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ベンジャミンの愛人を受け入れた翌日、私は父と話をした。

父が私に言う。
「ベンジャミンはどこかの男爵令嬢に熱を上げているそうだが、俺がはっきり言っておいたぞ。イブリンという婚約者がいながら浮いた話は許さん、とな」

「え!? そうなのですか!?」

「ベンジャミンのやつ、珍しく俺に食って掛かってきてたよ。ひょろひょろのガキのくせして、一丁前に吠えやがる。『僕はガーネットと駆け落ちしてでも一緒になってやる』なんて言ってるんだからな」

「なる……ほど……」

「イブリン。もしあいつが愛人を住まわせたいとか言ってきても、はっきり断るんだぞ。家のことは気にしなくていい。こっちにはベンジャミンの家を数分で制圧できる兵士たちがいるんだからな」

「……かしこまりました」

私はベンジャミンの提案を受け入れたという事実を父に言い出せなかった。

父の言葉には驚いてしまった。ベンジャミンは父にさえ啖呵を切り、駆け落ちも辞さないほどガーネットが好きなのだ。
私の中で、どうしてもベンジャミンを許せない気持ちが生まれた。ベンジャミンとは五年も一緒にいる。向こうは淡白だけど、悪くない関係だと思っていた。それなのに……私はあっという間に裏切られて……。



夜、部屋の窓を開けて満月を眺めた。虫の声も聞こえてきて、澄んだ空気が流れる夜だった。月が綺麗だったからではないけど、私の胸は月に揺り動かされた。

(ベンジャミンがそんなにガーネットと一緒にいたいなら、そうさせてあげよう)

朝、私の直属の精鋭部隊を集めて出かけた。どの人も無口で、私の言うことに絶対服従する兵士たちだ。

ベンジャミンは今日、ガーネットとともにバードウォッチングに行くと言っていた。そこを目指す。


森の中を進み、ベンジャミンとガーネットを見つけた。私は兵士たちに命じて二人を袋詰めにして捕縛した。叫び声なんてあげさせない。うちの兵士たちの隠密行動は、磨き抜かれている。

捕まえた二人を森の中にある地下の実験室に連れて行った。ここは、薬草実験に使っている地下室である。私は薬草採集や調合が好きなため、この地下室を父にあてがわれているのである。

袋詰めにしたベンジャミンとガーネットを地下室の牢に入れた。もともとは動物の生き血を採取するために動物を入れておく檻だったのだけど、ちょうどよい感じ。二人は鉄格子の中でもごもご動いていて、その様子はまるで白いイモムシのようだった。私は兵士たちに、今日のことは他言無用であることを伝え、解散させた。


(さて……まずはベンジャミンからかな)


私はナイフを手に取って、ベンジャミンが入った袋を切り裂くことにした。
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