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第25話 誰かがいたみたい
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破壊された49号は川から流れてきた可能性があり、私は上流に向かって川辺を歩いていた。
特に争った気配はない。いつもどおりの景色が続くと思っていたけど、一時間を経たずに立ち止まった。この周辺は何かがおかしい。無意識のうちに異変を察知したのだろう。
原因を調べるために地面を調べていくと、不自然に地面が整っている箇所を見つけた。まるで誰かが痕跡を消すために整地したような……。
もしかしたら私の勘違いかもしれない。でも、49号を破壊できる存在がいるかもしれないのであれば、可能性が低くても調査はしておくべき。
私は川から離れて木々をかき分けて森の奥へ進む。
すぐに草が踏まれた跡を発見した。
しゃがんで形を確認すると、靴でつけられたものだとわかる。
「誰かがいたみたい」
足跡からして単独ではない。二~三人はいたはずだ。
他の神が派遣した神兵が近くにいたのであれば、キメラの森を巡回していた49号が破壊されたのも理解はできる。
都市の近くにまで侵入されているとしたら大問題なので、調査を続行するしかない。立ち上がると、腰にぶら下げていた剣を手に持つ。
まだ敵がいるかもしれない。慎重になりながら足跡を追っていく。
数秒後には敵対する神兵に囲まれて、殺されるんじゃないかという恐怖が沸いてくる。今まで経験したことのない感情が、私の中に広がっていき戸惑ってしまう。
私は稼働してから四百年は経過していて感情を獲得してしまったけど、正直いらないなって思うことの方が多い。人みたいに不合理な行動をするようになってしまったし、良いことなんて何もなかったな。
最近じゃ、商業の神だって名乗っている上級機械ゴーレムにも、嫌悪感を覚えるほどだし。
だめだめ。危ない場所なのに考え事をしている。これも感情のせい……って、あれは?
木の根に黒いすすがついている。
あれは、何かが燃えた後だ。
他の神から派遣された神兵が、こんなわかりやすい痕跡を残す?
普通ならあり得ないと断言できるけど、私たちのことを格下だって見くだしているのであれば別だ。この近くなら混沌、秩序、暴力あたりの神が該当する。意外に多いな。
「罠かも」
あえて声を出して周囲の様子をうかがってみたけど、変化は何もない。平和なまま。
49号を壊した神兵は撤退してしまった?
ううん。楽観的な判断はだめ。
常にいくつもの可能性を考えて行動しないと。
すすが残っている木の根に近づいた。ここまできて何も起こらないのであれば、近くに神兵が潜んでいる可能性はかなり下がったと思う。
しゃがんで、すすをゆびで触る。手に付いた。乾いていて、出来たばかりのように感じる。雨が降ったのは二日前だから、古くても昨日ぐらいにすすが出るような何かが起こったはず。
この森に炎の魔法を使うキメラはいないので、やっぱり私たちの知らない誰かがいたのは間違いない。
「あれは?」
少し離れた所に小さな穴、いえ、あれは深い足跡があった。
踏み込みの強さからして十メートルはある距離を一気に詰めて、ここに来たんだと分かる。魔力の使い方を制限されている、都市に住んでいる人々が出せる力ではない。
大昔に生きていた人が、今の時代に蘇るなんてありえない。
他の神の手先か、身内の裏切り、わずかな可能性だけど上位のキメラがたまたまやってきた。この三つの内どれかになるはず。
「戻ろう」
どちらにしろ、これ以上の単独調査は危険だ。
今は情報を持ち帰ること、それを優先しないと。
私の目にはカメラ機能があるので、この場をいくつか映像に収めた。あとで専用の機械を取り付ければ、画像として商業の神に送れる。
襲われて壊されたくないので、さっさとこの場から立ち去ることにした。
* * *
俺の目の前には両手を鎖で縛られ、天井から吊されている機械ゴーレムがいる。足はギリギリ床に付かない高さだ。
シェルターに保管していた素体に、俺を襲ってきた神兵の頭脳や小箱を入れて尋問していた。
機械ゴーレム用の自白クスリを使っているため、目はうつろ。口は半開きになって、意味のない言葉を吐き続けている。
「あぁあ、らうあああ……」
数日かけて、どこまで感情が再現できているのか色々と試していたら、頭脳がイカれてしまったようだ。会話が出来なくなっている。
元に戻るか分からない。
もしかしたら、情報収集する前に壊してしまったのかもしれない。
ちょっと遊びすぎてしまったな、なんて反省は、少しだけしている。
「あのゴミ、どうしますか?」
俺を狙っていたこともあって、ナータは神兵には厳しい。
破壊しろといったら、喜んで実行するだろう。
二、三日放置していたら元に戻るかもしれないから、どうするか悩みどころだな。
「アヘ、へへへへっ」
……ダメかもしれんが、破壊はいつでもできるか。
「治療室に置いておけ」
「アデラに見張りをさせてもよろしいですか?」
