勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~

わんた

文字の大きさ
上 下
74 / 106

俺が間違っていた

しおりを挟む
 領主代理として裁判を行い、領民に対して不当な暴力を振るっていた兵を見せしめとして鞭打ちにして牢へぶち込むことで、使用人たちの緊張感が良い意味で高まった。

 今までは舐められていたのだが、畏れるようになったのだ。

 好き勝手すれば次は自分の番だ。

 そう思ったら気軽に不正なんてできない。

 また給金を増やしたことによって領内で最も美味しい仕事と受け取られるようになり、リスクに対してリターンが見合わなくなっている。小銭を稼げても職を失ったら意味がないというのが、使用人たちの共通見解だ。例外はメイド長のイレーゼぐらいだろう。

 飴と鞭の両方を使い内部の引き締めは充分である。

 減った分の人材を補充しているので新しい血も入っているから、今までとは違う空気になった。

 結局の所、人というのは他人の影響を受けやすい。トップが変われば職場の雰囲気、文化というのも変わるものなのだ。

 ヴォルデンク男爵が目覚めたら元に戻ってしまうかもしれないが、あと数ヶ月もしたら衰弱死するだろうから、その心配もなかった。

 * * *

 アイラの護衛は合流したヴァリィとベラトリックスに任せて、休暇をもらった俺は町を歩き回っている。見学ついでに巡回しているのだ。

 丁寧に見て回っているがバドロフ子爵が仕掛けている様子はなく、特に変化はない。兵士の横暴もなくなったので平和そのものだ。

 果物を買うついでに領地の評判を聞いてみたがアイラは高く評価されている。直接言われることはなかったが、男爵はこのまま死んでもらって正式に領地を受け継いで欲しい。これが領民の総意である。使用人たちも同様だろう。

 適当にご飯を食べて店を出ると周囲は暗くなっていた。

 今日は一日、調査をすると決めているのでまだ屋敷には戻らない。裏路地に入って人気の少ない場所まで行くと、薄着の女性が立っているエリアに来た。

 一部では花街と呼ばれている。

 女性に声をかけて料金交渉してから、いかがわしいことができるのだ。物陰に隠れてヤる場合もあれば宿にお持ち帰りすることもある。交渉した男次第で場所は変わる夢のような場所だった。

「三枚でどうだ?」
「五枚。それ以下は認めない」
「わかった。それでいい」

 交渉がまとまったのか近くにいた女性が男を連れて建物の裏に行った。

 しばらくして喘ぎ声が聞こえてくる。

 甘く、とろけるような声が耳から入って脳を刺激して期待に胸が高まる。

 いくか。

 町の様子を確認するついでに卒業するだけだ。何の問題はない。

 道をゆっくりと歩き、端っこに立っている女性たちを見た。

 上は胸をタオルで巻いただけの姿だ。下は短いスカート。普通は、はしたないと言われて眉をひそめる格好ではあるが、この場では正しい装いである。香水をたっぷり付けているので甘い香りが鼻孔、そして下半身や本能をくすぐってくる。俺の息子は自然とヤル気をだしていた。

 ついに女遊びの第一歩が踏み出せるのだ。

 ワクワクしてきた。

 通路を三往復して、可愛らしい赤く短い髪をした女性に近づいて声をかけようとする。

「ごめん。私ちょっと無理」

 交渉前に断られてしまった。愛想笑いすらしてくれない。逃げるようにして去って行く。

 娼館のお姉さんたちに冷たくされたことを思い出してしまった。

 俺ってそんな変な顔しているか?

 悪くはないと思うんだけど。

 身なりも清潔にしているし、近くに居る男には絶対負けていない。その自信はある。

 交渉前だったんだから金払いは関係ないだろう。

 逃げられてしまった原因がまったくわからず。困惑してしまうが、悩んでいても仕方がない。次に行くまでだ。

「よし、頑張るぞ」
「何を頑張るんですか?」

 この場にいないはずの声が聞こえた。

 外れててくれと願いながら後ろを向く。ニコニコしているトエーリエがいた。

 木の杖を持っていて、強く握りしめている。

 汚染獣だって逃げ出すほどの迫力を感じた。

「いや、これはだな……違うんだ」
「何が違うんですか?」

 一歩前に踏み込んできた。

 距離が近い。

「その……町の巡回で……」
「で、三周したと」

 最初から見てたのかッ!!

 女性に声をかけたところも知っているだろう。

 汗がダラダラと流れ出ていくる。

 婚姻前に性的な関係を持つことに嫌悪感を持っているトエーリエは、こういった類いの話には厳しい。

「今はどんなときか分かっているんですか? いつ攻撃が来るか分からないので、遊んでいる暇なんてありません。油断したら守りたい者も守れないんですよ」

 正論を叩きつけられて何も言えない。

 不正問題が解決して気が緩んでいたのは間違いないのだから。女遊びするならアイラの問題が片付いた後にするべきだろう。

「すまない。俺が間違っていた」
「良いんです。謝らないでください」

 先ほどから感じていた強いプレッシャーが霧散した。トエーリエは俺と腕を組むと、引っ張っていく。

「一緒に町を巡回しましょう」

 恋人っぽく見せれば自然に巡回できるか。

 夜の方が危ないので歩き回る意味はあるだろう。

「トエーリエお嬢様に提案されたら断れません。一緒に見て回りましょう」
「ふふ。こういうのも良いですね」

 久々に貴族の令嬢っぽい扱いをしたら喜んでくれた。

 周囲にいる男から恨むような目で見られながら、夜の巡回をしてから屋敷へ戻ることにした。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...