俺が好きなのはあなただけ〜恋愛初心者は極上男子の腕の中〜

鈴屋埜猫

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「面白かったですね」

 映画を見終わり、時刻は3時過ぎ。軽くお茶をしようと入ったのは小野原グループ系列のカフェだ。注文はセルフ形式。侑李はブラックコーヒーをアイスで、奈月はホットのココアにした。時間的にわりと空いていたので、テラス席に座った。

「面白かったです。また原作を読み返したくなりました」

 DVDを一人で見ることもするが、やはり誰かと見るのが一番だと思う。趣味が合わないとなかなかできないことだが、映画の余韻があるうちに語り合うのも醍醐味の一つだ。

「奈月さんは原作を読まれてるんでしたね」

「はい。学生の頃に」

「作品全て?」

「全てではないですよ、読めていないものもあります。読む時間がなかなかなくて」

 今の会社に就職してから、毎日毎日仕事づくめで、本などゆっくり読む暇がなかった。そうなると、新作が出たのを知ってもなかなか手が出せなくなる。一応は買うが、本棚に並べてそのまま。そういうことが続くと、だんだん買うことすら出来なくなってしまう。

「そうですよね」

「最初は土日を使って読んでたんですが、仕事の持ち帰りをし出すと読む時間ぎ取れなくて。昔より読むスピードも落ちましたし」

「スピードですか? ちなみに、どれくらいで読まれるんですか?」

「はい。昔はハードカバーの本はだいたい1~2日で読めたんですが、今は4~5日はかかるかと」

 暇さえあれば本を読んでいたから、少し薄めだったり、児童書のような字体が大きいものなら半日で読み終わることもあった。小学生の時からいわゆる本の虫で、卒業までに図書室の本を網羅したいと変な夢を描いていた。まぁ、中には興味がない分野の本もあったし、全部読むなんて到底無理な話だったけれど。懐かしさに頬が緩む。

「すごいですね」

「いえ、全然。時間があればの話ですから」

 学生時代は休み時間ごとにずっと本を読んでいて、帰り道も本を読みながら、なんて今思うと結構危ないことをしていた。家に帰ってもずっと本を手放さないから、母から友達がいないのでは、と心配された程。
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