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何が起こった!?
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アイラとベラトリックスの肩に触れると、敵に気づかれないほどの弱い光属性を付与する。ついでに倒れている兵士たちは足で触れて同じように付与した。
極小汚染獣程度の瘴気であればしばらく耐えられるだろう。
「俺が戦います。ベラトリックスはアイラ様を守ってくれ」
「お気を付けて」
敵の男を警戒しながら二人は離れていく。兵士は倒れたままで放置だ。男なんだから扱いはこんなもんでいいだろう。死ぬことはないんだから耐えてくれ。
「お前は確かに強い。それは認める。だが、汚染獣には勝てん! 苦しんで死ね!」
男はマスクをずらして笛を口につけると、音は聞こえないが汚染獣は俺の方を向く。
あれで指示を出しているのか?
瘴気が濃くなり不快感は高まるもののこの程度なら光属性持ちの俺にはまったく効かない。すぐさま反撃しても良いのだが、あえて顔を歪ませて苦痛を感じているように見せる。
フラフラと後ろに下がって二段ベッドの柱を掴んだ。
「どうして……お前の言うことを聞いているんだ……」
「さぁな。答えてやらん。この力を分けてくれたあの方に敵対した己を恨みながら死ねッ!」
口ぶりからしてバドロフ子爵じゃない気がする。もっと別の存在で上位貴族でもなく汚染獣に近い……そうか。わかった。
脳裏に浮かんだのは、特殊な大型の汚染獣で俺のお財布になっているメルベルだ。汚染獣の住む樹海から逃げ出し国の宰相として手腕を振るう一方で、通常の汚染獣を操っていた。
知能の高い特殊な汚染獣は複数いるとメルベルから聞いている。
この国、いやバドロフ子爵の背後にいるのであれば、極小汚染獣なら用意できるだろうし操作するような道具を分け与えることも可能だろう。
先人たちの犠牲をなんだと思っているのだ。汚染獣と戦い死んでいった勇者たちはお前を絶対に許さない。もちろん俺もだ。アイラを守るためだけじゃなく、俺の矜持を守るためにもバドロフ子爵たちには負けられない。
「人類の裏切り者め」
演技は止めて怒りの含んだ声を出して男を睨みつけると、怯んだようで後ろに下がった。
「な、なにをしている! さっさと殺せ!」
極小汚染獣が腕を前に出した。ドロドロになっている指っぽい肉の塊が飛んでくる。
横に飛んで避けると二段ベッドに当たり、木のフレーム部分が腐り落ちた。
肉には腐食効果があるみたいだ。
ベラトリックスは『シールド』の魔法を使って前面に防御魔法を展開しているので大丈夫だろうが、倒れている兵士たちは無防備である。
弱いながらも光属性を付与しているので程度は即死しないだろうが、直撃させない方が良い。
兵から離れるように移動していると極小の汚染獣が走り出した。
動きは鈍い。両腕を広げて抱きしめようとしてきたので横に飛ぶとベッドに衝突して溶かしてしまう。驚くことに溶けた一部を吸収して体が一回り大きくなった。
小型に進化しようとしている? それとも体積が増えただけか?
様子を見ていると腕を千切り、振り回してくる。肉片が周囲に飛び散って男の足下にも落ちた。
「俺を狙ってどうする! 敵を倒せ!」
言葉を理解している様子はない。腕を回し続けている。笛じゃなければ命令は受け付けないか。
戦闘からしばらくたっても増援が来る様子はない。鉱夫も同じである。これ以上、時間を稼ぐ意味はなさそうだ。
「そろそろいいか」
光属性の魔力を放出して室内を満たすと瘴気は吹き飛んだ。極小の汚染獣が苦しみ、体の形が崩れて蒸発いく。戦うまでもなく消滅するだろう。
「何が起こった!?」
切り札が負けて怯えている男は小刻みに震えていた。
絶対優位で勝てると思っていたのだ。ピンチになるなんて想像してなかったらしく戦う気力すら無いように見えた。
「さぁな。汚染獣に聞いてみたら……お、消えたか。残念。相手がいなくなったようだ」
蒸発して消えた場所を見ているが、メルベルのように復活するような兆候は見られない。
普通の汚染獣だったか。見た目通り、極小のカテゴリに入る雑魚だったわけである。
「お前には聞きたいことがある。抵抗しないのであれば命は取らない」
「くそッ……」
一歩近づくと男は後ろに下がりながら剣を俺に向けてきた。
「負けるとわかっているのに戦うつもりか?」
「お前の言葉は信じられんッ!」
追い詰めすぎてしまったのか、徹底抗戦を選ばれてしまった。
楽はさせてもらえないらしい。仕方がないので魔法で拘束しよう。
『アースバインド』
男の足下から土で作られた紐が出現して絡みつく。俺に注目していたため避けることはできない。先に腕を取られたので剣で切り裂けず、見事に捕まってしまった。
追い詰められた人間は視野が狭くなるので簡単に捕らえられたぞ。これで汚染獣を操る方法が……。
「アガガガ……ゴフッ」
男の口から大量の血とともに、溶けかけた肉の塊が吐き出された。瘴気を放っていて極小の汚染獣だとわかる。人間の体内に隠れて浄化されずに残っていやがったのか。
踏みつけるのと同時に光属性の魔力を注ぎ込んで消して男を見る。目の焦点はあっていない。首を触って脈を確かめるが止まっていた。
情報を抜かれる前に死んでしまったか。戦いには勝ったが勝負には負けた気がした。
極小汚染獣程度の瘴気であればしばらく耐えられるだろう。
「俺が戦います。ベラトリックスはアイラ様を守ってくれ」
「お気を付けて」
敵の男を警戒しながら二人は離れていく。兵士は倒れたままで放置だ。男なんだから扱いはこんなもんでいいだろう。死ぬことはないんだから耐えてくれ。
「お前は確かに強い。それは認める。だが、汚染獣には勝てん! 苦しんで死ね!」
男はマスクをずらして笛を口につけると、音は聞こえないが汚染獣は俺の方を向く。
あれで指示を出しているのか?
瘴気が濃くなり不快感は高まるもののこの程度なら光属性持ちの俺にはまったく効かない。すぐさま反撃しても良いのだが、あえて顔を歪ませて苦痛を感じているように見せる。
フラフラと後ろに下がって二段ベッドの柱を掴んだ。
「どうして……お前の言うことを聞いているんだ……」
「さぁな。答えてやらん。この力を分けてくれたあの方に敵対した己を恨みながら死ねッ!」
口ぶりからしてバドロフ子爵じゃない気がする。もっと別の存在で上位貴族でもなく汚染獣に近い……そうか。わかった。
脳裏に浮かんだのは、特殊な大型の汚染獣で俺のお財布になっているメルベルだ。汚染獣の住む樹海から逃げ出し国の宰相として手腕を振るう一方で、通常の汚染獣を操っていた。
知能の高い特殊な汚染獣は複数いるとメルベルから聞いている。
この国、いやバドロフ子爵の背後にいるのであれば、極小汚染獣なら用意できるだろうし操作するような道具を分け与えることも可能だろう。
先人たちの犠牲をなんだと思っているのだ。汚染獣と戦い死んでいった勇者たちはお前を絶対に許さない。もちろん俺もだ。アイラを守るためだけじゃなく、俺の矜持を守るためにもバドロフ子爵たちには負けられない。
「人類の裏切り者め」
演技は止めて怒りの含んだ声を出して男を睨みつけると、怯んだようで後ろに下がった。
「な、なにをしている! さっさと殺せ!」
極小汚染獣が腕を前に出した。ドロドロになっている指っぽい肉の塊が飛んでくる。
横に飛んで避けると二段ベッドに当たり、木のフレーム部分が腐り落ちた。
肉には腐食効果があるみたいだ。
ベラトリックスは『シールド』の魔法を使って前面に防御魔法を展開しているので大丈夫だろうが、倒れている兵士たちは無防備である。
弱いながらも光属性を付与しているので程度は即死しないだろうが、直撃させない方が良い。
兵から離れるように移動していると極小の汚染獣が走り出した。
動きは鈍い。両腕を広げて抱きしめようとしてきたので横に飛ぶとベッドに衝突して溶かしてしまう。驚くことに溶けた一部を吸収して体が一回り大きくなった。
小型に進化しようとしている? それとも体積が増えただけか?
様子を見ていると腕を千切り、振り回してくる。肉片が周囲に飛び散って男の足下にも落ちた。
「俺を狙ってどうする! 敵を倒せ!」
言葉を理解している様子はない。腕を回し続けている。笛じゃなければ命令は受け付けないか。
戦闘からしばらくたっても増援が来る様子はない。鉱夫も同じである。これ以上、時間を稼ぐ意味はなさそうだ。
「そろそろいいか」
光属性の魔力を放出して室内を満たすと瘴気は吹き飛んだ。極小の汚染獣が苦しみ、体の形が崩れて蒸発いく。戦うまでもなく消滅するだろう。
「何が起こった!?」
切り札が負けて怯えている男は小刻みに震えていた。
絶対優位で勝てると思っていたのだ。ピンチになるなんて想像してなかったらしく戦う気力すら無いように見えた。
「さぁな。汚染獣に聞いてみたら……お、消えたか。残念。相手がいなくなったようだ」
蒸発して消えた場所を見ているが、メルベルのように復活するような兆候は見られない。
普通の汚染獣だったか。見た目通り、極小のカテゴリに入る雑魚だったわけである。
「お前には聞きたいことがある。抵抗しないのであれば命は取らない」
「くそッ……」
一歩近づくと男は後ろに下がりながら剣を俺に向けてきた。
「負けるとわかっているのに戦うつもりか?」
「お前の言葉は信じられんッ!」
追い詰めすぎてしまったのか、徹底抗戦を選ばれてしまった。
楽はさせてもらえないらしい。仕方がないので魔法で拘束しよう。
『アースバインド』
男の足下から土で作られた紐が出現して絡みつく。俺に注目していたため避けることはできない。先に腕を取られたので剣で切り裂けず、見事に捕まってしまった。
追い詰められた人間は視野が狭くなるので簡単に捕らえられたぞ。これで汚染獣を操る方法が……。
「アガガガ……ゴフッ」
男の口から大量の血とともに、溶けかけた肉の塊が吐き出された。瘴気を放っていて極小の汚染獣だとわかる。人間の体内に隠れて浄化されずに残っていやがったのか。
踏みつけるのと同時に光属性の魔力を注ぎ込んで消して男を見る。目の焦点はあっていない。首を触って脈を確かめるが止まっていた。
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