11 / 20
11
しおりを挟む
フランケンは驚くこともなく微笑んだ。
「クローバーの花言葉ですね」
私はちぇっという顔をわざとらしくした。
「やっぱり知ってるのね」
四つ葉のクローバーには他にも花言葉がある。ちょうど今の私にとって都合がいい言葉――「復讐」――も。
フランケンはすっと立ち上がった。
「安心してください。レオンハルト様はエリーゼ様のことがお好きです。一番近くで仕えているわたしが言うのですから、間違いありません」
レオンハルトの話はしたくなかった。フランケンと一緒にいるこの時間が、ずっと続いてほしいと思っている自分がいた。いつの間にか私は、綺麗な薔薇よりもフランケンの笑顔を探している。
去ろうとするフランケンに、私は四つ葉のクローバーを指差しながら「持っていかなくていいの?」とたずねた。
フランケンはまた優しく微笑みながら、
「ええ。こうしてエリーゼ様とここに来られたことが、幸運でしたから」
と答えた。
私はその瞬間、胸がぎゅっと締めつけられるような思いがした。フランケンは周りから蔑まれて生きてきたはずなのに、感性を失わないままこんなに素敵な男性になっている。どうして今まで気がつかなかったのだろう。いつもレオンハルトの近くにいるから、姿は見えていたはずなのに。私はフランケンを見ているようで、何も見ていなかったのだ。
「おいフランケン! 何してる!?」
レオンハルトの大きな声が聞こえた。レオンハルトが裏庭まで来ていた。
フランケンはぱっと私の手を離した。
「申し訳ありません!」
レオンハルトは眉間にシワを寄せて駆け寄ってきて、フランケンの頬を叩いた。
ぱしんっ! という音が裏庭に響いた。
「僕の婚約者に……どういうつもりだ!?」
「クローバーの花言葉ですね」
私はちぇっという顔をわざとらしくした。
「やっぱり知ってるのね」
四つ葉のクローバーには他にも花言葉がある。ちょうど今の私にとって都合がいい言葉――「復讐」――も。
フランケンはすっと立ち上がった。
「安心してください。レオンハルト様はエリーゼ様のことがお好きです。一番近くで仕えているわたしが言うのですから、間違いありません」
レオンハルトの話はしたくなかった。フランケンと一緒にいるこの時間が、ずっと続いてほしいと思っている自分がいた。いつの間にか私は、綺麗な薔薇よりもフランケンの笑顔を探している。
去ろうとするフランケンに、私は四つ葉のクローバーを指差しながら「持っていかなくていいの?」とたずねた。
フランケンはまた優しく微笑みながら、
「ええ。こうしてエリーゼ様とここに来られたことが、幸運でしたから」
と答えた。
私はその瞬間、胸がぎゅっと締めつけられるような思いがした。フランケンは周りから蔑まれて生きてきたはずなのに、感性を失わないままこんなに素敵な男性になっている。どうして今まで気がつかなかったのだろう。いつもレオンハルトの近くにいるから、姿は見えていたはずなのに。私はフランケンを見ているようで、何も見ていなかったのだ。
「おいフランケン! 何してる!?」
レオンハルトの大きな声が聞こえた。レオンハルトが裏庭まで来ていた。
フランケンはぱっと私の手を離した。
「申し訳ありません!」
レオンハルトは眉間にシワを寄せて駆け寄ってきて、フランケンの頬を叩いた。
ぱしんっ! という音が裏庭に響いた。
「僕の婚約者に……どういうつもりだ!?」
11
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる