5 / 8
5
しおりを挟む
考えているうちに、日が昇りました。私は二晩連続の徹夜で、疲労困憊の状態でした。寝る必要があるとわかっているのですが、心配事を抱えるといつもこうなのです。一度心配を始めると、その心配事が去ってしまうまでずっと考えてしまうタイプです。
さて、私は身支度を整えると、朝日を背にして屋敷を出ました。そして懇意にしている商人であり金貸しでもあるマクシミリアンを訪ねました。やはり領地の物は切り売りできないと考えたので、お金を借りようと思ったのです。
マクシミリアンは不気味な雰囲気を持つ色白の男なのですが、この日は屈託のない笑顔を見せる少年のようでした。親身に私の話を聞いてくれました。
「リシャール様は理想の騎士でいらっしゃいますね。奥様のために立派な服を用意してやろうというお気持ち、このマクシミリアン、心の底より感動いたしました」私の事情を聞いたマクシミリアンはこのように言いました。
「ありがとう! ところで、金を借りる上での担保だが……無担保では無理か?」
「ははは、冗談がお上手ですね。さすがにリシャール様でも無担保でお金を融通するのは厳しいものがあります。もし返済期日までにお金を返してもらえないようであれば、領地の物か、屋敷の物を頂きに参ります。しかし、わたくしとリシャール様の仲ですので、万が一のことがあったとしても、柔軟に対応しますからご安心ください」
こうして私は人生で初めての借金をしました。二年分の生活費にあたる金貨を前にして、正直震えました。しかし、借金を背負う恐怖よりも、やっとシャルロットの服を買えるという安心感のほうが勝っていたように思います。この時の決断は今でも後悔していません。何度生まれ変わったとしても、彼女の満足を叶えるために、私は全力を尽くすであろうからです。
さて、お金を手にして屋敷に帰ったのですが、シャルロットには借金したことを黙っていました。余計な心配はかけたくないですし、なにより彼女が服を買うのを躊躇させたくありませんでした。領地の設備や家畜の数を見直し、無駄を減らしてお金を作ったということにしました。この時の判断が正しかったのか間違っていたのかは、いまだにわかりません。彼女を傷つけたくない一心でついた嘘でした。
さて、私は身支度を整えると、朝日を背にして屋敷を出ました。そして懇意にしている商人であり金貸しでもあるマクシミリアンを訪ねました。やはり領地の物は切り売りできないと考えたので、お金を借りようと思ったのです。
マクシミリアンは不気味な雰囲気を持つ色白の男なのですが、この日は屈託のない笑顔を見せる少年のようでした。親身に私の話を聞いてくれました。
「リシャール様は理想の騎士でいらっしゃいますね。奥様のために立派な服を用意してやろうというお気持ち、このマクシミリアン、心の底より感動いたしました」私の事情を聞いたマクシミリアンはこのように言いました。
「ありがとう! ところで、金を借りる上での担保だが……無担保では無理か?」
「ははは、冗談がお上手ですね。さすがにリシャール様でも無担保でお金を融通するのは厳しいものがあります。もし返済期日までにお金を返してもらえないようであれば、領地の物か、屋敷の物を頂きに参ります。しかし、わたくしとリシャール様の仲ですので、万が一のことがあったとしても、柔軟に対応しますからご安心ください」
こうして私は人生で初めての借金をしました。二年分の生活費にあたる金貨を前にして、正直震えました。しかし、借金を背負う恐怖よりも、やっとシャルロットの服を買えるという安心感のほうが勝っていたように思います。この時の決断は今でも後悔していません。何度生まれ変わったとしても、彼女の満足を叶えるために、私は全力を尽くすであろうからです。
さて、お金を手にして屋敷に帰ったのですが、シャルロットには借金したことを黙っていました。余計な心配はかけたくないですし、なにより彼女が服を買うのを躊躇させたくありませんでした。領地の設備や家畜の数を見直し、無駄を減らしてお金を作ったということにしました。この時の判断が正しかったのか間違っていたのかは、いまだにわかりません。彼女を傷つけたくない一心でついた嘘でした。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
辺境伯は王女から婚約破棄される
高坂ナツキ
恋愛
「ハリス・ワイマール、貴男との婚約をここに破棄いたしますわ」
会場中にラライザ王国第一王女であるエリス・ラライザの宣言が響く。
王宮の大ホールで行われている高等学校の卒業記念パーティーには高等学校の卒業生やその婚約者、あるいは既に在学中に婚姻を済ませている伴侶が集まっていた。
彼らの大半はこれから領地に戻ったり王宮に仕官する見習いのために爵位を継いではいない状態、つまりは親の癪の優劣以外にはまだ地位の上下が明確にはなっていないものばかりだ。
だからこそ、第一王女という絶大な権力を有するエリスを止められるものはいなかった。
婚約破棄の宣言から始まる物語。
ただし、婚約の破棄を宣言したのは王子ではなく王女。
辺境伯領の田舎者とは結婚したくないと相手を罵る。
だが、辺境伯側にも言い分はあって……。
男性側からの婚約破棄物はよく目にするが、女性側からのはあまり見ない。
それだけを原動力にした作品。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
お姉様に押し付けられて代わりに聖女の仕事をする事になりました
花見 有
恋愛
聖女である姉へレーナは毎日祈りを捧げる聖女の仕事に飽きて失踪してしまった。置き手紙には妹のアメリアが代わりに祈るように書いてある。アメリアは仕方なく聖女の仕事をする事になった。
この婚約破棄は、神に誓いますの
編端みどり
恋愛
隣国のスーパーウーマン、エミリー様がいきなり婚約破棄された!
やばいやばい!!
エミリー様の扇子がっ!!
怒らせたらこの国終わるって!
なんとかお怒りを鎮めたいモブ令嬢視点でお送りします。
【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。
まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。
私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。
お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。
けれど、彼に言われましたの。
「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」
そうですか。男に二言はありませんね?
読んでいただけたら嬉しいです。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる