2 / 5
2
しおりを挟む
ベンジャミンの愛人を受け入れた翌日、私は父と話をした。
父が私に言う。
「ベンジャミンはどこかの男爵令嬢に熱を上げているそうだが、俺がはっきり言っておいたぞ。イブリンという婚約者がいながら浮いた話は許さん、とな」
「え!? そうなのですか!?」
「ベンジャミンのやつ、珍しく俺に食って掛かってきてたよ。ひょろひょろのガキのくせして、一丁前に吠えやがる。『僕はガーネットと駆け落ちしてでも一緒になってやる』なんて言ってるんだからな」
「なる……ほど……」
「イブリン。もしあいつが愛人を住まわせたいとか言ってきても、はっきり断るんだぞ。家のことは気にしなくていい。こっちにはベンジャミンの家を数分で制圧できる兵士たちがいるんだからな」
「……かしこまりました」
私はベンジャミンの提案を受け入れたという事実を父に言い出せなかった。
父の言葉には驚いてしまった。ベンジャミンは父にさえ啖呵を切り、駆け落ちも辞さないほどガーネットが好きなのだ。
私の中で、どうしてもベンジャミンを許せない気持ちが生まれた。ベンジャミンとは五年も一緒にいる。向こうは淡白だけど、悪くない関係だと思っていた。それなのに……私はあっという間に裏切られて……。
夜、部屋の窓を開けて満月を眺めた。虫の声も聞こえてきて、澄んだ空気が流れる夜だった。月が綺麗だったからではないけど、私の胸は月に揺り動かされた。
(ベンジャミンがそんなにガーネットと一緒にいたいなら、そうさせてあげよう)
朝、私の直属の精鋭部隊を集めて出かけた。どの人も無口で、私の言うことに絶対服従する兵士たちだ。
ベンジャミンは今日、ガーネットとともにバードウォッチングに行くと言っていた。そこを目指す。
森の中を進み、ベンジャミンとガーネットを見つけた。私は兵士たちに命じて二人を袋詰めにして捕縛した。叫び声なんてあげさせない。うちの兵士たちの隠密行動は、磨き抜かれている。
捕まえた二人を森の中にある地下の実験室に連れて行った。ここは、薬草実験に使っている地下室である。私は薬草採集や調合が好きなため、この地下室を父にあてがわれているのである。
袋詰めにしたベンジャミンとガーネットを地下室の牢に入れた。もともとは動物の生き血を採取するために動物を入れておく檻だったのだけど、ちょうどよい感じ。二人は鉄格子の中でもごもご動いていて、その様子はまるで白いイモムシのようだった。私は兵士たちに、今日のことは他言無用であることを伝え、解散させた。
(さて……まずはベンジャミンからかな)
私はナイフを手に取って、ベンジャミンが入った袋を切り裂くことにした。
父が私に言う。
「ベンジャミンはどこかの男爵令嬢に熱を上げているそうだが、俺がはっきり言っておいたぞ。イブリンという婚約者がいながら浮いた話は許さん、とな」
「え!? そうなのですか!?」
「ベンジャミンのやつ、珍しく俺に食って掛かってきてたよ。ひょろひょろのガキのくせして、一丁前に吠えやがる。『僕はガーネットと駆け落ちしてでも一緒になってやる』なんて言ってるんだからな」
「なる……ほど……」
「イブリン。もしあいつが愛人を住まわせたいとか言ってきても、はっきり断るんだぞ。家のことは気にしなくていい。こっちにはベンジャミンの家を数分で制圧できる兵士たちがいるんだからな」
「……かしこまりました」
私はベンジャミンの提案を受け入れたという事実を父に言い出せなかった。
父の言葉には驚いてしまった。ベンジャミンは父にさえ啖呵を切り、駆け落ちも辞さないほどガーネットが好きなのだ。
私の中で、どうしてもベンジャミンを許せない気持ちが生まれた。ベンジャミンとは五年も一緒にいる。向こうは淡白だけど、悪くない関係だと思っていた。それなのに……私はあっという間に裏切られて……。
夜、部屋の窓を開けて満月を眺めた。虫の声も聞こえてきて、澄んだ空気が流れる夜だった。月が綺麗だったからではないけど、私の胸は月に揺り動かされた。
(ベンジャミンがそんなにガーネットと一緒にいたいなら、そうさせてあげよう)
朝、私の直属の精鋭部隊を集めて出かけた。どの人も無口で、私の言うことに絶対服従する兵士たちだ。
ベンジャミンは今日、ガーネットとともにバードウォッチングに行くと言っていた。そこを目指す。
森の中を進み、ベンジャミンとガーネットを見つけた。私は兵士たちに命じて二人を袋詰めにして捕縛した。叫び声なんてあげさせない。うちの兵士たちの隠密行動は、磨き抜かれている。
捕まえた二人を森の中にある地下の実験室に連れて行った。ここは、薬草実験に使っている地下室である。私は薬草採集や調合が好きなため、この地下室を父にあてがわれているのである。
