夫は愛人のもとへ行きました。「幸せ」の嘘に気づいた私は王子様と結ばれます。

Hibah

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朝、ドミニクは元気よく出かけて行った。

今までに見せたことのないような笑顔を見せていたのが悔しかった。

ドミニクの愛人は、片道で五日間もかかるほど遠いところに住んでいるらしい。詳しいことは聞かなかったが、行って帰ってくるだけでも十日かかるので、ドミニクとは最後の別れになると思った。

昨日とは違い、今日の私は冷静である。昨晩は離縁状を穴が開くほど見つめ、心の整理をした。なかなか寝つけなかったけど、朝起きて離縁状をまた眺めると、ドミニクと別れるという現実を受け入れつつある自分に気づいた。

(私も切り替えなくちゃ……)

仮にあと六日で世界が滅亡するとしても、私がしておきたいことは特になかった。なにをやっても無意味というか、虚しい気がした。

とりあえず、家中にあるドミニクの剣はすべて処分しよう。そう思い立った。もうドミニクは愛人のもとへ行ってしまったし、剣があるとドミニクを思い出してしまう。私自身が崩壊しないために、せめて自分の家は自分の世界にしておきたい。

(よし……! 今日の私の仕事は、ドミニクの剣をすべて捨てることだ……!)

やることを見つけた私には力が湧いてきた。でもドミニクのコレクションは半端なく数が多く、何百本とあった。一本一本が取り付けられていて重たいし、身体的負担も相当だった。庭に置いてある荷車を玄関先まで引っ張り出し、どんどん剣をのせていった。

当然一日では終わらず、すべての剣を家から出すのに三日もかかってしまった。かつては剣に嫉妬したこともあったけど、剣よりもさらに愛人を選んだドミニクが不思議だった。どんな人なんだろう……。つい想像してしまう自分を押しのけながら、私は荷車を引いた。そして剣をすべて谷の底へ落とした。

(すっきりした!)

部屋が広くなったし、生活空間が広がって快適だった。他のドミニクの物もどんどん捨てて、捨てるたびに私の心は軽くなった。街に行くと高級な家具もアクセサリーもそのへんに捨てられていたので、気に入ったやつを持って帰った。ドミニクと暮らしていたときにはドミニクを優先した家にしていたけど、自分のことだけでいいならこんなに楽しい家にできるのかと、嬉しかった。



世界滅亡宣言から四日目の昼、家のインテリアを眺めながらティータイムをしているとき、一人の男性が訪問してきた。



「こんにちは、フローラ様はいらっしゃいますでしょうか?」
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