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第12話 何故、泣いているんですか?
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神兵様……じゃなく、ナータさんが、目の前を歩いています。
艶のある黒くて長い髪は私より綺麗で、話しかけるのも躊躇してしまいます。そんな相手なのに、シェリーさんは物怖じすることなく質問攻め。
私はもっと心を強くして、積極性を付けなければいけないのかも。せっかく生き延びたんですから、頑張らないとですね。
「――で、さ。私たちの体について、もう少し詳しく教えてくれない?」
床に転がっている瓦礫に飛び乗りながら、シェリーさんがナータさんに聞いています。私も気になっているので、二人から離されないよう半壊した通路を小走りで進み、盗み聞きを継続ですね。
「マスターが言ったように、体の90%は機械ゴーレムになっています」
「機械ゴーレムって何? 神兵や神様と何が違うの?」
ジャザリーさんには同じだと教えてもらいましたが、まだ信じ切れてません。ナータさんがどう答えるか気になります。
「貴方が言う神兵たちと、ほとんど同じですよ」
ああ、やっぱりそうなんですね。お父さんやお母さんを助けてくれなかった神兵様に、私はなってしまったようです。嬉しい気持ちなんてありません。体に対して嫌悪感を覚えるぐらいには、負の感情がわき上がっています。
なんででしょうね。
普通は、神様に近づけて喜ぶべきなのに。
「ナータは人じゃないよね? 同類になったってこと?」
「少しだけ違います。あなたたちは生身の体が10%ほど残っていますが、私は0.001%です。機械化率としては私の方が高く、生物という枠から大きく外れていますね」
「私ってバカだからさ、もっと簡単に説明してくれない?」
ナータさんは立ち止まって、シェリーさんをじっと見つめました。瞳が点滅しているようにも感じます。何か考えているのかなぁ。
「私の方が、あなたたちより神に近い、という意味です」
機械化率。聞いたことのない言葉でしたが、数字が低いほど人間ではなくなっていると思えば、納得感がありました。ナータさんは私たちと比べて感情が乏しいですし、やっぱり神兵様に似ていますから。
私やシェリーさんのように、無理やり変えられた存在とはちょっと違うのでしょう。
「だから私とニクシーは神兵様に近いって言ったんだね。確か神様より格が低いらしいし、納得かな?」
「はぁ……。貴方たちは、もう少し自分の体を知った方が良さそうですね」
呆れたような声を出したナータさんは、歩き出してしまいました。もうシェリーさんの質問には答えてくれません。
半壊した通路を進んでドアを開けると、部屋に入っていきます。
私とシェリーさんも後に続き、入り口で立ち止まってしまいました。
「怖い……」
思わず言葉が漏れてしまい、足が震えていてます。
だって体がぶら下がっているんですから。棚には謎の箱や液体に浮かぶ何かがあって、神様が禁忌と定めていた研究室、なんて言葉が思い浮かぶほど不気味です。
「私は何を見せられている!?」
シェリーさんは私にそっと触ってきました。手が震えていて、同じように恐怖を感じているみたいです。よかった。私の感覚がおかしいわけじゃなかった。
「わかりやすいように説明すると、貴方たちが言う神の体、ですね」
「「!?」」
驚いて声が出ません。
まさかここで、神様が作れるんですか!?
謎ばかり深まるジャザリーさんは、神を超える存在。
私なんかが、口をきいてはいけないお方なんですね……。
感情が高まって涙がボロボロと流れ落ちて、止まりません。
「何故、泣いているんですか?」
「都市から追い出され、神様に見捨てられたと思っていたんです……でも、神様よりスゴイ人に助けてもらえました……」
お父さんやお母さんを救ってくれなかったことを恨んだから、神様に捨てられたと思っていました。
都市の外に出たときの悲しみと絶望感は、今でも覚えています。キメラに襲われても動けないほど、何も考えられない状態でした。
「私は、この恩をどうやって返せば良いのでしょうか」
神様に捨てられた私には何の価値もありません。子供なので技術や知識だってシェリーさんには劣るし、返せるものはなにもない。
ナータさんが私に近づいて、顔を触りました。
「マスターの為に生きなさい。それが恩返しとなるでしょう」
お母さんみたいに、優しく、安心する笑顔でした。
「そんなことで良いんですか?」
「はい。マスターの命令を聞いていれば、良いんです」
私から目を離したナータさんはシェリーさんを見ました。
何も言いません。じっと言葉を待っています。
「私だって、恩知らずじゃない。ニクシーと一緒に、ジャザリーを支えるよ」
少し照れながらもシェリーさんが言いました。同じ気持ちで嬉しいです。大切なジャザリーさんと一緒に日々を過ごしましょうね。
「貴方たちの覚悟を受け取りました。それでは、神兵や神と名乗っている存在が、どれだけ愚かなのか、これから説明しましょう」
さっきまでの話で、頭がパンクしそうなのに。まだあるんですか!?
しかも神様が愚かなんて言い切っている。私なんかが理解できるかわからないけど、知りたいという欲求が止まらない。
人間を支配、管理している神様、ジャザリー様のスゴイ知識、世界の秘密を知ることができる。なんて言ったら大げさでしょうか。
シェリーさんに笑われてしまうかもしれませんが、今の私は本気でそう思っていました。
艶のある黒くて長い髪は私より綺麗で、話しかけるのも躊躇してしまいます。そんな相手なのに、シェリーさんは物怖じすることなく質問攻め。
私はもっと心を強くして、積極性を付けなければいけないのかも。せっかく生き延びたんですから、頑張らないとですね。
「――で、さ。私たちの体について、もう少し詳しく教えてくれない?」
床に転がっている瓦礫に飛び乗りながら、シェリーさんがナータさんに聞いています。私も気になっているので、二人から離されないよう半壊した通路を小走りで進み、盗み聞きを継続ですね。
「マスターが言ったように、体の90%は機械ゴーレムになっています」
「機械ゴーレムって何? 神兵や神様と何が違うの?」
ジャザリーさんには同じだと教えてもらいましたが、まだ信じ切れてません。ナータさんがどう答えるか気になります。
「貴方が言う神兵たちと、ほとんど同じですよ」
ああ、やっぱりそうなんですね。お父さんやお母さんを助けてくれなかった神兵様に、私はなってしまったようです。嬉しい気持ちなんてありません。体に対して嫌悪感を覚えるぐらいには、負の感情がわき上がっています。
なんででしょうね。
普通は、神様に近づけて喜ぶべきなのに。
「ナータは人じゃないよね? 同類になったってこと?」
「少しだけ違います。あなたたちは生身の体が10%ほど残っていますが、私は0.001%です。機械化率としては私の方が高く、生物という枠から大きく外れていますね」
「私ってバカだからさ、もっと簡単に説明してくれない?」
ナータさんは立ち止まって、シェリーさんをじっと見つめました。瞳が点滅しているようにも感じます。何か考えているのかなぁ。
「私の方が、あなたたちより神に近い、という意味です」
機械化率。聞いたことのない言葉でしたが、数字が低いほど人間ではなくなっていると思えば、納得感がありました。ナータさんは私たちと比べて感情が乏しいですし、やっぱり神兵様に似ていますから。
私やシェリーさんのように、無理やり変えられた存在とはちょっと違うのでしょう。
「だから私とニクシーは神兵様に近いって言ったんだね。確か神様より格が低いらしいし、納得かな?」
「はぁ……。貴方たちは、もう少し自分の体を知った方が良さそうですね」
呆れたような声を出したナータさんは、歩き出してしまいました。もうシェリーさんの質問には答えてくれません。
半壊した通路を進んでドアを開けると、部屋に入っていきます。
私とシェリーさんも後に続き、入り口で立ち止まってしまいました。
「怖い……」
思わず言葉が漏れてしまい、足が震えていてます。
だって体がぶら下がっているんですから。棚には謎の箱や液体に浮かぶ何かがあって、神様が禁忌と定めていた研究室、なんて言葉が思い浮かぶほど不気味です。
「私は何を見せられている!?」
シェリーさんは私にそっと触ってきました。手が震えていて、同じように恐怖を感じているみたいです。よかった。私の感覚がおかしいわけじゃなかった。
「わかりやすいように説明すると、貴方たちが言う神の体、ですね」
「「!?」」
驚いて声が出ません。
まさかここで、神様が作れるんですか!?
謎ばかり深まるジャザリーさんは、神を超える存在。
私なんかが、口をきいてはいけないお方なんですね……。
感情が高まって涙がボロボロと流れ落ちて、止まりません。
「何故、泣いているんですか?」
「都市から追い出され、神様に見捨てられたと思っていたんです……でも、神様よりスゴイ人に助けてもらえました……」
お父さんやお母さんを救ってくれなかったことを恨んだから、神様に捨てられたと思っていました。
都市の外に出たときの悲しみと絶望感は、今でも覚えています。キメラに襲われても動けないほど、何も考えられない状態でした。
「私は、この恩をどうやって返せば良いのでしょうか」
神様に捨てられた私には何の価値もありません。子供なので技術や知識だってシェリーさんには劣るし、返せるものはなにもない。
ナータさんが私に近づいて、顔を触りました。
「マスターの為に生きなさい。それが恩返しとなるでしょう」
お母さんみたいに、優しく、安心する笑顔でした。
「そんなことで良いんですか?」
「はい。マスターの命令を聞いていれば、良いんです」
私から目を離したナータさんはシェリーさんを見ました。
何も言いません。じっと言葉を待っています。
「私だって、恩知らずじゃない。ニクシーと一緒に、ジャザリーを支えるよ」
少し照れながらもシェリーさんが言いました。同じ気持ちで嬉しいです。大切なジャザリーさんと一緒に日々を過ごしましょうね。
「貴方たちの覚悟を受け取りました。それでは、神兵や神と名乗っている存在が、どれだけ愚かなのか、これから説明しましょう」
さっきまでの話で、頭がパンクしそうなのに。まだあるんですか!?
しかも神様が愚かなんて言い切っている。私なんかが理解できるかわからないけど、知りたいという欲求が止まらない。
人間を支配、管理している神様、ジャザリー様のスゴイ知識、世界の秘密を知ることができる。なんて言ったら大げさでしょうか。
シェリーさんに笑われてしまうかもしれませんが、今の私は本気でそう思っていました。
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