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フランケンは頭を下げ「申し訳ありません」と繰り返した。
レオンハルトがもう一発フランケンを叩こうとしていたので、私が間に入った。
「暴力はやめて! ださいわよ」
レオンハルトのことを睨んでやった。口で言えばいいのに、どうして叩くのかしら。
頬をおさえるフランケンは「いいのです、エリーゼ様。わたしが悪いのです」と弱々しく言った。その声を聞いて、私はなおのことフランケンを守らなければと思った。
「私からフランケンを裏庭に誘ったのよ! 文句があるわけ? あなたは女とイチャイチャしてなさいよ」
レオンハルトはたじろいだ。
さっきまでの自信満々な表情はどこかにいったみたい。
「エリーゼ……君のことはいいんだ。僕はフランケンを責めている! どいてくれ!」
「どくわけないでしょ? 私はね、フランケンと一緒にいたいの。あなたといるより百倍楽しいわよ」
レオンハルトは「え……」と声をもらし、縮こまった。私の目を見なくなって、くちびるが震えている。
ざまぁみろ。あなたになびかない女だっているのよ。
レオンハルトはフランケンを指差して「こんなブサイクの何がいいんだ。少し頭がいいだけの怪物だぞ」と言った。”怪物だぞ”の語尾は震えていて、消え入るような声だった。
「自分で自分の従者を怪物呼ばわりするなんて、最低ね。恥を知りなさい。フランケンは怪物なんかじゃないわ。優しくて、物知りで、誰よりもあなたのことを考えているのよ」
私は再びフランケンの手を握って引っ張った。
「ついてきなさい。レオンハルトは置いていきましょう」と言うと、フランケンは「いえ……だめですよ……」と言いながら私についてきた。フランケンの困った表情でさえ、今の私には愛しく感じる。
振り返ると、レオンハルトはその場でうつむいて立ち尽くし、わなわなと屈辱に震えているようだった。婚約者の気持ちを従者に取られて、どんな気持ちかしら? あなたは私のことを何とも思っていないのだろうけど、従者に婚約者の気持ちを奪われるのは、プライドが許さないわよね? つまらない男のプライドをずたずたにするって、なんて気分がいいのかしら!
中庭に戻ったあと、しばらくしてレオンハルトもトボトボと中庭に帰ってきた。女たちはレオンハルトを歓迎していたけど、レオンハルトは落ち込んでいるようで、すぐに帰る支度をした。
焦ってレオンハルトに駆け寄るフランケン。
レオンハルトは
「近づくな!」
と中庭に響き渡るような怒鳴り声をあげる。
みんながぎょっとした目でレオンハルトに注目した。レオンハルトが怒っているところなんて、ほとんどの人は見たことがないだろう。
いい気味だわ。こうしてあの男の薄っぺらさが広まって、誰にも相手されなくなったらいいのよ。
レオンハルトの暗い顔に気づいたフレデリカが「エリーゼ。あなた何したの!? フランケンと裏庭に行ってたみたいだけど」とたずねてきた。
「勘違い男に真実を告げてやっただけ。フランケンは素敵な男性だったわよ」
「レオンハルト様……かわいそう……」
フレデリカがレオンハルトの小さくなっていく後ろ姿を眺めながらこう言ったので、私は「どこがよ」と突き放した。
今日の出来事は、今日一日のこととして終わるはずだった。でも、日々が過ぎ去っていっても……四つ葉のクローバーとともにいるフランケンの横顔が、私の脳裏に焼き付いて離れなかった。
不意に生じてしまったこの燃えるような気持ちをきっかけに、レオンハルト、私、フランケンの三人は、新たな事件へ身を埋めていくのだった。
レオンハルトがもう一発フランケンを叩こうとしていたので、私が間に入った。
「暴力はやめて! ださいわよ」
レオンハルトのことを睨んでやった。口で言えばいいのに、どうして叩くのかしら。
頬をおさえるフランケンは「いいのです、エリーゼ様。わたしが悪いのです」と弱々しく言った。その声を聞いて、私はなおのことフランケンを守らなければと思った。
「私からフランケンを裏庭に誘ったのよ! 文句があるわけ? あなたは女とイチャイチャしてなさいよ」
レオンハルトはたじろいだ。
さっきまでの自信満々な表情はどこかにいったみたい。
「エリーゼ……君のことはいいんだ。僕はフランケンを責めている! どいてくれ!」
「どくわけないでしょ? 私はね、フランケンと一緒にいたいの。あなたといるより百倍楽しいわよ」
レオンハルトは「え……」と声をもらし、縮こまった。私の目を見なくなって、くちびるが震えている。
ざまぁみろ。あなたになびかない女だっているのよ。
レオンハルトはフランケンを指差して「こんなブサイクの何がいいんだ。少し頭がいいだけの怪物だぞ」と言った。”怪物だぞ”の語尾は震えていて、消え入るような声だった。
「自分で自分の従者を怪物呼ばわりするなんて、最低ね。恥を知りなさい。フランケンは怪物なんかじゃないわ。優しくて、物知りで、誰よりもあなたのことを考えているのよ」
私は再びフランケンの手を握って引っ張った。
「ついてきなさい。レオンハルトは置いていきましょう」と言うと、フランケンは「いえ……だめですよ……」と言いながら私についてきた。フランケンの困った表情でさえ、今の私には愛しく感じる。
振り返ると、レオンハルトはその場でうつむいて立ち尽くし、わなわなと屈辱に震えているようだった。婚約者の気持ちを従者に取られて、どんな気持ちかしら? あなたは私のことを何とも思っていないのだろうけど、従者に婚約者の気持ちを奪われるのは、プライドが許さないわよね? つまらない男のプライドをずたずたにするって、なんて気分がいいのかしら!
中庭に戻ったあと、しばらくしてレオンハルトもトボトボと中庭に帰ってきた。女たちはレオンハルトを歓迎していたけど、レオンハルトは落ち込んでいるようで、すぐに帰る支度をした。
焦ってレオンハルトに駆け寄るフランケン。
レオンハルトは
「近づくな!」
と中庭に響き渡るような怒鳴り声をあげる。
みんながぎょっとした目でレオンハルトに注目した。レオンハルトが怒っているところなんて、ほとんどの人は見たことがないだろう。
いい気味だわ。こうしてあの男の薄っぺらさが広まって、誰にも相手されなくなったらいいのよ。
レオンハルトの暗い顔に気づいたフレデリカが「エリーゼ。あなた何したの!? フランケンと裏庭に行ってたみたいだけど」とたずねてきた。
「勘違い男に真実を告げてやっただけ。フランケンは素敵な男性だったわよ」
「レオンハルト様……かわいそう……」
フレデリカがレオンハルトの小さくなっていく後ろ姿を眺めながらこう言ったので、私は「どこがよ」と突き放した。
今日の出来事は、今日一日のこととして終わるはずだった。でも、日々が過ぎ去っていっても……四つ葉のクローバーとともにいるフランケンの横顔が、私の脳裏に焼き付いて離れなかった。
不意に生じてしまったこの燃えるような気持ちをきっかけに、レオンハルト、私、フランケンの三人は、新たな事件へ身を埋めていくのだった。
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