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ハンスも含めて、みんながあ然とした。
私もてっきり倉庫の中にいると思っていたから、どこに消えてしまったのかと焦った。これでは、みんなをせっかく呼んだのに無駄骨になってしまう……。
すると、どこからともなく、窓ガラスをどんどん打ち付ける音が聞こえてくる。
みんなも何の音かと思いきょろきょろしていると、ハンスがその音の正体に気がついた。
「あそこだ!」
ハンスが指差したのは、カタリーナの部屋だった。部屋の窓からカタリーナの上半身が見えている。もちろん裸の。カタリーナは目をつむりおでこを窓ガラスに打ちつけていたのだ。もちろん、情事は現在進行系であり、恍惚に浸るカタリーナの顔をみんなが下から眺めた。
「みなさん、中へ入ってください! 案内します!」
ハンスはそう言ってみんなを家に招き入れ、ぞろぞろと二階のカタリーナの部屋まで行った。もはやみんなも私やハンスのためというよりかは、野次馬として楽しむような顔をしている。大人が揃いも揃って何をやっているんだろうかと、私も可笑しくなってきた。
ハンスが扉を開ける。ハンスの後ろでは野次馬たちが背伸びしたりしゃがんだりして部屋の中を覗き込んだ。
ゲラルトとカタリーナは窓際で行為の最中だった。ゲラルトの背中とお尻が丸見えで、二人はまだ私たちの存在に気がついていない。
「あん、あん、あ~~~~ん! えくすたすぃ~~~~!」
カタリーナのあえぎ声をみんながお経のように聞いている。
私は笑いがこらえきれなくなって、ついにゲラルトに声をかけた。
「あなた! 何をやっているの!」
「うわっ! ああああああああ!」
ゲラルトは驚きのあまり腰が抜けて、床に尻もちをついた。カタリーナも私たちに気づき「きゃあ!」と叫んだ。
ゲラルトは口を開けて、私に指を差した。
「な、なぜお前がここにいる……? 鍵を締めてきたはずだぞ……」
私はもう怖くなかった。みんながいるから。
「そんなことはどうでもいいでしょ。あなたは仕事に行ったんじゃなかったの?」
「そ、そうだけど……いや、これは違うんだ! 仕事の前に、カタリーナにどうしてもと言われ、誘惑されたんだ」
ゲラルトの言葉を聞いて、カタリーナは顔をしかめた。
「いっっっっつもゲラルトがやりたいやりたいって言うんじゃない! わたしのせいにしないでよね!」
カタリーナに吐き捨てられるようにして言われたゲラルトは、その場にうなだれた。
「仕事が忙しくて……だからちょっとストレスが溜まっていたんだ……。そう! これはしかたないことなんだ! 俺だって男なんだから!」
その言葉を聞いたシルヴェスターが、のそっと部屋に入りゲラルトの前に立った。
ゲラルトはまさかシルヴェスターまで来ているとは思わなかったのだろう。肩が小刻みに震え、子犬のように怯えている。
「シルヴェスターさん……」
なんとかそう声を発したゲラルトは、もはや身体のどこにも力が入らないようだった。さっきまでは元気であっただろうイチモツも、床で小さくしょげてしまい、役目を途中で放り出されている。
「ゲラルト。仕事で忙しいんだってなあ!? 何の仕事で忙しいか言ってみろよ? あぁん? この無能が」
シルヴェスターがこう凄むと、ゲラルトは縮み上がった。
「いえ……シルヴェスターさん……俺は……暇です。ごめんなさい」
「そうだろ? お前みたいなやつにできる仕事は少ないもんなぁ? 俺が守ってやらなかったら、今ごろどうなってる? 仕事続けられてんのか?」
「いえ……難しいと思います」
「あぁん? 難しいだぁ? 無理なんだよ。ほら、言い直せ」
「はい……俺には無理です」
シルヴェスターはゲラルトに圧をかけまくって、髪を掴んだ。そして私の目の前まで引きずるようにして持ってきて、「一発くらいビンタしてやりなよ」と言った。
私はうなずき、ゲラルトに思いっきりビンタをしてやった。
バシッッッ!!!!!!
