浮気をする伯爵様、負けを認めてください。不誠実な男は嫌いです。

Hibah

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「ねえフレデリカ、結婚って何だと思う? 私はレオンハルトといてもドキドキしないんだよね」

私エリーゼはフレデリカにこうたずねた。私の家もフレデリカの家も男爵位で、幼馴染の親友だった。レオンハルトは、最近伯爵位を受け継いだばかりの私の婚約者。子どもの頃から婚約は決まっていて、正式な結婚がいよいよ三か月後に迫っていた。

「結婚なんてそんなものよ。わたしだって半年前に夫と暮らし始めたけど、すでにトキメキなんかないもん。お金があればいいのよ。ついでに名誉」

いつも通りあっけらかんと喋るフレデリカに、私は思わず笑みがこぼれた。話してて、気が楽になる。

「でも、せっかく結婚するのなら男として魅力的な人がよくない?」

私がそう言うと、フレデリカは(ちっちっち)と人差し指を揺らし、口を尖らせた。

「貴族社会で生きる女性たるもの、夫とは別に恋愛をするべし!」

「じゃあ、フレデリカは誰かそういう人がいるの?」

フレデリカはまごつきながら「い、今はいないけど、いつでも恋を探しているわ! パーティーに行くたびに思うもの。誰か素敵な殿方が私を連れ去ってくれないかなって」と言った。

私の場合、結婚以外で恋愛するのは面倒な気がするので、できれば好きな人と結婚したい。でも周りを見渡せば好きな人と結婚している人なんていないし、みんなフレデリカのように割り切っているようにも見える。

「じゃあ、たとえばレオンハルトがフレデリカを口説いてきたらどうするの?」

試しに自分の婚約者の名前を出してみると、フレデリカは目を輝かせた。
「え! もしレオンハルト様が私を口説いてくれるなら、大歓迎よ! レオンハルト様はとってもスタイルがよくて顔も素敵だし、大人気。エリーゼがそのことを一番よく知ってるじゃない? 嫌味なの?」

私は首を横に振った。
「嫌味なんかじゃないわよ。でも、私はプレイボーイっていまいち苦手っていうか、信用できないのよね」

フレデリカは(あなたはわかってないわね)という呆れ顔をした。
「レオンハルト様は地位も名誉もあって、容姿もあるのよ? もしわたしが結婚できるなら変わってあげたい。わたしの夫なんか……」

この後フレデリカの愚痴は止まらず、あっという間にお茶会がお開きとなる時間になった。貴族の紳士淑女たちが帰路につき始めている。

「フレデリカ、帰る前に薔薇を見せてもらうわね。今日もありがとう」

お茶会はフレデリカの家の中庭で行われていたのだけど、裏庭にはたくさんの薔薇が植えられている。フレデリカの父親は「薔薇男爵」と呼ばれるほどの薔薇好きで、私も薔薇が好きだったので、よく見せてもらっていたのだった。

「エリーゼは飽きないの? わたしは小さい頃から見すぎててうんざりよ」

「フレデリカのお父上様は毎年変わった薔薇を仕入れなさって、本当にすごいわ」

「お父様も、エリーゼが喜んでくれると嬉しいみたいだから、また感想を聞かせてあげてよ」

「もちろん!」




私は裏庭に着くと、
「え……」
と声を漏らしてしまった。

そこには、婚約者レオンハルトがいた。
レオンハルトは、公爵令嬢のユリアーナとキスをしていた。
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