7 / 45
第7話 他の施設を見るか
しおりを挟む
「だったらお前は、このまま死にたいのか?」
「………………生きたい、です」
「だったら禁忌なんて気にするな。生きるため、という大義名分の前では、全てが肯定される」
人間は生身でいろ?
生き残る手段があるのに使えない?
馬鹿らしい。
そんなくだらないルール、しかも道具が勝手に作ったものを、守る必要なんてないのだ。
機械ゴーレムは人間のために存在する。
それ以上でもそれ以下でもないのだから。
ナータを見ながら命令を出す。
「二人同時に半機械ゴーレム化対応をしろ」
「かしこまりました。すぐに取りかかります」
倒れたままのニクシーを拾い上げると、ナータはリビングから出ようとする。
「作業が終わったら、毒が打たれた原因も調査しておけ」
毒に苦しんで死にたくはないので、原因を調べておきたい。
昆虫や動物、キメラに刺されたのであれば、対策を練る必要があるからな。
「もちろんでございます。意識を取り戻したら本人にも聞くつもりです」
「頼んだぞ」
今度こそナータはリビングを出て行った。
一人残された俺はしばらく映像を見ていたが、キメラが出ることはなく、変化がなかった。これ以上は時間の無駄だと感じたので映像を切ると、ソファから立ち上がる。
シェルター内の破損状態を確認するべく、通路や各種部屋を確認していく。
倉庫や遊技場といった各部屋は無事なのだが、ポッドを置いていた部屋までの通路は荒れていた。床のタイルは砕け、壁は凹んでいる。天井の一部は穴が空くほどの戦闘があったようである。
さらには、機械ゴーレムの部品が至る所に散らばっているので、ナータがこいつらと戦いシェルターを守ってきたことは、容易に想像が付いた。
破壊された機械ゴーレムの腕を手に取る。素材は鉄と魔力伝導率の高いミスリル銀を混ぜた合金で、量産型の戦闘機械ゴーレムに使うものだ。特質するべき点はない。だが、内部は俺が作っていた機械ゴーレムとは構造が大きく違った。
「肌の質感は固い。旧型の機械ゴーレムに近いな。内部構造も単純化されていて、GOケーブルの本数も少ない。これじゃナータの半分ぐらいの力しか出せないだろう」
質は落ちたが、その分、生産コストは下がっている。俺のシェルターを襲ってきたのは、量産型だったのだろう。数はおよそ二百ってところか? それをナータだけで対応したのだから、魔力切れになるのも当然だ。
残る謎はシェルターが狙われた原因だな。物取りの線は薄いだろう。世界で多少は名の知れた人間ではあったが、命を狙われるほどではなかった。
理由が全く思い浮かばないので、こればっかりはナータに聞くしかないだろうな。
半壊している通路を歩き、出入り口まで付いた。壁にはしごがあって数メートル上には蓋がある。あれはシェルターの出入り口だ。
傷跡はあるが破壊はされてないので、緊急性の高い問題は発生していないようである。外の様子も確認したいところではあるが、先ずは内部を優先しよう。
「他の施設を見るか」
次に確認しに行ったのは室内畑である。
天井に人工太陽を浮かべ、定期的に雨を降らし、肥料をまく場所だ。
ドアを開けて部屋に入ると、むわっとした空気を感じた。少し温度は高めに設定されているようだ。目の前には黄金のような色をした小麦が、視界一面に広がっている。壁際に作られた道を歩き奥に行くと、キャベツやトマト、ナスといった色とりどりの野菜が並んでおり、実を付けていた。
誰も手入れはしていなかったのに、順調に育っている。
さすが高い金を払っただけあるな。当面の生活大丈夫そうだな……って、これはなんだ?
地面から鉱石が生えていたのだ。
あり得ない出来事に驚きつつ、触ってみる。
「ミスリルだ」
魔力伝導率の高さから、機械ゴーレムの素材として使われる鉱石だ。産出量が少ないので貴重なものなんだが、なぜシェルター内から取れるようになったんだ?
寝ている間に地殻変動が起こったのだろうか。原因はわからないが、これは使える。外が機械ゴーレムの支配する世界であるなら、自由を守るために戦力を強化する必要があるからな。
「よし、先に機械ゴーレムを作ろう」
それも戦闘型だ。ナータを頂点にして、メイドシリーズにするのも楽しそうだ。機械ゴーレムはすぐに作れるようになっているので、早速に二体目を用意しよう。
手に入れたミスリルの鉱石を持って倉庫に行くと、適当な場所に投げ捨てた。
「さて、選ぶか」
倉庫には、機械ゴーレムの素材が集まっている。
腕や足、顔、体の人工骨を組み合わせ、筋肉の代わりにGOケーブルを巻き付け、人工皮膚を貼り付けた素体が、数十体分はぶら下がっている。
すぐにでも動かせる素体が選びたい放題である。
適当に見繕ってから作業部屋に持って行くと、もう一度倉庫に戻る。
次は棚に飾ってある心臓の代わりとなる小箱を一つ選び、保存液に入れて並べられている機械ゴーレムの脳を、ケースごと持った。
液体に浮かぶ脳は金属ではあるのだが、実はこれ、人間から取り出した脳をベースに作られているのだ。
人類の魔導技術が進んでも脳だけは、ゼロから作り出すことはできず、改造することで適合させた。
機械ゴーレムの脳はベースが人間であるので、神と名乗っていて人間を見下し管理しているヤツらこそ、禁忌を犯した存在なのだ。
この事実を知ったとき、上位機械ゴーレムを神だと崇めている人間達は、何を思うんだろうな。
「………………生きたい、です」
「だったら禁忌なんて気にするな。生きるため、という大義名分の前では、全てが肯定される」
人間は生身でいろ?
