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第44話 ワレを楽しませろ!
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剣を抜くと体内の魔力を使ってオーラをまとう。
シルフォンはピタリと足を止めて振り返る。
「ワレと戦うつもりか?」
「我が力を持って、約束する価値があると証明しましょう」
にやっと、シルフォンが笑った。
戦うのは避けたかったのだが、俺の話に興味を示さないのであれば、力尽くで聞かせるのみ。
勝てる相手でないのは充分理解しているが、負けない戦いぐらいはできると信じたい。
それにここはシルフォンの自宅であり、プルップという人質もいるので、全力は出さないだろうという打算的な考えもあった。
持っている瓶をナターシャに渡す。
「最悪の場合は任せて下さい」
「頼んだぞ」
死んでもやり直せる。
しかも数時間ぐらいであればリスクはないのだ。こういった場面では圧倒的に有利――。
ここで意識が途切れた。
最後に見た光景は、シルフォンが炎の剣で俺の首を両断したところである。
話している最中に攻撃をしてくるとは……油断していたのは俺か。
暗い空間にいる。
欠けた光の球が宙に浮かんでいた。
意識体になった俺は「すまない」と謝罪する。
また窮屈な感覚が襲ってきたので、そろそろやり直しできるタイミングだ。ナターシャはどこに巻き戻してくれたのだろう。
意識が戻ると目の前に背を向けたシルフォンがいた。
足を止めて振り返る。
「ワレと戦うつもりか?」
殺される直前に戻したのか。
後ろから感じるナターシャの魔力は大きく減少している。
リスクなしで時間が戻せるとは言っても、回数制限はあるようだ。
直前に戻したのも魔力を可能な限り消費したくなかったからだと思えば、納得できる。
「我が力を持って、約束する価値があると証明しましょう」
もう油断なんてしない。プルップの瓶を投げ捨てると、目の前にシルフォンが立っていた。
手には炎の剣がある。魔法で作りだしたのだろう。切っ先は俺の心臓を狙っているようだ。
ギリギリ目で追えるほどのスピードではあるが、来ると分かっていれば対処のしようはある。
足を後ろに下げて半身になると突きを回避し、反撃としてがら空きの横っ腹を殴りつけた。
まともに受けてしまったシルフォンは吹き飛んでしまい、木にぶつかる。
大したダメージは与えられてなかったようで、見た限りケガはしていない。
「反応速度は悪くないな」
これで実力を認めてもらえたと思うのは早計だ。
シルフォンは魔法型の魔族で接近戦は得意でない。あいつらの感覚的には、反撃できて当たり前なのだ。
手に持っていた炎の剣が消える。何をしてくるのか警戒していると、地面から魔力を感じた。
土属性の魔法だ! 全力で走ると、近くにある木の枝を掴む。片手で体を持ち上げて登り、先ほどまでいた場所を見ると、土でできた槍が一面にあった。
ナターシャは『シールド』の魔法で防いだみたいだ。プルップを閉じ込めていた瓶は割れている。一歩間違えればコアが破壊されていたと思うのだが……。
状況を確認している間に、氷で作られた槍がこちらに飛んできた。数は五本。全て剣で叩き落とそうとする。
「なッ!?」
足場にしている木の枝が伸びて俺の体を押さえつけたのだ。
シルフォンは一体、何個の属性魔法が使えるんだよ!
全身を覆っているオーラに消滅属性を付与させて枝を消すと、剣を振るって氷の槍の軌道を変える。
一箇所に留まっていたら魔法の餌食になるので、枝を蹴って地面に着地、すぐさま走り出す。向かう先はシルフォンだ。
接近戦に持ち込んで有利に進めようと考えての行動だったのだが、読まれていたようである。
手には黄金の剣が握られていて、シルフォンは迎え撃つ準備は終わっていた。
「ワレを楽しませろ!」
魔族らしい発言だ。
己の力を試せて楽しいのだろう。
接敵まであと数メートルとなった。その直前、横に飛ぶ。
地面から土の槍が出ている。接近戦をすると見せかけて魔法を使ったのだ。
相手の意表を突いて攻撃するのが好きなヤツだな。
「正直期待していなかったが、存外、ワレを楽しませてくれる」
人間ごときには負けないと確信しているのか、油断しているな。これはチャンスだ。
動きが読まれないよう、左右に動きながら進みようやくシルフォンが俺の間合いに入った。
切っ先で地面を削るようにして、振り上げようとする。
『シールド』
防御魔法は展開されたが、その程度で止められる速度じゃない。
足、腰、背中、腕の筋肉を傷つける覚悟で強化して、魔法で創り出された盾に当てる。
「うおおおおおおおッ!!」
雄叫びを上げながら破壊した。
シルフォンは驚いた顔をしている。魔法に自信があったからこそ、破られるとは思っていなかったのだろう。
後ろに下がろうとしている。判断が遅すぎるぞ。
体には当てられなかったが、左腕を肘から切断できた。
「すごい! お父様の腕を飛ばした!!」
プルップが驚きの声を出している。
力を認めさせるには充分な成果を出したと思うのだが、手は止めない。
筋肉が痛むのを感じながらも大きく一歩踏み込み、今度は剣を振り下ろす。
狙いは肩だ。今度こそ、命もらってやるっ!
シルフォンはピタリと足を止めて振り返る。
「ワレと戦うつもりか?」
「我が力を持って、約束する価値があると証明しましょう」
にやっと、シルフォンが笑った。
戦うのは避けたかったのだが、俺の話に興味を示さないのであれば、力尽くで聞かせるのみ。
勝てる相手でないのは充分理解しているが、負けない戦いぐらいはできると信じたい。
それにここはシルフォンの自宅であり、プルップという人質もいるので、全力は出さないだろうという打算的な考えもあった。
持っている瓶をナターシャに渡す。
「最悪の場合は任せて下さい」
「頼んだぞ」
死んでもやり直せる。
しかも数時間ぐらいであればリスクはないのだ。こういった場面では圧倒的に有利――。
ここで意識が途切れた。
最後に見た光景は、シルフォンが炎の剣で俺の首を両断したところである。
話している最中に攻撃をしてくるとは……油断していたのは俺か。
暗い空間にいる。
欠けた光の球が宙に浮かんでいた。
意識体になった俺は「すまない」と謝罪する。
また窮屈な感覚が襲ってきたので、そろそろやり直しできるタイミングだ。ナターシャはどこに巻き戻してくれたのだろう。
意識が戻ると目の前に背を向けたシルフォンがいた。
足を止めて振り返る。
「ワレと戦うつもりか?」
殺される直前に戻したのか。
後ろから感じるナターシャの魔力は大きく減少している。
リスクなしで時間が戻せるとは言っても、回数制限はあるようだ。
直前に戻したのも魔力を可能な限り消費したくなかったからだと思えば、納得できる。
「我が力を持って、約束する価値があると証明しましょう」
もう油断なんてしない。プルップの瓶を投げ捨てると、目の前にシルフォンが立っていた。
手には炎の剣がある。魔法で作りだしたのだろう。切っ先は俺の心臓を狙っているようだ。
ギリギリ目で追えるほどのスピードではあるが、来ると分かっていれば対処のしようはある。
足を後ろに下げて半身になると突きを回避し、反撃としてがら空きの横っ腹を殴りつけた。
まともに受けてしまったシルフォンは吹き飛んでしまい、木にぶつかる。
大したダメージは与えられてなかったようで、見た限りケガはしていない。
「反応速度は悪くないな」
これで実力を認めてもらえたと思うのは早計だ。
シルフォンは魔法型の魔族で接近戦は得意でない。あいつらの感覚的には、反撃できて当たり前なのだ。
手に持っていた炎の剣が消える。何をしてくるのか警戒していると、地面から魔力を感じた。
土属性の魔法だ! 全力で走ると、近くにある木の枝を掴む。片手で体を持ち上げて登り、先ほどまでいた場所を見ると、土でできた槍が一面にあった。
ナターシャは『シールド』の魔法で防いだみたいだ。プルップを閉じ込めていた瓶は割れている。一歩間違えればコアが破壊されていたと思うのだが……。
状況を確認している間に、氷で作られた槍がこちらに飛んできた。数は五本。全て剣で叩き落とそうとする。
「なッ!?」
足場にしている木の枝が伸びて俺の体を押さえつけたのだ。
シルフォンは一体、何個の属性魔法が使えるんだよ!
全身を覆っているオーラに消滅属性を付与させて枝を消すと、剣を振るって氷の槍の軌道を変える。
一箇所に留まっていたら魔法の餌食になるので、枝を蹴って地面に着地、すぐさま走り出す。向かう先はシルフォンだ。
接近戦に持ち込んで有利に進めようと考えての行動だったのだが、読まれていたようである。
手には黄金の剣が握られていて、シルフォンは迎え撃つ準備は終わっていた。
「ワレを楽しませろ!」
魔族らしい発言だ。
己の力を試せて楽しいのだろう。
接敵まであと数メートルとなった。その直前、横に飛ぶ。
地面から土の槍が出ている。接近戦をすると見せかけて魔法を使ったのだ。
相手の意表を突いて攻撃するのが好きなヤツだな。
「正直期待していなかったが、存外、ワレを楽しませてくれる」
人間ごときには負けないと確信しているのか、油断しているな。これはチャンスだ。
動きが読まれないよう、左右に動きながら進みようやくシルフォンが俺の間合いに入った。
切っ先で地面を削るようにして、振り上げようとする。
『シールド』
防御魔法は展開されたが、その程度で止められる速度じゃない。
足、腰、背中、腕の筋肉を傷つける覚悟で強化して、魔法で創り出された盾に当てる。
「うおおおおおおおッ!!」
雄叫びを上げながら破壊した。
シルフォンは驚いた顔をしている。魔法に自信があったからこそ、破られるとは思っていなかったのだろう。
後ろに下がろうとしている。判断が遅すぎるぞ。
体には当てられなかったが、左腕を肘から切断できた。
「すごい! お父様の腕を飛ばした!!」
プルップが驚きの声を出している。
力を認めさせるには充分な成果を出したと思うのだが、手は止めない。
筋肉が痛むのを感じながらも大きく一歩踏み込み、今度は剣を振り下ろす。
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