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14 ジュリエッタ視点

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私は玄関まで走った。

するとそこには、ローレンス様と使用人、そして……もう一人いた。

結婚前に、街でリリアンと見かけた”ローレンス様”に違いない。長身ですらっとしているし、あの日着ていた服と同じ服だった。横顔の感じも……。

「やあジュリエッタ! 長い間留守にしてすまなかったね!」

ローレンス様は変わらず優しい笑顔だった。私はローレンス様の元気そうな姿を見て、涙が出てきてしまった。

「お待ち……申し上げておりました。お帰りなさいませ」

振り絞るようにして声を出した。

出立前よりも日焼けしたローレンス様は、私の頭を撫でながらこう言った。

「君が街で見たという”ローレンス”を連れて帰ってきたよ」

私は”ローレンス様”を正面から見た。かつて……毎日のように思い出し、お慕いした方……のはずだった。でも、よく見てみると、目は黒く窪んでいて、不吉な雰囲気を醸し出している。こんな人……だったっけな……? 確かに本人だと思うけど、あの日は横顔と後ろ姿しか見れなかった。そのせいか、私は自分の中で美化しすぎていたのかもしれない。

”ローレンス様”は私に自己紹介をした。
「はじめまして、ジュリエッタさん。わたしのことを慕ってくれていたという話を聞いて、今日お会いできるのを楽しみにしておりました」

私は言葉につまりながら「は、はあ……」と声にもならない返事をしたあと、とりあえずおじぎをした。

すると、”ローレンス様”は私に向き合い、堂々とした声でこう言った。
「ジュリエッタさん、今すぐにとは言いませんが、私と結婚してもらえませんか?」
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