生き残る手段があるのに使えない?
馬鹿らしい。
そんなくだらないルール、しかも道具が勝手に作ったものを、守る必要なんてないのだ。
機械ゴーレムは人間のために存在する。
それ以上でもそれ以下でもないのだから。
ナータを見ながら命令を出す。
「二人同時に半機械ゴーレム化対応をしろ」
「かしこまりました。すぐに取りかかります」
倒れたままのニクシーを拾い上げると、ナータはリビングから出ようとする。
「作業が終わったら、毒が打たれた原因も調査しておけ」
毒に苦しんで死にたくはないので、原因を調べておきたい。
昆虫や動物、キメラに刺されたのであれば、対策を練る必要があるからな。
「もちろんでございます。意識を取り戻したら本人にも聞くつもりです」
「頼んだぞ」
今度こそナータはリビングを出て行った。
一人残された俺はしばらく映像を見ていたが、キメラが出ることはなく、変化がなかった。これ以上は時間の無駄だと感じたので映像を切ると、ソファから立ち上がる。
シェルター内の破損状態を確認するべく、通路や各種部屋を確認していく。
倉庫や遊技場といった各部屋は無事なのだが、ポッドを置いていた部屋までの通路は荒れていた。床のタイルは砕け、壁は凹んでいる。天井の一部は穴が空くほどの戦闘があったようである。
さらには、機械ゴーレムの部品が至る所に散らばっているので、ナータがこいつらと戦いシェルターを守ってきたことは、容易に想像が付いた。
破壊された機械ゴーレムの腕を手に取る。素材は鉄と魔力伝導率の高いミスリル銀を混ぜた合金で、量産型の戦闘機械ゴーレムに使うものだ。特質するべき点はない。だが、内部は俺が作っていた機械ゴーレムとは構造が大きく違った。
「肌の質感は固い。旧型の機械ゴーレムに近いな。内部構造も単純化されていて、GOケーブルの本数も少ない。これじゃナータの半分ぐらいの力しか出せないだろう」
質は落ちたが、その分、生産コストは下がっている。俺のシェルターを襲ってきたのは、量産型だったのだろう。数はおよそ二百ってところか? それをナータだけで対応したのだから、魔力切れになるのも当然だ。
残る謎はシェルターが狙われた原因だな。物取りの線は薄いだろう。世界で多少は名の知れた人間ではあったが、命を狙われるほどではなかった。
理由が全く思い浮かばないので、こればっかりはナータに聞くしかないだろうな。
半壊している通路を歩き、出入り口まで付いた。壁にはしごがあって数メートル上には蓋がある。あれはシェルターの出入り口だ。
傷跡はあるが破壊はされてないので、緊急性の高い問題は発生していないようである。外の様子も確認したいところではあるが、先ずは内部を優先しよう。
「他の施設を見るか」
次に確認しに行ったのは室内畑である。
天井に人工太陽を浮かべ、定期的に雨を降らし、肥料をまく場所だ。
ドアを開けて部屋に入ると、むわっとした空気を感じた。少し温度は高めに設定されているようだ。目の前には黄金のような色をした小麦が、視界一面に広がっている。壁際に作られた道を歩き奥に行くと、キャベツやトマト、ナスといった色とりどりの野菜が並んでおり、実を付けていた。
誰も手入れはしていなかったのに、順調に育っている。
さすが高い金を払っただけあるな。当面の生活大丈夫そうだな……って、これはなんだ?
地面から鉱石が生えていたのだ。
あり得ない出来事に驚きつつ、触ってみる。
「ミスリルだ」
魔力伝導率の高さから、機械ゴーレムの素材として使われる鉱石だ。産出量が少ないので貴重なものなんだが、なぜシェルター内から取れるようになったんだ?
寝ている間に地殻変動が起こったのだろうか。原因はわからないが、これは使える。外が機械ゴーレムの支配する世界であるなら、自由を守るために戦力を強化する必要があるからな。
「よし、先に機械ゴーレムを作ろう」
それも戦闘型だ。ナータを頂点にして、メイドシリーズにするのも楽しそうだ。機械ゴーレムはすぐに作れるようになっているので、早速に二体目を用意しよう。
手に入れたミスリルの鉱石を持って倉庫に行くと、適当な場所に投げ捨てた。
「さて、選ぶか」
倉庫には、機械ゴーレムの素材が集まっている。
腕や足、顔、体の人工骨を組み合わせ、筋肉の代わりにGOケーブルを巻き付け、人工皮膚を貼り付けた素体が、数十体分はぶら下がっている。
すぐにでも動かせる素体が選びたい放題である。
適当に見繕ってから作業部屋に持って行くと、もう一度倉庫に戻る。
次は棚に飾ってある心臓の代わりとなる小箱を一つ選び、保存液に入れて並べられている機械ゴーレムの脳を、ケースごと持った。
液体に浮かぶ脳は金属ではあるのだが、実はこれ、人間から取り出した脳をベースに作られているのだ。
人類の魔導技術が進んでも脳だけは、ゼロから作り出すことはできず、改造することで適合させた。
機械ゴーレムの脳はベースが人間であるので、神と名乗っていて人間を見下し管理しているヤツらこそ、禁忌を犯した存在なのだ。
この事実を知ったとき、上位機械ゴーレムを神だと崇めている人間達は、何を思うんだろうな。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる