕をされて、寄り添った彼に抱きつく形になった奈月の心臓はまだバクバク言っている。だが、ゆっくりと一定のリズムで頭を撫でられていると、だんだん落ち着いてきて瞼が徐々に落ちてきた。奈月は侑李の温もりを感じながら、再び夢の世界へと旅立っていった。

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