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8 最終話

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決闘の告知に驚いたのは、間男であるベルナール様よりも領主様でした。この時初めて息子が私の妻と不倫していたと知ったようです。

領主様は突然の事態にあせったのか、早急に私との交渉の場を設けてくれました。先方が提示したのは、私の借金の肩代わりと没収された財産の回復、引き続きの領地管理権でした。戦争でお金がないと言っていたはずなのに虫のいい話ですが、息子を失うよりいいと考えたのでしょう。

私はこの条件をのむことにし、さらに、戦争への参加を希望しました。戦争に参加して報酬を得られれば、財産を築く足がかりにできるからです。

要求は認められ、私は戦争に参加しました。この選択は運良く正解でした。実際にこの戦争が開戦したからです。

戦争と一口に言っても、さまざまな形態があります。ただ睨み合って終わるだけでは、大した報酬は望めません。戦場で勇敢に敵をなぎ倒した私は、その活躍を国王陛下も認めるところとなったのです。戦利品に加えて莫大な恩賞を手に入れ、胸を張って帰宅しました。一年間の遠征から帰ると、領地は再び春を迎えていました。

帰ってきた私は英雄のような扱いを受けました。戦地での武勇は末端の村にまで広がり、私はどこに行っても尊敬のまなざしを感じました。領地は元通りどころか、恩賞を利用してさらに充実させられたので、領民も大喜びでした。



さて、ここまでが今日に至るまでのおおまかな経緯です。

私は戦争に行く前に泣く泣く離縁手続きを済ませていました。シャルロットを自由の身にするためです。今となっては無事に戦争から帰り、財産も回復したので、再婚したいと考えています。

しかし、従卒たちに相談したところ、全員が再婚に反対しました。ついさっきのことなのですが、私はシャルロットの悪政と浪費癖について彼らから詳しく聞かされました。彼女は私に黙って領民から”贈り物”という名目で無理やり税を徴収し、浮気の費用としてつかっていたらしいのです。化粧品や馬車代はそれなりにかかりますからね……。

ですが……つまるところ……これらは私の責任だと思うのです。私という青二才が一人の華麗な女性であるシャルロットを満足させられなかったからこそ、彼女に誤った道を歩ませてしまったのです。

今の私は戦争で成果をあげ、以前の私とは違います。過去の結婚生活には未練が残っていますし、今度こそシャルロットを振り向かせられると思うのです! その証拠に、彼女から復縁依頼の手紙が来たではないですか!

手紙には、シャルロットがまだ独身であることも記されていました。加えて、私が戦争に出かけている間、毎日無事を祈っていた、とありました。彼女はずっと待ってくれていたのです! 従卒たちの中には「難ありだから、再婚できなかったのだろう。戦争の間も待っていたとか、祈っていたとか嘘くせえんだよ」などと笑う者もいます。それはきっと間違えています。シャルロットは私以外の男に指一本触れさせないと誓ったからこそ、独身を守っていたに違いありません。

私は従卒たちを説得し、騎士としてこの誠実な愛を貫き通そうと思っています。それでこそ、私の今までの苦労が報われますし、これからの生きる希望となるのですから!
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