狐に嫁入りいたします。

鈴屋埜猫

文字の大きさ
上 下
8 / 13

七 【★】

しおりを挟む
 怒濤の一日に疲れていたのか、横になって幾分も経たない内に眠気がやって来る。そんな由奈がうつらうつらし始めた頃だった。

「由奈……」
「んぅ……?」

 名前を呼ばれて布団を剥がれる。一瞬寒気に身を震わせ、僅かに目を開けようとした由奈の視界に煌めくものが映り込んだ。綺麗な銀色の髪がさらりと音を立てて顔の側に落ちてくる。そして、唇を柔らかなものが優しく塞いだ。
 そっと触れるだけの口付けには覚えがある。そう思いながら目を開くと、唇を離した暁の緋色の瞳と目が合った。

「ぁ……」
「我が怖いか?」

 頬に手を添えられ、驚いた由奈の体が震える。それを見た暁は、由奈が恐れを抱いていると思ったようだ。だが、驚いただけで恐れは感じていない。由奈がそのことを示そうと首を横に振って見せると、暁は微笑んだ。

「案ずるな、痛みは与えぬ」
「ひぁっ……っ」

 喉元を唇で優しく食まれる。仰向けになった由奈の上に覆い被さった暁は、片足を由奈の足の間に割り込ませながら、彼女の首筋に唇を這わせ始めた。
 肌の上を滑る暁の唇が熱い。そして、時折吸い付かれ、軽く音を立てて唇が離れる度に、由奈の体温も上がっていくようだった。

「唇を噛むな」
「やっ……んぁ……ふっ」

 肌を吸われる度に吐息と共に吐き出される自分の声が恥ずかしい。普段とは別人のような甘ったるい声が、自分の発するものだとはにわかには信じがたいくらいだ。だからできるだけ出さないようにと唇を噛んだのに、暁の唇が、舌がそれを許さなかった。
 ぬるりとした舌が由奈の閉ざされた唇を押し開き、奥で縮まっていた彼女の舌を捕らえる。まるで食べられているようだ、と暁の舌の動きに翻弄されながら思っていると、いつの間にか露になっていた胸の頂を引っ掛かれた。

「あっ……やぁ……」

 由奈が口付けに驚いているうちに、暁の手によって着物は剥ぎ取られてしまっている。そして、こぼれ落ちた乳房を暁の手がやわやわと揉み始めた。
 他人にこうして乳房を揉まれるのは二回目だ。だが、何故だろう。襲ってきた男たちにされた時は痛みと気持ち悪さしか感じなかったのに、今はくすぐったさと感じたこともない感覚に落ち着かない気分だ。何より、甘い痺れに声が押さえられない。

「気持ちいいか」
「ひ、あ……ぁっ」

 暁の声が耳元で鼓膜を震わせる。くちゅりと濡れた音が聞こえ、耳朶を這う舌の熱さに体が震えた。すると自然に浮いてしまっていた腰に、乳房を揉んでいた暁の手が降りてくる。

「ああ、こちらも蕩けている……」
「や……そんな、とこ……ぁ」

 脇腹から太ももへと降り、折り返して太ももの内側を上ってきた指先が足の付け根に触れる。閉じられていた割れ目に暁の指先が触れると、由奈の体が跳ね、耳朶を舐められた時と同じくらいの音量で濡れた音が聞こえた気がした。

「ぅあ……っふ」
「上手だ、由奈。痛くはなかろう?」

 ツプン、と音を立てて入ってきた暁の指に、由奈は顔を歪める。だが、彼の言う通り痛みは感じない。若干の異物感があるだけだ。だが、初めての感覚に由奈は戸惑う。揺れる由奈の瞳を覗き込んだ暁は、また唇を重ねてきた。そして舌を伝って来た彼の唾液を、由奈は喉を鳴らして飲む。

天狐てんこの体液は媚薬だ。人には快楽しか与えぬ」
「てん、こ? あっ」
「妖力を持つ狐だ。ほら、由奈のココは、我が指を全て飲み込んだぞ」

 暁の声が嬉しそうに弾んで聞こえ、彼と目が合った瞬間、由奈の心臓が跳ねた。それは彼女の身体を震えさせ、ナカにある暁の指にも如実に伝わってしまう。

「まだ指だけだぞ? 食い千切らんばかりに締め付けて……狭いな、由奈のココは」
「ぁあっ……っん……やぁ……」
「いくら痛みを感じぬとはいえ、解さねばな?」

 柔らかな由奈の乳房に舌を這わせながら、暁は指先で彼女のナカをかき混ぜ始める。耳を塞ぎたくなるような淫らな音が二ヶ所から聞こえ、由奈は恥ずかしくなるが、徐々に快感に飲まれて音が遠ざかっていくように感じた。そして、いつの間にか増やされていた暁の二本の指で、一点を集中的に刺激されると身体が弓なりになった。

「ここだな」

 先程同様、暁の嬉しそうな声が遠くで聞こえるが、由奈はそれどころではない。未知の感覚から逃げようとした身体はガッチリと暁の腕で絡めとられ、彼の指先から逃げようと腰を揺らしても、暁の指がそこから離れることはなかった。

「由奈……イけ」
「っ……」

 囁かれた暁の声が脳内に溶けていく。次いで唇を奪われた由奈は、彼の口内で喘声を上げながら果てた。そしてそのまま彼女の意識はふつりと途切れたのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...