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ベッドに腰掛けていた私の前に、ナディエが跪きます。そして私を見上げるようにして見せる顔には、心からの同情が感じられます。夫の顔色ばかり窺っている使用人たちの中で、彼女だけが唯一の味方になってくれているように思います。私の心の支えなのです。

「何が足りなかったのかな? どうすれば、もっと良い妻になれたのかしら? 私が完璧な妻であれば、あの人は他に女性を求めることなんてなかったのかしら」

鼻声になっている私の言葉に対し、ナディエは私の手を優しく握り、ゆっくりと首を横に振りました。

「いえ……旦那様は奥様が嫉妬するお顔を楽しんでいます。私はこの家に仕えて四十年になりますが、旦那様のあの独特の癖を、旦那様がまだ幼い頃から見て参りました。自分に十分に好意を寄せたと判断すると、旦那様は逆の態度を取り、相手を惑わせるのです。そして、愛情を試そうとなさいます……」

「けっこうなご趣味だこと……」

「奥様が嫁いでいらしたとき、今回ばかりは旦那様のあの悪癖が出ないのかと思いました。それくらい、旦那様は奥様を大切にしておりました。今でも、お気持ち自体にお変わりはないのだと思います。しかし……残念です。恐れていた事態が、こうして起きてしまい……」

不意なことに、怒りと悲しみの混ざりあった感情が私の胸に湧き上がりました。

「どうして、もっと早く教えてくれなかったのよ! 私がこの城に来たとき、すぐに言ってくれればよかったじゃない……ナディエも、どうせあの人が怖いんでしょ!」

「………………申し訳ありません……」

ナディエはまるで自分の責任のように、申し訳なさそうな顔をしました。それがいっそう、私の心を辛くします。ナディエに責任がないことくらい、わかっています。ナディエにきつくあたっても仕方がないのに、感情を抑えられませんでした。自分が最も信頼している人に、行き場のない感情をぶつける。これはなんて皮肉なことなのでしょう。本当は、こうして目の前で支えてくれる大切な人にこそ、迷惑をかけたくないと思っているのに。

「ごめんね……私、もうこれから生きていける自信がない……。あんな夫の妻であり続けることに、希望が持てないの。だからといって、この城を出て一人で生きていけるはずもないし……。こうして大人になるまでに、貴族の妻をやめても生きていけるような何かを身につけておけばよかった! ……実家に守られて、ぬくぬくと生きすぎてしまったわ」

「弱気にならないでください。状況を良くしていける方法がきっと見つかるはずです」

「あのね、びっくりしないでね。最近、手に入れたものがあるの……これ……」

私はそう言いながら、手に持った袋に目をやりました。私の目を見ていたナディエも、袋に視線を移します。

「気になっておりました。奥様……それは何ですか?」

「毒薬……よ」
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