19 / 20
19
しおりを挟む
レオンハルトとフランケンの槍が交じり合った。
レオンハルトは競り合いでおされ、体勢を大きく崩した。その隙をついてフランケンはとどめの一撃を加えようとするも、レオンハルトがそれを受け止めた。
しかしレオンハルトは落馬してしまった。上手く着地したが、槍が折れたようだった。
見届人を務める団長は大声で、
「レオンハルト様! 負けを認めますか?」
とたずねた。
しかしレオンハルトは「まだまだ!」と返事し、地上で剣を抜いた。
私がここで『もうやめて!』と言うことには、何の意味も持たないだろう。むしろそれはレオンハルトに負けを認めろということであり、レオンハルトの思いを無駄にしてしまう。
フランケンは馬から降り、剣を抜いた。
二人は改めて剣での決闘を始めた。
槍で競り負けたレオンハルトのほうが剣を懸命に振るっており、フランケンがそれを受け止める展開だった。フランケンはさっきまでの槍での応戦と違い、消極的な感じ。どこか迷っているような、踏ん切りがつかないかのような動きだった。
レオンハルトは、いったん剣を止めた。
「どういうつもりだ!? なぜ攻めてこない?」
息の上がっているレオンハルトの問いかけに、フランケンは戸惑いながら答えた。
「いつまで……なさるおつもりですか?」
レオンハルトはフランケンを睨んだ。
「勝つまでだよ! 当たり前だろ!」
「わかりました……」
フランケンはレオンハルトに向かっていき、剣を振り下ろした。かろうじてレオンハルトがそれを受け止めると、次はフランケンの蹴りが入った。よろけたレオンハルトに対し、再度剣を横に振るい、レオンハルトの首元で剣を寸止めした。
「負けを……認めてください」
フランケンの、かすれるような声だった。勝負はついていた。これ以上やっても、レオンハルトに勝機はなさそうだった。
しかしレオンハルトは首元で寸止めされた剣を手のひらで掴み、フランケンへ斬りかかった。フランケンはぎりぎりレオンハルトの剣をかわすと後ろへ体勢を崩したが、また持ち直した。
「君に勝つ。エリーゼを――諦めない」
レオンハルトはぜえぜえ呼吸をしながら、絞り出すようにしてこう言った。そのとき私は、レオンハルトの言葉に嘘がないことを確信した。レオンハルトは本当に私のことを好きでいてくれているのだ。
フランケンはまた剣を振りかぶり、レオンハルトの頭上を狙った。しかしフランケンは剣技を使ったようで、惑わされたレオンハルトは肩を斬られてしまった。出血していた。
それまで真剣勝負の目をしていたフランケンが、レオンハルトの血を見た瞬間、焦点の合わない虚ろな目に変わった。主人だった人間を斬ってしまったことに動揺したのか、はたまた友人を傷つけてしまったことに狼狽したのか……。
レオンハルトはフランケンの隙を見逃さなかった。即座に剣を振り、フランケンの剣を落とした。そして今度はレオンハルトがフランケンの首元に剣を向け、寸止めした。
「参りました……」
フランケンが負けを認めた。
レオンハルトは競り合いでおされ、体勢を大きく崩した。その隙をついてフランケンはとどめの一撃を加えようとするも、レオンハルトがそれを受け止めた。
しかしレオンハルトは落馬してしまった。上手く着地したが、槍が折れたようだった。
見届人を務める団長は大声で、
「レオンハルト様! 負けを認めますか?」
とたずねた。
しかしレオンハルトは「まだまだ!」と返事し、地上で剣を抜いた。
私がここで『もうやめて!』と言うことには、何の意味も持たないだろう。むしろそれはレオンハルトに負けを認めろということであり、レオンハルトの思いを無駄にしてしまう。
フランケンは馬から降り、剣を抜いた。
二人は改めて剣での決闘を始めた。
槍で競り負けたレオンハルトのほうが剣を懸命に振るっており、フランケンがそれを受け止める展開だった。フランケンはさっきまでの槍での応戦と違い、消極的な感じ。どこか迷っているような、踏ん切りがつかないかのような動きだった。
レオンハルトは、いったん剣を止めた。
「どういうつもりだ!? なぜ攻めてこない?」
息の上がっているレオンハルトの問いかけに、フランケンは戸惑いながら答えた。
「いつまで……なさるおつもりですか?」
レオンハルトはフランケンを睨んだ。
「勝つまでだよ! 当たり前だろ!」
「わかりました……」
フランケンはレオンハルトに向かっていき、剣を振り下ろした。かろうじてレオンハルトがそれを受け止めると、次はフランケンの蹴りが入った。よろけたレオンハルトに対し、再度剣を横に振るい、レオンハルトの首元で剣を寸止めした。
「負けを……認めてください」
フランケンの、かすれるような声だった。勝負はついていた。これ以上やっても、レオンハルトに勝機はなさそうだった。
しかしレオンハルトは首元で寸止めされた剣を手のひらで掴み、フランケンへ斬りかかった。フランケンはぎりぎりレオンハルトの剣をかわすと後ろへ体勢を崩したが、また持ち直した。
「君に勝つ。エリーゼを――諦めない」
レオンハルトはぜえぜえ呼吸をしながら、絞り出すようにしてこう言った。そのとき私は、レオンハルトの言葉に嘘がないことを確信した。レオンハルトは本当に私のことを好きでいてくれているのだ。
フランケンはまた剣を振りかぶり、レオンハルトの頭上を狙った。しかしフランケンは剣技を使ったようで、惑わされたレオンハルトは肩を斬られてしまった。出血していた。
それまで真剣勝負の目をしていたフランケンが、レオンハルトの血を見た瞬間、焦点の合わない虚ろな目に変わった。主人だった人間を斬ってしまったことに動揺したのか、はたまた友人を傷つけてしまったことに狼狽したのか……。
レオンハルトはフランケンの隙を見逃さなかった。即座に剣を振り、フランケンの剣を落とした。そして今度はレオンハルトがフランケンの首元に剣を向け、寸止めした。
「参りました……」
フランケンが負けを認めた。
11
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。

婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる