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「ご気分が優れませんか?」
「あ、いえ……」
壁に寄り掛かっていたからか、あらぬ心配をかけたらしい。慌てて壁から背中を離した拍子に、フラついた奈月は彼に抱き止められた。
「……大丈夫ですか?」
「すみません……」
ははっ、と渇いた笑いを浮かべながら、酔ったかな、と恥ずかしさでいっぱいになる。お酒は弱くもないが、かと言って強くもない。そんなに飲んだつもりはないけど、疲労とこの雰囲気に酔ったような気がする。体勢を整えて、支えてくれた男性から身体を離した奈月は、あっと声を上げた。
「ごめんなさい、ワインが……」
あろうことか、奈月が持っていた飲みかけのワインが彼のスーツのジャケットを汚してしまっていた。かかったのはほんの少しのようだけど、グレーに赤は悪目立ちする。慌ててハンカチを取り出して拭こうとすると、その手
をやんわり止められた。
「このくらい大丈夫ですよ。それよりお怪我は?」
「ありません……本当に、申し訳ありません」
仕事でもこんな失態を演じたのは新入社員の時以来だろうか。その時の失態など、この比ではなかったと思うけど。
「クリーニング代、出させてください」
「そんな、平気ですよ。どうぞお気になさらず」
「でも……」
言いながら、相手の胸元にある番号を見ようと視線を巡らせる。だが、そこにあったのは番号ではなく『小鳥遊』という名前と『スタッフ』の文字。
「たかなし、さん?」
「はい?」
珍しい名前だな、と思うと同時に口に出てしまっていた。名前を呼んだことで首を傾げられ、奈月は取り繕うように頭を下げた。
「運営の方だったんですね。本当、多大なるご迷惑を……」
「どうか、気に病まないでください。私こそ、驚かせてしまい申し訳ありません」
奈月に顔を上げるように促してくれた男性の声は、優しい響きで心が落ち着く。おずおずと男性を見上げると、優しい微笑みが奈月を見下ろしていた。その綺麗な顔立ちに、奈月は思わず目を奪われた。
名前からして日本人だと思うのだが、顔立ちは少々日本人離れしている。彫りは深いし、鼻筋が通っていて、色も白い。髪は黒いのだが、奈月を見つめる瞳は吸い込まれそうなブルーで、目が離せなくなる。
「あ、いえ……」
壁に寄り掛かっていたからか、あらぬ心配をかけたらしい。慌てて壁から背中を離した拍子に、フラついた奈月は彼に抱き止められた。
「……大丈夫ですか?」
「すみません……」
ははっ、と渇いた笑いを浮かべながら、酔ったかな、と恥ずかしさでいっぱいになる。お酒は弱くもないが、かと言って強くもない。そんなに飲んだつもりはないけど、疲労とこの雰囲気に酔ったような気がする。体勢を整えて、支えてくれた男性から身体を離した奈月は、あっと声を上げた。
「ごめんなさい、ワインが……」
あろうことか、奈月が持っていた飲みかけのワインが彼のスーツのジャケットを汚してしまっていた。かかったのはほんの少しのようだけど、グレーに赤は悪目立ちする。慌ててハンカチを取り出して拭こうとすると、その手
をやんわり止められた。
「このくらい大丈夫ですよ。それよりお怪我は?」
「ありません……本当に、申し訳ありません」
仕事でもこんな失態を演じたのは新入社員の時以来だろうか。その時の失態など、この比ではなかったと思うけど。
「クリーニング代、出させてください」
「そんな、平気ですよ。どうぞお気になさらず」
「でも……」
言いながら、相手の胸元にある番号を見ようと視線を巡らせる。だが、そこにあったのは番号ではなく『小鳥遊』という名前と『スタッフ』の文字。
「たかなし、さん?」
「はい?」
珍しい名前だな、と思うと同時に口に出てしまっていた。名前を呼んだことで首を傾げられ、奈月は取り繕うように頭を下げた。
「運営の方だったんですね。本当、多大なるご迷惑を……」
「どうか、気に病まないでください。私こそ、驚かせてしまい申し訳ありません」
奈月に顔を上げるように促してくれた男性の声は、優しい響きで心が落ち着く。おずおずと男性を見上げると、優しい微笑みが奈月を見下ろしていた。その綺麗な顔立ちに、奈月は思わず目を奪われた。
名前からして日本人だと思うのだが、顔立ちは少々日本人離れしている。彫りは深いし、鼻筋が通っていて、色も白い。髪は黒いのだが、奈月を見つめる瞳は吸い込まれそうなブルーで、目が離せなくなる。
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