袋詰めにしたベンジャミンとガーネットを地下室の牢に入れた。もともとは動物の生き血を採取するために動物を入れておく檻だったのだけど、ちょうどよい感じ。二人は鉄格子の中でもごもご動いていて、その様子はまるで白いイモムシのようだった。私は兵士たちに、今日のことは他言無用であることを伝え、解散させた。
(さて……まずはベンジャミンからかな)
私はナイフを手に取って、ベンジャミンが入った袋を切り裂くことにした。
22
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
浮気心はその身を滅ぼす
カザハナ
恋愛
とある令嬢は、婚約者の浮気現場に遭遇した。
「浮気男は要らない」
そう言って、男に婚約破棄を突き付ける。
それを聞いた男は焦る。
男は貴族の子息だが、嫡男では無い。
継ぐ家も無ければ爵位も無い。
婚約者の令嬢は、既に当主になる事が決まっており、婚約者の令嬢と結婚すれば、当主にはなれないが働かずとも贅沢が出来る。
男はその場にいた浮気相手を突き放し、婚約者にすがり付く。
「許してくれ!二度と浮気はしない!!」
そんな男に、婚約者の令嬢は、とある条件を出すのだった。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
(完結)ギャラット王太子様、私を捨てて下さってありがとうございます!
青空一夏
恋愛
王太子妃候補者3人のうちの一人が私、マリアン・ハワード。王太子妃になりたくて必死で努力してきた私には、幼い頃から遊ぶ暇もなかった。けれど王太子ギャラット様は優しく私を励ましてくださった。
「マリアンが一番王太子妃に相応しいと思う。君だけを愛しているよ。未来永劫、俺の愛は変わらない」と。
ところが私は隣国で蔓延していた流行病になぜか感染してしまう。途端にギャラット・ステビア王太子殿下の様子が変わり、
「お前は追放だ、追放! さっさと俺の国から出て行け! おぞましい病原菌を抱えた汚物め! お前など王太子妃になるどころかステビア王国にいることすら汚らわしい!」
一転して私にそう言い放ち、病ですっかり憔悴している私を隣国との国境近くに文字通り投げ捨てさせたのである。
あとから他の王太子妃候補の女性達にも同じような甘い言葉を囁いていたこともわかって・・・・・・ギャラット・ステビア王太子は八方美人の浮気者だったことに気がついたのだった。
ハワード公爵であるお父様は庇ってもくれずに、私をばい菌扱い。
そんな私を救ってくれたのは隣国のロラン・マスカレード王太子殿下。隣国では流行病に対応する特効薬がすでにできていて・・・・・・
※ざまぁ・ゆるふわ設定・異世界
さようなら、たった一人の妹。私、あなたが本当に大嫌いだったわ
青葉めいこ
恋愛
おいしい?
よかったわ。あなたがこの世で飲む最後のお茶になるからね。
※番(つがい)を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。
和泉 凪紗
恋愛
伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。
三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。
久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。
(本編、おまけも完結)夫は年上の女性がお好きなようで本編3話+おまけ2話
青空一夏
恋愛
夫が浮気している・・・・・・しかも自分よりも二回りも年上の女性と!
夫の浮気を知った妻は・・・・・・
カトレア・カイスビー公爵令嬢は結婚3年目、やっと子供が授かり嬉しさのあまり夫の仕事場へと足を運ぶ。そこで目撃したものは夫のあり得ない本性だった。
ざまぁ、ですが本編は残酷ではありません。コメディー風味。
さくっとショートショート。プロローグと前編・後編で終わります。
おまけ2話追記しました。こちらは少し残酷系ですので閲覧注意です。
【完結】あなたが何を思って浮気をしたかは知りませんけど、もちろん離婚ですわよ?
貝瀬汀
恋愛
嫌な予感がする……。外出するふりをして帰宅した貴族の女リュノ・メテスリウスは、頭の痛い人たちに巻き込まれる。あなたがそんなことを言うのなら、わたくしにだって考えがありますわよ? ショートショート。
完結 裏切りは復讐劇の始まり
音爽(ネソウ)
恋愛
良くある政略結婚、不本意なのはお互い様。
しかし、夫はそうではなく妻に対して憎悪の気持ちを抱いていた。
「お前さえいなければ!俺はもっと幸せになれるのだ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる