俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

文字の大きさ
上 下
30 / 96

6-2

しおりを挟む
「そんなわけ……」

「好きな子のワガママは可愛いものだよ。って、奈月さんのはワガママの内にも入らないけど」

 俯いた奈月を侑李の手が抱き寄せる。ポンポンと頭を撫でられると、自分が子供になったみたいな気がした。

「好きな、子?」

「そう。好きな子から甘えられて、嬉しくない男はいないよ」

 頭にそっと乗った彼の顎。その重みが心地よくて、奈月は緊張を解いて彼に身を委ねる。

「子供扱いしてます?」

 よく亜也の頭を撫でることはあるが、奈月が撫でられることなど子供の頃以来だ。だから余計、そう感じるのかもしれない。すると、身体を離した侑李が、顔を覗き込んでくる。

「じゃあ、大人扱いしていいかな?」

 伺うようなブルーの瞳に胸が高鳴る。好きな子、と言った彼の声が脳内で再生され、心が震えた。

「好きだよ、奈月さん。まだ会って間もないし、性急だと自分でも思うけど、それだけあなたを逃したくないんだ」

 おでこがコツンと合わさる。綺麗なブルーの瞳に映る自分の顔。こんな至近距離で、そんなこと囁かれたら心臓がバクバクで寿命が縮みそう。

「俺を好きになって」

 もうこれは殺し文句以外の何者でもない。
 低い美声が放つ甘い甘い告白の言葉に、奈月は小さく息を吐いた。好きになって、なんて。答えはもうすでに決まっている。

「もう、なってます……」

 お手上げだ。奈月の心は、もう彼に囚われてしまっている。
 吐息混じりの奈月の言葉に、魅力的な笑みを浮かべた侑李がさらに顔を寄せてくる。それに応じて顎を上げ、そっと目を閉じると唇に感じた柔らかな感触。
 触れただけで離れたそれは、時を置かずにまた重なって、今度は優しく啄むように何度か合わさる。

「っ、は……」

 酸素を求めて薄く開いた奈月の唇を、侑李の唇が優しく挟む。まるで食べられるような口付けに、思わず漏れた自分の声が甘くて、奈月は恥ずかしくなる。

「可愛い……キス、初めて?」

「っ……はい」

 これを認めたら、処女だと認めることと同じだ。だが、ここで変な見栄を張る勇気はなくて、素直に頷く。けれど、29歳にして未だ処女だとか、やっぱり面倒臭いだろうかと不安が過ぎる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。

恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。 副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。 なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。 しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!? それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。 果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!? *この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 *不定期更新になることがあります。

初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。 一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感! ◆Rシーンには※印 ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます ◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...