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第34話 告発
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「陽葵、男子に絡んでないで帰るよ」
「え?」
「え、じゃないでしょ。優希くんが困ってるじゃない」
どうやら舞衣さんは俺を助けるために来てくれたみたい。よかった。陽葵さんの遊びに乗ってきたら収拾がつかなくなるところだったよ。
「そんなこと言うなら舞依は先に帰ってよ」
挑発するように陽葵さんは言ってから、両腕を伸ばして俺の頬を掴んだ。
手はすべすべしていて温かい。
心がほっとする。
ずっと触れて欲しいと思ってしまう不思議な魅力があった。
「私は、ずっとここにいるから」
「ひ~ま~り~」
一瞬にして舞依さんの怒りが頂点に達し、陽葵さんの頭を掴んだ。運動系の部活に入っていることもあって結構力は強いみたい。俺から手を離し、逃げようとしているけど抜け出せないでいる。
「いたい! いたいってっ!」
「痛くしてるんだから当然でしょっ!! だいたい昔から陽葵は男に気安く触り過ぎなんだって!」
「クセなの~っ! 許して!」
「だーめ。今日という今日は、わかってくれるまでお説教なんだから」
別クラスの二人が入ってくるだけでも一大イベントなのに、争いあっている珍しい光景を目の前にして、俺だけじゃなく教室に残っている皆が驚いている。
彼女たちのイメージが崩れてしまいそうだ。
理由はわからないけど俺が原因でケンカしてることはわかっているので止めないと。
「二人とも落ち着いて」
意識して声を変えながら言うと同時に動いて俺を見た。
ガン見されている。美人のすごんだ顔は、それだけで威圧感があって気圧されそうになる。
「注目を集めているよ」
と、視線を教室の仲人の方に移すと二人も続く。
ようやく悪目立ちしていると気づいてくれたみたいだ。さらにドアから笹木先輩が俺たちを盗み見してて、舞依さんの頬は引きつっていた。仲が良いと思っていたけど苦手なのか。
「どっか行こうか」
「……舞依に賛成」
陽葵さんは俺のスクールバッグを持ち、舞依さんは腕を取って引っ張っていく。逃げる方法は失った。息がぴったりだ。
クラスメイトに見られながら教室を出ると、そのまま学校から出て移動することになった。
* * * * * * *
制服を着たまま駅前のファストフード店に入った。三人ともジュースとポテトを頼んで席に座っている。
女性の二人はソファ席で俺は普通の椅子。向かい合っている。
教室での出来事なんてなかったかのように舞依さんと陽葵さんは仲良く話していて、俺は声を変えて長く話すのは難しいため聞き手に徹している。
今は流行のショート動画を紹介し合っていた。
「私はね、最近この人にハマってるんだ」
陽葵さんがスマホをテーブルに置く。
見覚えのある見た目が画面に表示されている。特徴的なピンク髪を見間違えることはない。メーベル・クロツェルさんだ。
動画が再生されると男の声も聞こえる。
え、俺だ。
この前のコラボ動画の切り抜きみたいで、クラフト系のゲームをしている。ちょうど二人で一つのベッドを使おうなんて話しているところだった。
「この人とのコラボは面白くなかったんだけど、男性経験の話とかは面白いんだよね」
さらっと、つまらないと言われて傷つきながらも静かに話を聞く。
「いざヤるといったときにシャワー浴びない男の話とか、マジで受けたんだから」
「……それ面白いの?」
「うん。エッチするときのあるあるネタとか共感できて面白くない?」
「え、いや……」
言い淀んでいる舞依さんは俺の方をチラッと見た。異性の目が気になっているのだろうか。
隣にいる陽葵さんはニヤつきながら様子を見ている。
俺たちにとっては、あまり好ましくない言葉を思いついたのだろう。
「まさか未経験なの?」
「…………そいういうの男子の前でいうの止めない?」
「いいじゃん。私は気にしないよ。経験人数だって言えるんだから」
疑わしそうな目で舞依さんが見ていても陽葵さんの口は止まらない。
「一回だけを含めると、ろく――」
「ストーーーーップ!」
大声を出した舞依さんが止めた。
高校一年で60人ってことはないだろうから、6人と言いたかったのかな。それでも童貞の俺には想像がつかないほど経験が豊富だ。
隣にいる舞依さんはどうなんだろう。
人気者だから同じぐらいの経験をしていても不思議じゃないと思うんだけど、会話の流れからしてそうじゃないかもしれない。別に付き合っているわけじゃないからどうでも良い話題であるはずなのに、何故か気になって仕方がなかった。
「わかったって。ほらこれでも食べ落ち着いて」
ポテトを一本もつと、陽葵さんは舞依さんの口にねじ込んで黙らせる。
「っん!?」
「それでねメーベルって人の動画で面白いのは……」
抗議の目をされても気づかないフリして、陽葵さんはスマホを操作している。
指は淀みなく動いて動画アプリからSNSに切り替えると動きが止まった。
「さっきの人……えーと、メーベルだっけ。なんか、すごいことになっている」
「すごいって?」
コラボ相手のことだから興味はある。声を変えつつ聞いてみた。
「うーん。これは炎上っぽいね。告発されているっぽい」
画面を見せてくれたので内容を確認する。
どうやら過去にコラボした男性VTuberが金を取られたって告発しているみたいだ。
