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三人の近衛兵が「どうしたどうした?」という顔をして、ぞろぞろと入って来る。
「殿下! どうかなさいましたか?」
近衛兵Aが近づき、新婚の夫婦を交互に見る。掃除をしていたのか、片手には槍ではなくほうきを持っている。
フレデリックはクラウディアが受け取らなかったヒガンバナの粉を近衛兵たちに突きつけた。
「聞いて驚くな! クラウディアは僕に禁止物をすすめようとした国賊だ! 引っ捕らえて地下牢へ入れろ!」
フレデリックが断固とした調子で命じる。近衛兵たちは互いに顔を見合わせ、まだ事態が把握できていない。
「え、ヒガンバナ? マジですか?」近衛兵Bが鼻をぽりぽりかきながら、興味津々で目の前まで粉を近づける。
「おい馬鹿か! 吸っちまうぞ! 瓶を持ってきて回収するんだ!」細身の近衛兵Cが巨体の近衛兵Bの肩を掴み引き離す。Bの頭に一瞬で血がのぼる。
「Cの分際で痛いじゃねえか! 俺に喧嘩売ってんのか? お前はいつもそうだよな。役職は対等なんだから指図するんじゃねえ!」
「どさくさに紛れて吸おうとしてただろ? わかってんだよ馬鹿。わざとじゃなくても吸ったら捕まるぞ! しかも殿下の御前だぞ、気ぃ狂ってんのか?」
「何回馬鹿って言うんだ! 今日という今日は許さねえ!」
近衛兵Bが近衛兵Cに殴りかかり、取っ組み合いの喧嘩になった。そしてあっという間に巨体のBがCに馬乗りになったため、フレデリックが焦って止めに入った。近衛兵Aはクラウディアをじっと見つめ、その美しさに惚れ惚れしている。美人やイケメンを近くで見ると魔に取り憑かれてしまうのはよくあることである。
「おいBやめろ! 後にしろ! 今はとりあえずクラウディアを牢へ連れて行け。僕の命令だぞ! もごもごもご」フレデリックはBの太ましい手のひらで頬を押し返されながらも、必死に食らいつく。
「殿下は引っ込んでてください。クラウディア様を捕らえよなんていうのは冗談でしょ? 夫婦の変な夜のプレイに巻き込まんでください。牢屋だって掃除してないし、忙しいんですよ。今はCを懲らしめるチャンスなんですから!」
フレデリックは(ダメだこいつ。馬鹿すぎる)と思い、「おい! 誰かいないか!」と叫んだ。
「おるよ」
低いしゃがれ声が部屋の隅のほうから聞こえた。
仕切りの陰から出てきたのは……
「殿下! どうかなさいましたか?」
近衛兵Aが近づき、新婚の夫婦を交互に見る。掃除をしていたのか、片手には槍ではなくほうきを持っている。
フレデリックはクラウディアが受け取らなかったヒガンバナの粉を近衛兵たちに突きつけた。
「聞いて驚くな! クラウディアは僕に禁止物をすすめようとした国賊だ! 引っ捕らえて地下牢へ入れろ!」
フレデリックが断固とした調子で命じる。近衛兵たちは互いに顔を見合わせ、まだ事態が把握できていない。
「え、ヒガンバナ? マジですか?」近衛兵Bが鼻をぽりぽりかきながら、興味津々で目の前まで粉を近づける。
「おい馬鹿か! 吸っちまうぞ! 瓶を持ってきて回収するんだ!」細身の近衛兵Cが巨体の近衛兵Bの肩を掴み引き離す。Bの頭に一瞬で血がのぼる。
「Cの分際で痛いじゃねえか! 俺に喧嘩売ってんのか? お前はいつもそうだよな。役職は対等なんだから指図するんじゃねえ!」
「どさくさに紛れて吸おうとしてただろ? わかってんだよ馬鹿。わざとじゃなくても吸ったら捕まるぞ! しかも殿下の御前だぞ、気ぃ狂ってんのか?」
「何回馬鹿って言うんだ! 今日という今日は許さねえ!」
近衛兵Bが近衛兵Cに殴りかかり、取っ組み合いの喧嘩になった。そしてあっという間に巨体のBがCに馬乗りになったため、フレデリックが焦って止めに入った。近衛兵Aはクラウディアをじっと見つめ、その美しさに惚れ惚れしている。美人やイケメンを近くで見ると魔に取り憑かれてしまうのはよくあることである。
「おいBやめろ! 後にしろ! 今はとりあえずクラウディアを牢へ連れて行け。僕の命令だぞ! もごもごもご」フレデリックはBの太ましい手のひらで頬を押し返されながらも、必死に食らいつく。
「殿下は引っ込んでてください。クラウディア様を捕らえよなんていうのは冗談でしょ? 夫婦の変な夜のプレイに巻き込まんでください。牢屋だって掃除してないし、忙しいんですよ。今はCを懲らしめるチャンスなんですから!」
フレデリックは(ダメだこいつ。馬鹿すぎる)と思い、「おい! 誰かいないか!」と叫んだ。
「おるよ」
低いしゃがれ声が部屋の隅のほうから聞こえた。
仕切りの陰から出てきたのは……
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