愛人を連れてきた夫とは当たり前ですが暮らせません。どうぞお幸せに。

Hibah

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アドルフは「がああああ!」と叫び、両手で頭をかきむしった。


「さすがに冗談だよな? うちと取引できないなら、お前の親父だって困るはずだ!」


私は静かに首を横に振った。


「別の取引先にするだけだそうよ。私との婚約関係があるから、お父様はあなたたちに多くの仕事を与えてきたのだと思うわ。もちろんそれって、あなたの人柄を見込んで、というのもあったと思う」


「仕事に人柄なんて関係あるか! 儲かっていたらいいだろ!」


「貴族なのに商人みたいなことを言うわね。あなたには失望した。誇りも失ったのね」


「金がなければ……金がないと何もできないじゃないか……くそくそくそ……今までの仕事がパーになる……」


「じゃあ、私は荷物をまとめて実家に帰ります」



荷物を外に運び出していると、アドルフの愛人リディが寝室から出てきた。

リディは私を見てあくびしながら言った。


「あれ~~~、あんたなにしてるのぉぉ~? は~~~ぅ」


相変わらず下品で変な女……。どうしてアドルフはこんな人を好きになったの? 理解できない……。


「リディ。私はこの家から出ていくから。あなたはアドルフと二人でこの家に住めるのよ。よかったわね」


「まぢ~~~? あんたいなくなるならあたし嬉しいかもぉ~~~。アドちゃんにいろいろ買ってもーらおっ」


アドルフはお財布にされているんだろうか。最初に出てくる言葉が「買ってもらおう」だなんて……。




その後、私は実家での生活を始めた。父が積極的に離縁手続きを進めてくれて、無事に離縁した。アドルフには慰謝料を請求することになった。婚姻関係をむげに破壊したのだから、当然よね。

アドルフの父親が私と父に土下座して謝ってきたけど、許さなかった。父親に付いてきていたアドルフはまだあきらかに不満そうだったし、その態度には父も激怒した。アドルフは謝罪しにきたのがむしろ逆効果となってしまった。

私の家の支援を失ったアドルフ家は、懸命に別の道でがんばろうとしたみたい。だけど経済的には厳しくなって、結局愛人のリディもあの家を出て行ったそう。


「お金ないのぉ? え~~~、つまんないぃぃ~。お金がない男なんて意味ないよ~。裕福なあんただからよかったのにぃ。お金もなしであたしが抱けるとか思わないでよおぉぉ~~~」


「金ってのはな、稼げばいいだけなんだ。俺は能力がある男だし、新しい仕事をがんばってる。信じてついてこい! 俺を支えてくれ!」


「はぁ? 支えるってなによぉ? あたしはあたしに贅沢させてくれる人が好きなのぉ。そんだけぇ~~~」


こんなやりとりをしている二人を、使用人が王都で見かけたそうだ。

アドルフは愛人に捨てられ、今や仕事もうまくいっていないそう。アドルフの家はあっという間に没落貴族と呼ばれるようになり、貴族社会にはいられなくなった。

馬鹿な女とくっついて、傲慢さが抜けなかった男の末路ね。ざまぁみろばーか。



   ***



私には新しい結婚の話が舞い込んでいる。今までアドルフのことしか考えてこなかったけど、世の中にはいろんな男性がいるわね。アドルフと別れたおかげで、私自身の視野も広がったわ。

次こそいい人を見つけて、幸せな結婚にしようと思う!
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