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ゲラルトが怒っている姿を見て、ハンスの両親もびっくりしていた。

私は反射的に「ごめんなさい……」と謝ってしまったが、謝った後に(なんで別の女を抱いていたお前に謝らなくちゃいけないんだよ)と思った。

自分のことは棚に上げておいて、白々しい男ね。

ゲラルトは顔をしかめて冷たく言った。
「何をしていたんだ?」

まさか裏庭であなたを見ていましたよとは言えないので、ごまかすことにした。
「家のペンキを見ていました。綺麗に塗られていますね」

そう言いながらハンスの父親の顔を見ると、嬉しそうにした。
「お! さすがオリヴィアちゃん、わかっちゃったかい? そうなんだよ、一週間前に塗り直したばかりでね。いい感じに塗れているでしょ?」

私は両手を合わせて「はい!」と笑顔で応えながら、ゲラルトの目を見た。さすがにこれ以上怒ることはできないようだ。ゲラルトは「ふんっ」と不服そうに鼻息を吐きながら背もたれに背をかけた。


それから一時間ほど経ったとき、またゲラルトが席を立った。裏庭のほうへ向かっている。また性懲りもなくカタリーナに会うのだろう。

今度は私からハンスに話しかけた。
「カタリーナって今日はこの家にいないのよね?」

「うん、そうだよ。昼食会が始まる直前に家を出たもん」

「実はね……裏庭で見たのよ。今も倉庫の中に入ってる」

「はあ!? 本当に!?」

ハンスは「なんで倉庫にいるんだ?」とつぶやきながら、首をかしげている。そして私と同様、一つの結論にたどり着いた。

「もしかして……ゲラルトとカタリーナは……やっぱり浮気を……?」

私もハンスの言葉に同調した。
「うん……私も信じられなかったけど、やっぱりそうだと思う。カタリーナは出かけたふりをして倉庫へ行き、隠れているんだわ」

ハンスはまたソワソワし始めた。
「どうしようオリヴィア! 僕が倉庫に行って、二人を止めてこようか?」

「いや、それだけはやめて」

「なんで!? 今もあの倉庫で妹が不倫していると思うと気持ち悪いよ」

「それは私が言いたいセリフよ。なんで夫婦で呼ばれたのに夫は浮気しているのよ。バカらしい……」

私のしょげた顔を見て、ハンスはあわわと焦った。
「一番ショックなのはオリヴィアだよね。ごめんよ、うちの妹が……。僕にできることはある?」

今の段階でゲラルトの浮気を暴いたところで、私を『妻の部屋』に閉じ込める習慣は変わらないだろうなと思った。直感にすぎないのだけど、私が解放されるためにはもっと強い仕返しがいる気がする。

しばらく考えたあと、一つの作戦を思いついた。
そしてその作戦を、ハンスに説明したのだった。
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