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「レオンハルト……?」
はっとして口を押さえた。
私は見てはいけない現場を見てしまったのだ。
レオンハルトもぱっとこちらを向いた。
「エリーゼ……」
お茶会にレオンハルトが来ているのはもちろん知っていたけど、あまり話していなかった。私はフレデリカとずっとお喋りしていたし、レオンハルトはレオンハルトで社交場を楽しんでいるようだったから。
レオンハルトはキス相手のユリアーナを置いて、私に駆け寄ってきた。
「ごめんね、まさかエリーゼがここに来るとは思わなくて……」
私はその言い方にどこか引っかかった。私が来なければ続けられたのにって意味かしら?
「どういうつもり? 私たちは婚約してるのよね?」
レオンハルトは首の後ろをさすりながら、目線をそらした。
「そうだね……結婚は……するね」
歯切れが悪かったので、レオンハルトがどんな認識を持っているのか確認した。
「まだ結婚していないとはいえ、他の女性とキスしていいわけ? 浮気だと思うんだけど」
自分でもなぜかわからないほど、妙に頭に血が上っていた。レオンハルトに恋していたわけではないはずなのに、裏切られた気持ちがした。
何かを言いかけたレオンハルトを無視して、ユリアーナの耳にも届く大きさで訊いた。
「ユリアーナとは、深い仲なの?」
レオンハルトは、いたずらをして見つかった子どものよう。
「いや、そういうわけじゃなくてね……お互い気分が高まってしまったから……」
ユリアーナに目を向けると、うつむいて恥ずかしそうにしているだけ。この子にも貞操っていう概念がないのかしら?
「へえ、気分が乗ったら人とキスしちゃうんだね」
「よくないことだよね。ごめん。エリーゼを傷つけてしまったよ」
いつもは自信満々なプレイボーイのレオンハルトが恐縮した素振りを見せている。でも、私はその態度に傲慢な雰囲気を感じた。レオンハルトからしてみると(自分はモテるし女性には困らないが、とりあえず謝っておこう)といった感じだろうか。婚約者としてではなく、レオンハルトに夢中な女性のうちの一人として扱われている気がした。少なくとも私は、あなたのことを何とも思っていませんけどね。
「レオンハルト。あなた嘘ついてるでしょ。本当は自分が悪いなんて思ってない」
このまま許すのも憎たらしいので、私はレオンハルトを責めた。するとレオンハルトは半笑いになって冗談ぽく言った。
「どうしたんだよ。らしくないよ。エリーゼはいつも僕を見守ってくれる素敵な女性じゃないか」
はあ? 私はあなたを見守っていた覚えなんかないですけど? このモテ男は何を勘違いしているの。家柄だって顔のよさだって、両親から受け継いだものよね。そんなに自信満々になれる根拠は何?
まあいいわ……とりあえず、私をそのへんの恋愛狂女と一緒にしないでよね。
「あのさ。浮気なんかありえないから。婚約を破棄しましょ? プレイボーイは嫌いなのよ」
はっとして口を押さえた。
私は見てはいけない現場を見てしまったのだ。
レオンハルトもぱっとこちらを向いた。
「エリーゼ……」
お茶会にレオンハルトが来ているのはもちろん知っていたけど、あまり話していなかった。私はフレデリカとずっとお喋りしていたし、レオンハルトはレオンハルトで社交場を楽しんでいるようだったから。
レオンハルトはキス相手のユリアーナを置いて、私に駆け寄ってきた。
「ごめんね、まさかエリーゼがここに来るとは思わなくて……」
私はその言い方にどこか引っかかった。私が来なければ続けられたのにって意味かしら?
「どういうつもり? 私たちは婚約してるのよね?」
レオンハルトは首の後ろをさすりながら、目線をそらした。
「そうだね……結婚は……するね」
歯切れが悪かったので、レオンハルトがどんな認識を持っているのか確認した。
「まだ結婚していないとはいえ、他の女性とキスしていいわけ? 浮気だと思うんだけど」
自分でもなぜかわからないほど、妙に頭に血が上っていた。レオンハルトに恋していたわけではないはずなのに、裏切られた気持ちがした。
何かを言いかけたレオンハルトを無視して、ユリアーナの耳にも届く大きさで訊いた。
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「いや、そういうわけじゃなくてね……お互い気分が高まってしまったから……」
ユリアーナに目を向けると、うつむいて恥ずかしそうにしているだけ。この子にも貞操っていう概念がないのかしら?
「へえ、気分が乗ったら人とキスしちゃうんだね」
「よくないことだよね。ごめん。エリーゼを傷つけてしまったよ」
いつもは自信満々なプレイボーイのレオンハルトが恐縮した素振りを見せている。でも、私はその態度に傲慢な雰囲気を感じた。レオンハルトからしてみると(自分はモテるし女性には困らないが、とりあえず謝っておこう)といった感じだろうか。婚約者としてではなく、レオンハルトに夢中な女性のうちの一人として扱われている気がした。少なくとも私は、あなたのことを何とも思っていませんけどね。
「レオンハルト。あなた嘘ついてるでしょ。本当は自分が悪いなんて思ってない」
このまま許すのも憎たらしいので、私はレオンハルトを責めた。するとレオンハルトは半笑いになって冗談ぽく言った。
「どうしたんだよ。らしくないよ。エリーゼはいつも僕を見守ってくれる素敵な女性じゃないか」
はあ? 私はあなたを見守っていた覚えなんかないですけど? このモテ男は何を勘違いしているの。家柄だって顔のよさだって、両親から受け継いだものよね。そんなに自信満々になれる根拠は何?
まあいいわ……とりあえず、私をそのへんの恋愛狂女と一緒にしないでよね。
「あのさ。浮気なんかありえないから。婚約を破棄しましょ? プレイボーイは嫌いなのよ」
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