浮気をする伯爵様、負けを認めてください。不誠実な男は嫌いです。

Hibah

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フランケンの言葉は震えていて、涙がひとすじ頬を伝っていた。

そのとき、私は後方から馬が走ってくる音を聞いた。




近づいてくる……。




私は後方を振り返り、音の正体を確かめようとした。

そこに現れたのは……レオンハルトだった。



「エリーゼ!」



鎧を来た騎士を十人連れて来ていて、大所帯だった。


「やっぱりここだったか」


レオンハルトは地上へ降りると、貧民街の野次馬たちを追い払った。私をちらと見たあと、フランケンに向き合って言った。




「フランケン。君に正式な決闘を申し込む。僕が勝てば、君はこの国から出ていけ。君が勝てば……エリーゼと君が結婚できるよう、僕は全力を尽くそう。君を貴族にするよう取り計らう」




フランケンは目を見開き、答えなかった。

私も驚いて声が出なかった。



(決闘……?)



フランケンは視線を落とし、しばらく考えていた。二人の間には重苦しい沈黙が流れた。



「かしこまりました」



フランケンが返事をすると、レオンハルトはこくりとうなずき、「では、明日の正午、決闘を行う。場所は北の草原。見届人を含めて、馬も槍も剣もこちらで用意してやる。一騎打ちだ。必ず来い」

「ありがとうございます」というフランケンの返事を聞き、レオンハルトは馬にまたがった。



「エリーゼ。帰ろう。家まで送るよ。驚かせてすまなかった」



いつもと違う雰囲気をまとったレオンハルトの口調は穏やかだった。レオンハルトは寂しそうな表情をしていた。私もまさか……レオンハルトが決闘を言い出すとは思わなかった。

フランケンのほうを見ると、目で私に(行ってください)と言っているようだった。




レオンハルトの従者が、私の乗る馬をひいてきた。

決闘は、どちらかが敗北を認めなければ終わらない。認めなければ、片方が死ぬまで行われる。レオンハルトは決して負けを認めないだろう。そうすると、レオンハルトは……。

私は帰路の馬上で揺られながら、レオンハルトの決意について考えた。レオンハルトはあえて決闘する必要なんてないはずなのに、フランケンとの決着をつけることを選んだ。フランケンに対して自分のプライドが傷つけられたというのもあるかもしれないけど、それ以上のものがある気がした。そうでないと……決闘しようと思わないだろう。




もしかしたら……レオンハルトは本当に私のことが好き……? フランケンが言うように、レオンハルトは私をずっと大切に思っていて、その愛情の裏返しが今までの行為だったとしたら……?

レオンハルトは今回の決闘でも、茨の道を進もうとしていることになる。






翌日の正午、私も北の草原に行った。

すでにそこには、レオンハルトとフランケンがいた。
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