SNSに投稿されたばかりで世間がどう反応するかわからない。
メーベルさん大丈夫かな……。
「え?」
「え、じゃないでしょ。優希くんが困ってるじゃない」
どうやら舞衣さんは俺を助けるために来てくれたみたい。よかった。陽葵さんの遊びに乗ってきたら収拾がつかなくなるところだったよ。
「そんなこと言うなら舞依は先に帰ってよ」
挑発するように陽葵さんは言ってから、両腕を伸ばして俺の頬を掴んだ。
手はすべすべしていて温かい。
心がほっとする。
ずっと触れて欲しいと思ってしまう不思議な魅力があった。
「私は、ずっとここにいるから」
「ひ~ま~り~」
一瞬にして舞依さんの怒りが頂点に達し、陽葵さんの頭を掴んだ。運動系の部活に入っていることもあって結構力は強いみたい。俺から手を離し、逃げようとしているけど抜け出せないでいる。
「いたい! いたいってっ!」
「痛くしてるんだから当然でしょっ!! だいたい昔から陽葵は男に気安く触り過ぎなんだって!」
「クセなの~っ! 許して!」
「だーめ。今日という今日は、わかってくれるまでお説教なんだから」
別クラスの二人が入ってくるだけでも一大イベントなのに、争いあっている珍しい光景を目の前にして、俺だけじゃなく教室に残っている皆が驚いている。
彼女たちのイメージが崩れてしまいそうだ。
理由はわからないけど俺が原因でケンカしてることはわかっているので止めないと。
「二人とも落ち着いて」
意識して声を変えながら言うと同時に動いて俺を見た。
ガン見されている。美人のすごんだ顔は、それだけで威圧感があって気圧されそうになる。
「注目を集めているよ」
と、視線を教室の仲人の方に移すと二人も続く。
ようやく悪目立ちしていると気づいてくれたみたいだ。さらにドアから笹木先輩が俺たちを盗み見してて、舞依さんの頬は引きつっていた。仲が良いと思っていたけど苦手なのか。
「どっか行こうか」
「……舞依に賛成」
陽葵さんは俺のスクールバッグを持ち、舞依さんは腕を取って引っ張っていく。逃げる方法は失った。息がぴったりだ。
クラスメイトに見られながら教室を出ると、そのまま学校から出て移動することになった。
* * * * * * *
制服を着たまま駅前のファストフード店に入った。三人ともジュースとポテトを頼んで席に座っている。
女性の二人はソファ席で俺は普通の椅子。向かい合っている。
教室での出来事なんてなかったかのように舞依さんと陽葵さんは仲良く話していて、俺は声を変えて長く話すのは難しいため聞き手に徹している。
今は流行のショート動画を紹介し合っていた。
「私はね、最近この人にハマってるんだ」
陽葵さんがスマホをテーブルに置く。
見覚えのある見た目が画面に表示されている。特徴的なピンク髪を見間違えることはない。メーベル・クロツェルさんだ。
動画が再生されると男の声も聞こえる。
え、俺だ。
この前のコラボ動画の切り抜きみたいで、クラフト系のゲームをしている。ちょうど二人で一つのベッドを使おうなんて話しているところだった。
「この人とのコラボは面白くなかったんだけど、男性経験の話とかは面白いんだよね」
さらっと、つまらないと言われて傷つきながらも静かに話を聞く。
「いざヤるといったときにシャワー浴びない男の話とか、マジで受けたんだから」
「……それ面白いの?」
「うん。エッチするときのあるあるネタとか共感できて面白くない?」
「え、いや……」
言い淀んでいる舞依さんは俺の方をチラッと見た。異性の目が気になっているのだろうか。
隣にいる陽葵さんはニヤつきながら様子を見ている。
俺たちにとっては、あまり好ましくない言葉を思いついたのだろう。
「まさか未経験なの?」
「…………そいういうの男子の前でいうの止めない?」
「いいじゃん。私は気にしないよ。経験人数だって言えるんだから」
疑わしそうな目で舞依さんが見ていても陽葵さんの口は止まらない。
「一回だけを含めると、ろく――」
「ストーーーーップ!」
大声を出した舞依さんが止めた。
高校一年で60人ってことはないだろうから、6人と言いたかったのかな。それでも童貞の俺には想像がつかないほど経験が豊富だ。
隣にいる舞依さんはどうなんだろう。
人気者だから同じぐらいの経験をしていても不思議じゃないと思うんだけど、会話の流れからしてそうじゃないかもしれない。別に付き合っているわけじゃないからどうでも良い話題であるはずなのに、何故か気になって仕方がなかった。
「わかったって。ほらこれでも食べ落ち着いて」
ポテトを一本もつと、陽葵さんは舞依さんの口にねじ込んで黙らせる。
「っん!?」
「それでねメーベルって人の動画で面白いのは……」
抗議の目をされても気づかないフリして、陽葵さんはスマホを操作している。
指は淀みなく動いて動画アプリからSNSに切り替えると動きが止まった。
「さっきの人……えーと、メーベルだっけ。なんか、すごいことになっている」
「すごいって?」
コラボ相手のことだから興味はある。声を変えつつ聞いてみた。
「うーん。これは炎上っぽいね。告発されているっぽい」
画面を見せてくれたので内容を確認する。
どうやら過去にコラボした男性VTuberが金を取られたって告発しているみたいだ。
SNSに投稿されたばかりで世間がどう反応するかわからない。
メーベルさん大丈夫かな……。
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