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私はまたお茶会に来てしまった。お茶会では暇を持て余した貴族たちが、”薔薇男爵”にかたちだけの挨拶をしたあと、それぞれの関心事に向かう。ある者は趣味の話を、ある者は仕事の話を、ある者はゴシップの話をした。
「エリーゼ! てっきり今日は来ないのかと思ってた!」
私に気づいたフレデリカが笑顔で駆け寄ってきた。「チェスの借りを返しにきたのよ」と言うと、「やっぱりそうこなくっちゃね~」と嬉しそうにした。
(レオンハルト……いるわね)
中庭を見渡す私に気づいたフレデリカが、レオンハルトを指差した。
「ほら、あそこにいるわよ」
レオンハルトの両脇には、フレデリカの家の使用人と庭師がいた。二人ともこのお茶会には似つかわしくない作業着を着たままで、存在が浮いているように見えた。彼女たち自身も恐縮して肩をすくめている。そのような中、レオンハルトだけが満足げな顔だ。
「フレデリカ……あの二人はどうしてレオンハルトの横にいるわけ? あなたの家で働く人じゃない?」
私がそう言うと、フレデリカは「そうね」と言いながら、面白がっているようにして笑った。
「レオンハルト様は今日は平民の気分みたいね。あの子たちだって頬を赤くしてるから、まんざらでもなさそう。もしかしたら、来年あたりにエリーゼと一緒に住んでるかもよ? 愛人として」
からかうようにして言うフレデリカに、私は「やめてよ」と返しておいた。外で恋をするだけならまだしも、愛人と暮らすなんて勘弁して……。
フレデリカと話しているとき、レオンハルトの視線を感じた。私に気づいたみたい。私もレオンハルトを見つめ返した。
するとそのとき、レオンハルトは隣に座っている庭師イザベルの頬にキスをした。私と目が合ったまま、見せつけるようにして。いたずらな笑みを浮かべている。
「きゃ!」
フレデリカも同じ現場を目撃し、思わず声を上げていた。庭師イザベルは不意を突かれたせいか、放心状態のようになっている。どぎまぎしながら顔を赤くしてうつむいた。
(あの女たらしめ……私の目の前で平民とのキスを見せてくるなんて、どんなつもりよ……?)
頭に血が上ってきた。前のレオンハルトはコソコソ見えないようにしていたけど、今回は違う。あけっぴろげにやってきたのだ。これからは、ああやって見せつけてくるつもり?
「フレデリカ……ちょっとききたいことがあるんだけど」
私の声の様子がいつもと違って怒りに震えていたせいか、フレデリカはビビっていた。
「な……なにかしら、エリーゼ……?」
「今日、私の家で話してたじゃない? レオンハルトへ仕返しをするっていう件」
フレデリカは私から視線をそらした。
「そ、そうね……でも……したくないんでしょ?」
私はぐっとこぶしに力を入れた。
「やっぱりやる」
「エリーゼ! てっきり今日は来ないのかと思ってた!」
私に気づいたフレデリカが笑顔で駆け寄ってきた。「チェスの借りを返しにきたのよ」と言うと、「やっぱりそうこなくっちゃね~」と嬉しそうにした。
(レオンハルト……いるわね)
中庭を見渡す私に気づいたフレデリカが、レオンハルトを指差した。
「ほら、あそこにいるわよ」
レオンハルトの両脇には、フレデリカの家の使用人と庭師がいた。二人ともこのお茶会には似つかわしくない作業着を着たままで、存在が浮いているように見えた。彼女たち自身も恐縮して肩をすくめている。そのような中、レオンハルトだけが満足げな顔だ。
「フレデリカ……あの二人はどうしてレオンハルトの横にいるわけ? あなたの家で働く人じゃない?」
私がそう言うと、フレデリカは「そうね」と言いながら、面白がっているようにして笑った。
「レオンハルト様は今日は平民の気分みたいね。あの子たちだって頬を赤くしてるから、まんざらでもなさそう。もしかしたら、来年あたりにエリーゼと一緒に住んでるかもよ? 愛人として」
からかうようにして言うフレデリカに、私は「やめてよ」と返しておいた。外で恋をするだけならまだしも、愛人と暮らすなんて勘弁して……。
フレデリカと話しているとき、レオンハルトの視線を感じた。私に気づいたみたい。私もレオンハルトを見つめ返した。
するとそのとき、レオンハルトは隣に座っている庭師イザベルの頬にキスをした。私と目が合ったまま、見せつけるようにして。いたずらな笑みを浮かべている。
「きゃ!」
フレデリカも同じ現場を目撃し、思わず声を上げていた。庭師イザベルは不意を突かれたせいか、放心状態のようになっている。どぎまぎしながら顔を赤くしてうつむいた。
(あの女たらしめ……私の目の前で平民とのキスを見せてくるなんて、どんなつもりよ……?)
頭に血が上ってきた。前のレオンハルトはコソコソ見えないようにしていたけど、今回は違う。あけっぴろげにやってきたのだ。これからは、ああやって見せつけてくるつもり?
「フレデリカ……ちょっとききたいことがあるんだけど」
私の声の様子がいつもと違って怒りに震えていたせいか、フレデリカはビビっていた。
「な……なにかしら、エリーゼ……?」
「今日、私の家で話してたじゃない? レオンハルトへ仕返しをするっていう件」
フレデリカは私から視線をそらした。
「そ、そうね……でも……したくないんでしょ?」
私はぐっとこぶしに力を入れた。
「やっぱりやる」
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