17 / 20
17
しおりを挟む
フランケンの言葉は震えていて、涙がひとすじ頬を伝っていた。
そのとき、私は後方から馬が走ってくる音を聞いた。
近づいてくる……。
私は後方を振り返り、音の正体を確かめようとした。
そこに現れたのは……レオンハルトだった。
「エリーゼ!」
鎧を来た騎士を十人連れて来ていて、大所帯だった。
「やっぱりここだったか」
レオンハルトは地上へ降りると、貧民街の野次馬たちを追い払った。私をちらと見たあと、フランケンに向き合って言った。
「フランケン。君に正式な決闘を申し込む。僕が勝てば、君はこの国から出ていけ。君が勝てば……エリーゼと君が結婚できるよう、僕は全力を尽くそう。君を貴族にするよう取り計らう」
フランケンは目を見開き、答えなかった。
私も驚いて声が出なかった。
(決闘……?)
フランケンは視線を落とし、しばらく考えていた。二人の間には重苦しい沈黙が流れた。
「かしこまりました」
フランケンが返事をすると、レオンハルトはこくりとうなずき、「では、明日の正午、決闘を行う。場所は北の草原。見届人を含めて、馬も槍も剣もこちらで用意してやる。一騎打ちだ。必ず来い」
「ありがとうございます」というフランケンの返事を聞き、レオンハルトは馬にまたがった。
「エリーゼ。帰ろう。家まで送るよ。驚かせてすまなかった」
いつもと違う雰囲気をまとったレオンハルトの口調は穏やかだった。レオンハルトは寂しそうな表情をしていた。私もまさか……レオンハルトが決闘を言い出すとは思わなかった。
フランケンのほうを見ると、目で私に(行ってください)と言っているようだった。
レオンハルトの従者が、私の乗る馬をひいてきた。
決闘は、どちらかが敗北を認めなければ終わらない。認めなければ、片方が死ぬまで行われる。レオンハルトは決して負けを認めないだろう。そうすると、レオンハルトは……。
私は帰路の馬上で揺られながら、レオンハルトの決意について考えた。レオンハルトはあえて決闘する必要なんてないはずなのに、フランケンとの決着をつけることを選んだ。フランケンに対して自分のプライドが傷つけられたというのもあるかもしれないけど、それ以上のものがある気がした。そうでないと……決闘しようと思わないだろう。
もしかしたら……レオンハルトは本当に私のことが好き……? フランケンが言うように、レオンハルトは私をずっと大切に思っていて、その愛情の裏返しが今までの行為だったとしたら……?
レオンハルトは今回の決闘でも、茨の道を進もうとしていることになる。
翌日の正午、私も北の草原に行った。
すでにそこには、レオンハルトとフランケンがいた。
そのとき、私は後方から馬が走ってくる音を聞いた。
近づいてくる……。
私は後方を振り返り、音の正体を確かめようとした。
そこに現れたのは……レオンハルトだった。
「エリーゼ!」
鎧を来た騎士を十人連れて来ていて、大所帯だった。
「やっぱりここだったか」
レオンハルトは地上へ降りると、貧民街の野次馬たちを追い払った。私をちらと見たあと、フランケンに向き合って言った。
「フランケン。君に正式な決闘を申し込む。僕が勝てば、君はこの国から出ていけ。君が勝てば……エリーゼと君が結婚できるよう、僕は全力を尽くそう。君を貴族にするよう取り計らう」
フランケンは目を見開き、答えなかった。
私も驚いて声が出なかった。
(決闘……?)
フランケンは視線を落とし、しばらく考えていた。二人の間には重苦しい沈黙が流れた。
「かしこまりました」
フランケンが返事をすると、レオンハルトはこくりとうなずき、「では、明日の正午、決闘を行う。場所は北の草原。見届人を含めて、馬も槍も剣もこちらで用意してやる。一騎打ちだ。必ず来い」
「ありがとうございます」というフランケンの返事を聞き、レオンハルトは馬にまたがった。
「エリーゼ。帰ろう。家まで送るよ。驚かせてすまなかった」
いつもと違う雰囲気をまとったレオンハルトの口調は穏やかだった。レオンハルトは寂しそうな表情をしていた。私もまさか……レオンハルトが決闘を言い出すとは思わなかった。
フランケンのほうを見ると、目で私に(行ってください)と言っているようだった。
レオンハルトの従者が、私の乗る馬をひいてきた。
決闘は、どちらかが敗北を認めなければ終わらない。認めなければ、片方が死ぬまで行われる。レオンハルトは決して負けを認めないだろう。そうすると、レオンハルトは……。
私は帰路の馬上で揺られながら、レオンハルトの決意について考えた。レオンハルトはあえて決闘する必要なんてないはずなのに、フランケンとの決着をつけることを選んだ。フランケンに対して自分のプライドが傷つけられたというのもあるかもしれないけど、それ以上のものがある気がした。そうでないと……決闘しようと思わないだろう。
もしかしたら……レオンハルトは本当に私のことが好き……? フランケンが言うように、レオンハルトは私をずっと大切に思っていて、その愛情の裏返しが今までの行為だったとしたら……?
レオンハルトは今回の決闘でも、茨の道を進もうとしていることになる。
翌日の正午、私も北の草原に行った。
すでにそこには、レオンハルトとフランケンがいた。
11
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

別れ話をしましょうか。
ふまさ
恋愛
大好きな婚約者であるアールとのデート。けれど、デージーは楽しめない。そんな心の余裕などない。今日、アールから別れを告げられることを、知っていたから。
お芝居を見て、昼食もすませた。でも、アールはまだ別れ話を口にしない。
──あなたは優しい。だからきっと、言えないのですね。わたしを哀しませてしまうから。わたしがあなたを愛していることを、知っているから。
でも。その優しさが、いまは辛い。
だからいっそ、わたしから告げてしまおう。
「お別れしましょう、アール様」
デージーの声は、少しだけ、震えていた。
この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる