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16 フィリップの手紙 5/8

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ジョセフィーヌとの噂には反論できないというか、事実なので困りました。ちっ! くそっ!

再会を果たしたあの日から、ジョセフィーヌとお茶会や舞踏会などで会うたびに、その会を途中二人で抜け出し、エッチしました。どこかの屋敷の庭園の茂みでしたこともありますし、空いた部屋を勝手に使わせてもらったり、バルコニーでしたりしたこともあります。

女性は……というよりジョセフィーヌはベッドの上でするのが好きなようですが、僕は外の空気を吸いながらエッチするのが好きです。

まあ……僕の性癖はどうでもいいですよね。



とにかくどこかで誰かに見られたのかもしれません。ちっ! くそっ!



噂なんてただの噂でしかないと考えていました。社交界にはよくあることだし、大した力はないだろうとたかをくくっていました。

しかしほどなくして、父に呼び出されることになりました。応接室に行くと、そこには父だけでなくアリアの父親もいました。父と、アリアの父親は昔一緒に戦争へ赴いた戦友だそうで、いつもは柔らかい表情で談笑しているのに、この日に限っては違います。

僕は二人を見た瞬間、「まずいことになった」と直感しました。父は眉間にしわを寄せ、厳しい態度で僕に接しました。


「フィリップ。お前の素行について変な噂が流れているぞ。婚約期間の行動には気をつけろと口を酸っぱくして言ってきたよな? どういうことなんだ」と、父は低い声で質問してきました。


完全にまずいです。


「変な噂……といいますと……?」


「ジョセフィーヌとお前が関係を持っている、という噂だ。どうなんだ?」


僕は全身で否定しました。


「それは誤解です! 確かに顔見知りの仲なので挨拶をしたり話したりすることはありますが、男女の関係を持ったことなど一度もありません! 僕とジョセフィーヌが話しているのを見て、噂好きの誰かが面白半分に流したのでしょう。僕は何も悪いことはしていません。神に誓って申し上げます!」


ジョセフィーヌとのことはとにかく否定するしかないと思いました。目の前にはアリアの父親が恐ろしく深刻な顔をして座っていますし、僕の父も非難するような目でこちらを見ています。ジョセフィーヌとは噂がなくなってからまた会ってエッチすればいいと思いました。



冷たい脇汗がおもむろにつーっと二の腕を降りました。



父は「はあ……」と大きなため息をつくと、「この馬鹿者が!!!!」とすごい剣幕で叫びました。


「フィリップ。嘘をついたな。神に誓うだと? どの口が言った! 結婚前のお前の素行を確かめるために、アルテュール卿(アリアの父親)は内偵を出していたんだよ。お前がいつどこでジョセフィーヌと関係を持ったか、すべて記録してある。これを見ろ」


そう言って父は僕に一枚の紙を渡しました。僕は震えながらその紙を確かめました。そこには確かにジョセフィーヌと会った日の細かな情報が載っていました。僕はアリアの父親はもちろんのこと、父のほうにも恐怖で目を向けることができませんでした。
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