「ほげっっっっっっ」
私もてっきり倉庫の中にいると思っていたから、どこに消えてしまったのかと焦った。これでは、みんなをせっかく呼んだのに無駄骨になってしまう……。
すると、どこからともなく、窓ガラスをどんどん打ち付ける音が聞こえてくる。
みんなも何の音かと思いきょろきょろしていると、ハンスがその音の正体に気がついた。
「あそこだ!」
ハンスが指差したのは、カタリーナの部屋だった。部屋の窓からカタリーナの上半身が見えている。もちろん裸の。カタリーナは目をつむりおでこを窓ガラスに打ちつけていたのだ。もちろん、情事は現在進行系であり、恍惚に浸るカタリーナの顔をみんなが下から眺めた。
「みなさん、中へ入ってください! 案内します!」
ハンスはそう言ってみんなを家に招き入れ、ぞろぞろと二階のカタリーナの部屋まで行った。もはやみんなも私やハンスのためというよりかは、野次馬として楽しむような顔をしている。大人が揃いも揃って何をやっているんだろうかと、私も可笑しくなってきた。
ハンスが扉を開ける。ハンスの後ろでは野次馬たちが背伸びしたりしゃがんだりして部屋の中を覗き込んだ。
ゲラルトとカタリーナは窓際で行為の最中だった。ゲラルトの背中とお尻が丸見えで、二人はまだ私たちの存在に気がついていない。
「あん、あん、あ~~~~ん! えくすたすぃ~~~~!」
カタリーナのあえぎ声をみんながお経のように聞いている。
私は笑いがこらえきれなくなって、ついにゲラルトに声をかけた。
「あなた! 何をやっているの!」
「うわっ! ああああああああ!」
ゲラルトは驚きのあまり腰が抜けて、床に尻もちをついた。カタリーナも私たちに気づき「きゃあ!」と叫んだ。
ゲラルトは口を開けて、私に指を差した。
「な、なぜお前がここにいる……? 鍵を締めてきたはずだぞ……」
私はもう怖くなかった。みんながいるから。
「そんなことはどうでもいいでしょ。あなたは仕事に行ったんじゃなかったの?」
「そ、そうだけど……いや、これは違うんだ! 仕事の前に、カタリーナにどうしてもと言われ、誘惑されたんだ」
ゲラルトの言葉を聞いて、カタリーナは顔をしかめた。
「いっっっっつもゲラルトがやりたいやりたいって言うんじゃない! わたしのせいにしないでよね!」
カタリーナに吐き捨てられるようにして言われたゲラルトは、その場にうなだれた。
「仕事が忙しくて……だからちょっとストレスが溜まっていたんだ……。そう! これはしかたないことなんだ! 俺だって男なんだから!」
その言葉を聞いたシルヴェスターが、のそっと部屋に入りゲラルトの前に立った。
ゲラルトはまさかシルヴェスターまで来ているとは思わなかったのだろう。肩が小刻みに震え、子犬のように怯えている。
「シルヴェスターさん……」
なんとかそう声を発したゲラルトは、もはや身体のどこにも力が入らないようだった。さっきまでは元気であっただろうイチモツも、床で小さくしょげてしまい、役目を途中で放り出されている。
「ゲラルト。仕事で忙しいんだってなあ!? 何の仕事で忙しいか言ってみろよ? あぁん? この無能が」
シルヴェスターがこう凄むと、ゲラルトは縮み上がった。
「いえ……シルヴェスターさん……俺は……暇です。ごめんなさい」
「そうだろ? お前みたいなやつにできる仕事は少ないもんなぁ? 俺が守ってやらなかったら、今ごろどうなってる? 仕事続けられてんのか?」
「いえ……難しいと思います」
「あぁん? 難しいだぁ? 無理なんだよ。ほら、言い直せ」
「はい……俺には無理です」
シルヴェスターはゲラルトに圧をかけまくって、髪を掴んだ。そして私の目の前まで引きずるようにして持ってきて、「一発くらいビンタしてやりなよ」と言った。
私はうなずき、ゲラルトに思いっきりビンタをしてやった。
バシッッッ!!!!!!
「ほげっっっっっっ」
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