上 下
9 / 13

9

しおりを挟む
出てきたのはフレデリックの父。

すなわち国王シャルルだった!


「陛下!!!」


取っ組み合いをしていた近衛兵を含め、皆がひざまずいた。さすがに国王の前で粗相をしては冗談で済まされない。

フレデリックが慎重に顔を上げた。


「父上、お見苦しいところをお見せしました。ところで……どうしてこの部屋にいらっしゃるので……?」


「黙っておれ、フレデリックよ。わしの城なのだから、わしがどこにいようが勝手だ」


「はい、仰せのとおりです。非礼をお許しください」


フレデリックの部屋にいた理由を言えるはずがない。国王シャルルは新婚夫婦の初夜がどのように行われるか楽しみで忍び込んでいたからだ。とんだすけべ親父なのだが、そのおかげでクラウディアは救われることになる。

気をつけなければならないのは、別の怒りでぷるぷると身を震わせる近衛兵A。Aだけは国王がこの部屋で覗きを試みていたと勘づいており、クラウディアを盗み見ようとしていた国王を許せないと考えていた。Aにとってクラウディアは憧れの存在なのである。


「フレデリック。ヒガンバナの使用は死罪だと知っているな?」国王シャルルが確認する。


「……っ! いえ、父上、これは……クラウディアが持ち込んだものです! わたくしめではございません……」


「ごまかしても無駄じゃ。初めから聞いておった。言い訳は無用ぞ。国王の後継は他にもおるのだからな。お前でなくてもかまわんから安心せい」


「そんな……父上……」


「せっかく結婚させてやったのに台無しにしおって。親不孝の愚息め。クラウディアのような美人で誠実な女を裏切り、罪を重ね、バレないとタカを括っておったのか。まだ若いから許してやりたいが、王族といえど例外はない」


国王シャルルはフレデリックに毅然とした態度を取った後、さらに続けた。


「クラウディアはお前にはもったいない。お前を死罪に処した後、わしの側妃とする」


一同に激震が走る。

クラウディアは唖然とするほかなかった。国王シャルルとは今後家族になるものと思い親交を深めてきたが、あくまで義父としてである。まさか側妃にするなどという言葉が出てくるとは想像もついていなかった。だって……義父ですよ……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子も妹も決して許しませんので覚悟してください

asami
恋愛
私はセリーナ・アリバベーナ。婚約していた皇太子ファッタースト・バーデンベルクにそれを突然一方的に解消された。そしてファッターストが新たに婚約しなおした相手はほかならぬ実妹のマーリン・アリバベーナなのであった……許さない絶対に、絶対に復讐してやると心に誓ったのであった。

美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……。

四季
恋愛
美しい貴族の令嬢である婚約者を捨てた愚かな王子の末路は……とんでもないものでした。

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

【完結】ごめんなさい実はもう私、記憶戻ってるの

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
恋愛
夫の浮気現場を偶然目撃してしまったサリア。 彼女は事実を隠蔽しようとした夫に引き倒され、 偶然頭を打ち記憶喪失になってしまう。 彼は記憶喪失になったサリアを見てやり直す好機だとし、 事実を伝えないままサリアの良い夫を演じている。 夫は思った。 このままサリアが記憶喪失で居続けてくれれば、 浮気のこともなかったことになり、サリアとの関係もやり直せると。 しかし、夫は気づいていなかったのだ。 すでにサリアが記憶を取り戻しているという事実に。 そして彼女に、自ら罪を告発するかどうかを試されてるということも。

傷物にされた私は幸せを掴む

コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。 (ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

私を捨てるんですか? いいですよ、別に。元々あなたのことなんて、好きじゃありませんので【完結】

小平ニコ
恋愛
「ローラリア、すまないが、他に好きな人ができた。おまえとはここまでだ」 突然そんなことを言い出したブライアンに、私はごく自然な態度で「はあ、そうなんですか」とだけ答えた。……怒りも、悲しみも、ほんの少しの嫉妬心もない。だって元々、ブライアンのことなんて、好きでも何でもなかったから。 落ち着き払った私の態度が気に入らないのか、ブライアンは苛立ち、その日のうちに婚約破棄は成立する。しかし、ブライアンは分かっていなかった、自分のとった行動が、どんな結末を招くかを……

処理中です...