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シルヴィア様は王家の紋章が入った大げさな風呂敷包みを持ち、私の部屋を訪れました。

国王陛下に指示されたから謝罪に来たのでしょうが、不服そうな表情を隠しきれていません。



応接用のソファーで向かい合い、私のほうから話しかけました。



「本日はお越しいただきありがとうございます。こちら、お口に合うかわかりませんが……クッキーと紅茶を用意しました」


シルヴィア様が気まずくならないように精一杯の配慮をしました。間違ったことをしたのは向こう側ですが、こちらも鬼ではありません。誠実に謝罪してくれるなら許すつもりでいます。私が彼女に出したクッキーと紅茶には、そのような意味があったのです。



それなのに……。




「……毒味して」




シルヴィア様は後ろに控えていた使用人に乾いた声で命じました。


「入っているはずないではありませんか!」


シルヴィア様のあまりに心外な言葉に、つい声を荒げました。毒を入れるような人間だけが、毒が入っているのではないかと疑うのです。

シルヴィア様は疑いのまなざしをやめません。


「やり返そうたって、そうはいかないんだから」


「……」


結局シルヴィア様のお付きの方が毒味して、当たり前ですが何も起きませんでした。

私はとてもイライラしながら、シルヴィア様を非難しました。


「失礼ではありませんか? 私は被害者なのに、疑いの目を向けられて……はっきり言って不愉快です」


シルヴィア様はちらと私の目を見ると、ふんっと鼻息を漏らしました。


「念には念を入れただけよ」


「……疑心暗鬼な毎日を送るのは……疲れませんか?」


「……宿命よ」


「本日のご用件はなんでしょう?」


「謝罪をしに来たわ。国王陛下がどうしても行けって言うからね。しゃあなしよ」


「不本意なのですか?」


「当たり前でしょ。王家を汚す泥棒猫に謝るなんて……一生の恥だわ」


そう言い捨てると、シルヴィア様は風呂敷包みをほどき、中身を見せました。


「あなた……ハンカチに興味あるのよね? センシュウ製の特別なやつを持ってきたわ。受け取っておきなさい」


シルヴィア様が私と話したことを覚えているのが意外でした。しかし……私が好きなのはセンシュウ製ではなくイマバリ製です。シルヴィア様にわからせてやらねばなりません。


私は立ち上がり、シルヴィア様をじっと見つめてから大声で言ってやりました。


「私が好きなのは……イマバリ製よ! そんなことも調べずに来るなんて……あなたを許すわけにはいかないわね!」


ついでに私はセンシュウ製のハンカチの一つを掴み、シルヴィア様に投げつけました。理性的な行動ではありませんでしたが、後悔はしていません。

シルヴィア様の顔にぺたりと引っ付いたハンカチは、すぐに彼女の膝下へ落ちました。シルヴィア様は一瞬何が起きたのかわかっておらず、投げつけられたハンカチがへなへなと形を崩していく様を見つめていました。

シルヴィア様はあっけにとられて私に目をやりました。


「センシュウ製の……ハンカチよ?」シルヴィア様は目をぱちくりさせています。


「もちろん知っています。でも、私はイマバリ製が好きです。ディートハルト様もイマバリ製がお好きなのですよ。ご存知でしたか?」


「…………えええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!???????????????」

シルヴィア様は驚きのあまり絶叫したのでした。
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