機械ゴーレムに管理された世界で、長い眠りから目覚めた天才魔技師は真の能力を発揮。メイドと一緒にほのぼのスローライフを目指す

わんた

文字の大きさ
上 下
26 / 45

第26話 ご飯を作りました!

しおりを挟む
 尋問に失敗してしまった俺は、半壊している廊下を歩いている。

 清掃は後回しになっているため瓦礫は残ったままだ。天井の一部は穴が空いているし修理しなければいけないのだが、材料がないので、どうしようもない。木の板でも張り付けでもするか? 見栄えは悪いが、穴が空いたままよりかはマシだろう。

 だが森には人が住んでいないので、木を切ってしまえば上級機械ゴーレムが俺たちに気づく可能性もある。

 悩ましいところだな。考えても答えは出ない。たいしたアイデアは思い浮かばないので、シェルター内の整備はナータに任せよう。

「ジャザリーさん!」

 名前を呼ばれた。

 考え事をしていたこともあって下を向いていたので、顔を上げる。

 メイド服にピンクのエプロンをつけたニクシーが手を振っていた。

「ご飯を作りました!」

 確か、万能型機械ゴーレムのナータに料理を教わっていたな。俺好みの料理を勉強していたと思ったのだが、もう成果が出たようだ。意外に早いなと思った。

 あの堂々とした姿からして自信はあるのだろう。少し楽しみである。

「食べよう」
「ありがとうございます!」

 ご飯を作ってもらった上にお礼を言われるとは。
 これも副作用によって、俺に尽くすことで喜びを感じているからだ。

 待っているニクシーに近づくと、尻をポンッと軽く触る。

「ひゃぁ!」

 彼女は驚いた声を上げると、顔を赤くして手で尻を押さえた。

 俺を見る目に嫌悪感はない。恥ずかしさと嬉しさ、そんなもんが混ざっていそうだ。性的な接触をしても問題はなさそうだな。

 機械の体になった女に興味はないが、何をしても怒らないというのは気分が良い。色々と実験できそうだ。

「行くぞ」
「は、はいっ!」

 ニクシーを連れて再び通路を歩く。しばらくすると、食欲をそそる豚骨の匂いがしてきた。今日の晩飯はラーメンか。なかなか良い選択だ。

 胃がグルグルと動き出して早く食べろと訴えかけてくる。口の中に唾液が広がり、我慢できそうにない。足を速めてドアを開けるとダイニングに入った。

「お待ちしておりました。すぐに麺を茹でますね」
「頼んだ」

 俺のいつもの席に座るとテーブルにガラスのコップが置かれ、お茶が注がれていく。キンキンに冷えたビールを飲みたいところではあるが、シェルター内にはアルコールがないので諦めるしかない。

 お茶を飲んで喉を潤すと、皿が置かれた。餃子が入っている。大きさや形が一つひとつちがうので、ナータが作った訳ではなさそうだ。

「これはニクシーが?」
「はい。ナータさんに教わりながら具を包んで焼きました」

 予想通りだ。ナータが監修しているなら味は問題ないだろう。

「これを付けて食べて下さい」

 餃子に付けるタレは透明の液体だ。純度100%のお酢である。これに胡椒をたっぷりかけて食べるのが好きなのだ。

「わかっているじゃないか」

 箸を受け取って餃子を掴む。具がぎっしりと詰まっていて重みを感じる。薄皮から肉汁が溜まっているように見えた。シェルター内に肉はなかったはずだから、尋問している間に狩りでもしてきたか?

 まあ、どうでもいい。
 冷える前に食べてしまおう。

 胡椒をたっぷりと振りかけた胡椒に餃子を浸す。たっぷりと吸わせてから口に入れた。

 酸っぱさと胡椒の風味を感じ、噛むと肉汁がじゅわっと広がる。

 熱い! だが、それが良い!

 タレのお酢がさっぱりとしているので、脂っこさは薄れており非常に食べやすい。

「どうですか?」
「美味い」

 不安げな顔をしているニクシーに返事すると、笑顔になった。

 形は悪いが味は最高だ。尋問という労働の後と言うこともあって腹は減っている。二つ目、三つ目と口に入れていく。

「こちらもどうぞ」

 今度はナータがラーメンの入った器をテーブルに置いた。こってりの豚骨ラーメンだ。細かく切った万能ネギと、唐辛子をベースにした赤い調味料が中心に置かれている。

 箸で麺を掴んで持ち上げると、どろりとしたスープも一緒に付いてきた。スープは、こってり系だ。わかっているじゃないか。ラーメンはこれでいいんだよ。

 口に入れて一気に麺を吸い込むと、豚骨の濃厚な味が広がった。

「変わらない味で安心する」

 餃子もよかったが、豚骨ラーメンの方が上だ。ナータの方が俺の好みを知り尽くしているのと、技術的な差で違いが出たからだろう。

 食べる手は止まらない。ラーメンを食べつつ、餃子をつまむ。最高の贅沢だ。胃袋が限界を訴えてきても無視してしまうほどである。俺は今日、限界を突破するぞ!

 餃子は三皿、替え玉を二回お代わりして腹を満たし、ようやく俺の食欲は満たされた。

「ごちそうさま」

 心音そこから出た声だ。もう、美味かったなんて言葉は不要である。俺の態度を見れば、満足していることは伝わっているだろう。

「よくやりましたね」

 ナータがニクシーを褒めていた。

 自分にも他人にも厳しい態度を取ることが多いので珍しい。しかも俺の前で褒めるなんて。
 想像している以上にニクシーは努力したのだろう。

 労力に対して適正な報酬は必要だ。何かプレゼントするべきか。

「何か願いはあるか? 俺が叶えられる範囲なら、お願いを聞こう」

 自然と、そんな言葉が出たのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【第1章完】セブンでイレブン‼~現代に転移した魔王、サッカーで世界制覇を目指す~

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 ジパングリーグ加盟を目指して創設されたサッカークラブ、『アウゲンブリック船橋』。  しかし、様々な不祥事に見舞われ、早々とクラブ解散の危機に追い込まれてしまう。そんな現状に新人広報七瀬ななみはただただ、途方に暮れていた。  そんな時、クラブハウスに雷が落ちる。慌てて建物の中に向かったななみが出会ったのは、『魔王』だった⁉  ドタバタサッカーコメデイー、ここにキックオフ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに 撥ねられてしまった。そして良太郎 が目覚めると、そこは異世界だった。 さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、 ゴーレムと化していたのだ。良太郎が 目覚めた時、彼の目の前にいたのは 魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は 未知の世界で右も左も分からない状態 の良太郎と共に冒険者生活を営んで いく事を決めた。だがこの世界の裏 では凶悪な影が……良太郎の異世界 でのゴーレムライフが始まる……。 ファンタジーバトル作品、開幕!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...