「それでいい。意識を取り戻したら報告に来い」
「もし、戻らなければ……」
「好きにしろ」
役に立たない道具に興味はない。ナータのオモチャとして、破壊されるのも良いだろう。
特に争った気配はない。いつもどおりの景色が続くと思っていたけど、一時間を経たずに立ち止まった。この周辺は何かがおかしい。無意識のうちに異変を察知したのだろう。
原因を調べるために地面を調べていくと、不自然に地面が整っている箇所を見つけた。まるで誰かが痕跡を消すために整地したような……。
もしかしたら私の勘違いかもしれない。でも、49号を破壊できる存在がいるかもしれないのであれば、可能性が低くても調査はしておくべき。
私は川から離れて木々をかき分けて森の奥へ進む。
すぐに草が踏まれた跡を発見した。
しゃがんで形を確認すると、靴でつけられたものだとわかる。
「誰かがいたみたい」
足跡からして単独ではない。二~三人はいたはずだ。
他の神が派遣した神兵が近くにいたのであれば、キメラの森を巡回していた49号が破壊されたのも理解はできる。
都市の近くにまで侵入されているとしたら大問題なので、調査を続行するしかない。立ち上がると、腰にぶら下げていた剣を手に持つ。
まだ敵がいるかもしれない。慎重になりながら足跡を追っていく。
数秒後には敵対する神兵に囲まれて、殺されるんじゃないかという恐怖が沸いてくる。今まで経験したことのない感情が、私の中に広がっていき戸惑ってしまう。
私は稼働してから四百年は経過していて感情を獲得してしまったけど、正直いらないなって思うことの方が多い。人みたいに不合理な行動をするようになってしまったし、良いことなんて何もなかったな。
最近じゃ、商業の神だって名乗っている上級機械ゴーレムにも、嫌悪感を覚えるほどだし。
だめだめ。危ない場所なのに考え事をしている。これも感情のせい……って、あれは?
木の根に黒いすすがついている。
あれは、何かが燃えた後だ。
他の神から派遣された神兵が、こんなわかりやすい痕跡を残す?
普通ならあり得ないと断言できるけど、私たちのことを格下だって見くだしているのであれば別だ。この近くなら混沌、秩序、暴力あたりの神が該当する。意外に多いな。
「罠かも」
あえて声を出して周囲の様子をうかがってみたけど、変化は何もない。平和なまま。
49号を壊した神兵は撤退してしまった?
ううん。楽観的な判断はだめ。
常にいくつもの可能性を考えて行動しないと。
すすが残っている木の根に近づいた。ここまできて何も起こらないのであれば、近くに神兵が潜んでいる可能性はかなり下がったと思う。
しゃがんで、すすをゆびで触る。手に付いた。乾いていて、出来たばかりのように感じる。雨が降ったのは二日前だから、古くても昨日ぐらいにすすが出るような何かが起こったはず。
この森に炎の魔法を使うキメラはいないので、やっぱり私たちの知らない誰かがいたのは間違いない。
「あれは?」
少し離れた所に小さな穴、いえ、あれは深い足跡があった。
踏み込みの強さからして十メートルはある距離を一気に詰めて、ここに来たんだと分かる。魔力の使い方を制限されている、都市に住んでいる人々が出せる力ではない。
大昔に生きていた人が、今の時代に蘇るなんてありえない。
他の神の手先か、身内の裏切り、わずかな可能性だけど上位のキメラがたまたまやってきた。この三つの内どれかになるはず。
「戻ろう」
どちらにしろ、これ以上の単独調査は危険だ。
今は情報を持ち帰ること、それを優先しないと。
私の目にはカメラ機能があるので、この場をいくつか映像に収めた。あとで専用の機械を取り付ければ、画像として商業の神に送れる。
襲われて壊されたくないので、さっさとこの場から立ち去ることにした。
* * *
俺の目の前には両手を鎖で縛られ、天井から吊されている機械ゴーレムがいる。足はギリギリ床に付かない高さだ。
シェルターに保管していた素体に、俺を襲ってきた神兵の頭脳や小箱を入れて尋問していた。
機械ゴーレム用の自白クスリを使っているため、目はうつろ。口は半開きになって、意味のない言葉を吐き続けている。
「あぁあ、らうあああ……」
数日かけて、どこまで感情が再現できているのか色々と試していたら、頭脳がイカれてしまったようだ。会話が出来なくなっている。
元に戻るか分からない。
もしかしたら、情報収集する前に壊してしまったのかもしれない。
ちょっと遊びすぎてしまったな、なんて反省は、少しだけしている。
「あのゴミ、どうしますか?」
俺を狙っていたこともあって、ナータは神兵には厳しい。
破壊しろといったら、喜んで実行するだろう。
二、三日放置していたら元に戻るかもしれないから、どうするか悩みどころだな。
「アヘ、へへへへっ」
……ダメかもしれんが、破壊はいつでもできるか。
「治療室に置いておけ」
「アデラに見張りをさせてもよろしいですか?」
「それでいい。意識を取り戻したら報告に来い」
「もし、戻らなければ……」
「好きにしろ」
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