婚約者の浮気現場を目撃した公爵令嬢は、最後に勝利する。

Hibah

文字の大きさ
上 下
13 / 13

13 最終話

しおりを挟む
「うっ! ……うぅぅぅ……ぐわあああああああ!!!!!!」


刺された国王シャルルは痛さのあまり叫んだ。近衛兵Aは呼吸を荒げている。フレデリックの血に加えて、国王シャルルの血も床一面に広がる異常事態となった。


「おいおい、やりやがったよAが! まじで国王陛下を刺しちまった! 馬鹿じゃねえか?」と細身の近衛兵Cがうろたえながら言うと、巨体の近衛兵Bは「誰が馬鹿だって? いつもお前は人のことを馬鹿にしやがって!」と見当外れに掴みかかった。

こうして近衛兵BとCの喧嘩が再発した。近衛兵Aは血塗られた剣を片手に、クラウディアを見つめ惚れ惚れしている。国王シャルルとフレデリックは死んだ。なんじゃこりゃ。


さて、クラウディアはよろよろと立ち上がり、部屋を後にした。夫と義父が一日と経たずに死んだ。

歩く方角もわからないまま、結局彼女が正気に戻ったのは実家に帰ってからだった。

この事件以降、王族の失態が次々に明らかにされた。そして、フレデリックと共にヒガンバナを使っていたイザベルもその罪をとがめられ、結果的に死罪となった。イザベルだけならまだしも、彼女はすでに夫にも使用をすすめていたために、夫も巻き添えで死罪となった。自分は善良だと思っていても、悪い奴らとつるむとろくなことはないのである。

イザベルが裁判で弁明する前、いつものように姉であるクラウディアを頼ったそうだが、クラウディアは突っぱねたようだ。


「お姉様。どうか助けてください。もう二度とヒガンバナは使いませんし、まっとうに生きていきます。どうかお姉様からもお願いして、わたしを死罪から救って……」


「はあ……? 私の婚約者を寝取っておいて、都合のいいときだけ助けてもらいたいだなんて、笑えるわ。どれだけ傷ついたと思ってんの。あなたの自己責任。道を踏み外すのが当たり前になっている人間にとって、罪の恐怖はあまりにもお似合いね。安心なさい。あなたを彩るのが化粧台ではなく断頭台に変わっただけよ。それに……償う時間があるだけましだと思いなさい……フレデリック様が欲しかった時間が……あなたにはあるんだから」


「ああ……本当にごめんなさい……お姉様。フレデリック様とわたしの関係を……知っていらしたのですね。わたしはきっと地獄に行くのですね……」


「地獄がどんな場所か知ってて? あなたなんかに耐えられないわよ。なぜなら、地獄に耐えられない人間が行くのが、地獄なんだから……」


「うううう……申し訳ありませんでした、お姉様……」


こうしてヒガンバナを使用した貴族たちはイザベルをはじめとして処刑された。横暴を働きすぎた王族も追放され、権力を持つ貴族たちによる貴族制が成立した。クラウディアは王族のヒガンバナ使用を告発した勇敢なる女性として崇められ、貴族政治の一翼を担うこととなった。浮気をしない誠実な男とも再婚することができ、幸せな生活を送ったのであった。





追伸
近衛兵Aの行方は誰も知らない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

サレ妻王太子妃は実家に帰らせていただきます!~あなたの国、滅びますけどね???

越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
小国の王女だったヘレナは、大陸屈指の強国「大セルグト王国」の王太子妃となった。 ところが夫である王太子はふしだらなダメ男。怜悧なヘレナを「お高くとまった女」と蔑み、ヘレナとは白い結婚を貫きながらも他の女を侍らせている。 ある日夫の執務室を訪ねたヘレナは、夫が仕事もせずに愛妾と睦び合っている【現場】を目撃してしまう。 「殿下。本日の政務が滞っておいでです」 どこまでも淡々と振る舞うヘレナに、罵詈雑言を浴びせる王太子と愛妾。 ――あら、そうですか。 ――そこまで言うなら、実家に帰らせていただきますね? あなたの国、滅びますけどね??? 祖国に出戻って、私は幸せになります。

私は真実の愛を見つけたからと離婚されましたが、事業を起こしたので私の方が上手です

satomi
恋愛
私の名前はスロート=サーティ。これでも公爵令嬢です。結婚相手に「真実の愛を見つけた」と離婚宣告されたけど、私には興味ないもんね。旦那、元かな?にしがみつく平民女なんか。それより、慰謝料はともかくとして私が手掛けてる事業を一つも渡さないってどういうこと?!ケチにもほどがあるわよ。どうなっても知らないんだから!

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

くも
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。

百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」 私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。 この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。 でも、決して私はふしだらなんかじゃない。 濡れ衣だ。 私はある人物につきまとわれている。 イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。 彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。 「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」 「おやめください。私には婚約者がいます……!」 「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」 愛していると、彼は言う。 これは運命なんだと、彼は言う。 そして運命は、私の未来を破壊した。 「さあ! 今こそ結婚しよう!!」 「いや……っ!!」 誰も助けてくれない。 父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。 そんなある日。 思いがけない求婚が舞い込んでくる。 「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」 ランデル公爵ゴトフリート閣下。 彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。 これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

お飾り呼ばわりされた公爵令嬢の本当の価値は

andante
恋愛
婚約者を奪おうとする令嬢からからお飾り扱いだと侮辱される公爵令嬢。 しかし彼女はお飾りではなく、彼女を評価する者もいた。

処理中です...