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「お待たせして申し訳ありません」
先に口を開いたのは、最初に入ってきたネイビーのスーツの男性だった。人の良さそうな笑みを浮かべた彼が、スーツの内ポケットから名刺入れを取り出すのが見えて、奈月たちも自分の名刺入れを手に持つ。
「はじめまして、F&Y株式会社、社長の玉沖風磨です」
にっこりと微笑む風磨に、奈月と亜也は目を丸くする。まさか、社長自ら対応してくれるとは思ってもみなかったからだ。
「は、はじめまして。テンマ化粧品、営業担当の真壁亜也と申します」
明らかに緊張度の増した亜也が名刺を差し出す。続いて、奈月も風磨との名刺交換を済ませた。そして次は侑李の番。
「……副社長の小鳥遊です。どうぞよろしくお願いします」
少し間を置いて名刺を差し出した侑李の言葉に、奈月は声を上げそうになるのを何とか堪えた。先日もらった名刺と社名が違うこと驚かされたが、それ以上に副社長という肩書きにさらに驚かされる。
亜也との名刺交換が済み、続けて笑みと共に差し出された名刺を、奈月は複雑な思いで受け取る。彼と名刺を交換するのは2回目になるが、もらった2枚目の名刺にはやはりグリシーヌホテルの名前はなく、代わりにF&Y株式会社の副社長という肩書きが書かれていた。
「いやぁ、美人な方がお2人も来てくださるとは」
お互いに名刺交換を済ませ、進められるまま腰を下ろす。亜也の前に風磨が座り、奈月の前に侑李が座った。侑李の視線を感じるが、奈月は彼の方を見ることができなかった。
「社長さん自らご対応いただけるとは思っておりませんでした」
「驚かれましたよね。どうか気楽に。社長、副社長と肩書きばかりデカいんですが、我が社は少数精鋭でして。社長だろうが何でもやるんです」
見た目からしてチャラい印象のある風磨だが、何でもやる、と言った言葉は力強かった。そして何より人懐こそうな笑顔に、こちらの緊張が少しだけ解れる。
「今回のお話は、新しい化粧品ブランドのお披露目会とのことでしたね」
話を切り出した風磨の表情に、こちらも仕事モードに入る。さすが社長というべきか、締めるところはちゃんと締めるらしい。
亜也が今回のプロジェクトの説明を始める。途中で風磨からの質問に答えながら、話は比較的スムーズに進んでいった。奈月も時折、亜也のフォローに入る。が、その間一度も侑李の方は見れなかった。
先に口を開いたのは、最初に入ってきたネイビーのスーツの男性だった。人の良さそうな笑みを浮かべた彼が、スーツの内ポケットから名刺入れを取り出すのが見えて、奈月たちも自分の名刺入れを手に持つ。
「はじめまして、F&Y株式会社、社長の玉沖風磨です」
にっこりと微笑む風磨に、奈月と亜也は目を丸くする。まさか、社長自ら対応してくれるとは思ってもみなかったからだ。
「は、はじめまして。テンマ化粧品、営業担当の真壁亜也と申します」
明らかに緊張度の増した亜也が名刺を差し出す。続いて、奈月も風磨との名刺交換を済ませた。そして次は侑李の番。
「……副社長の小鳥遊です。どうぞよろしくお願いします」
少し間を置いて名刺を差し出した侑李の言葉に、奈月は声を上げそうになるのを何とか堪えた。先日もらった名刺と社名が違うこと驚かされたが、それ以上に副社長という肩書きにさらに驚かされる。
亜也との名刺交換が済み、続けて笑みと共に差し出された名刺を、奈月は複雑な思いで受け取る。彼と名刺を交換するのは2回目になるが、もらった2枚目の名刺にはやはりグリシーヌホテルの名前はなく、代わりにF&Y株式会社の副社長という肩書きが書かれていた。
「いやぁ、美人な方がお2人も来てくださるとは」
お互いに名刺交換を済ませ、進められるまま腰を下ろす。亜也の前に風磨が座り、奈月の前に侑李が座った。侑李の視線を感じるが、奈月は彼の方を見ることができなかった。
「社長さん自らご対応いただけるとは思っておりませんでした」
「驚かれましたよね。どうか気楽に。社長、副社長と肩書きばかりデカいんですが、我が社は少数精鋭でして。社長だろうが何でもやるんです」
見た目からしてチャラい印象のある風磨だが、何でもやる、と言った言葉は力強かった。そして何より人懐こそうな笑顔に、こちらの緊張が少しだけ解れる。
「今回のお話は、新しい化粧品ブランドのお披露目会とのことでしたね」
話を切り出した風磨の表情に、こちらも仕事モードに入る。さすが社長というべきか、締めるところはちゃんと締めるらしい。
亜也が今回のプロジェクトの説明を始める。途中で風磨からの質問に答えながら、話は比較的スムーズに進んでいった。奈月も時折、亜也のフォローに入る。が、その間一度も侑李の方は見れなかった。
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