46 / 106
第46話 簡単に約束するじゃないか。本当に守れるのか?
しおりを挟む
「であれば、別の人間に任せれば良い」
「フラれちゃったわね。光教会を襲って適任者を探そうかしら。見つかるまで何人殺せば良いのか、今から楽しみだわ」
王都ではなく光教会を襲うと言い放った。
結局やること変わらないじゃないか!
汚染獣にとって人類なんてゴミ同然という扱いなのかもしれない。
「……それは許さない」
「だったら依頼を受けてくれるかしら?」
「依頼と言ったな。だったら、報酬はあるんだろうな」
「へぇ、そうくるのね。面白いわ」
別に金や物が欲しいから言ったわけではない。
奴隷のように一方的に使われる関係ではない、対等であると意思表明するために言ったのだ。
「うーん。そうねぇ……報酬なんて考えたことはなかったわ。何があったら嬉しいの?」
「汚染獣が二度と樹海から出ないようにして欲しい」
本当は撲滅なのだが、俺の代で達成するのは不可能だ。そのぐらいは分かる。
だが被害を減らすことなら可能だろう。
特にセレーヌが縄張りを拡大して樹海の大半を支配できるようになれば、実現性はグッと上がる。
「良いわよ」
「簡単に約束するじゃないか。本当に守れるのか?」
「もちろん。私たちは本来、住み心地の良い樹海から出たくないのよ。それでも仕方なく外に出なきゃ行けないときがある。なぜだか分かるかしら?」
「セレーヌみたいに他の汚染獣から追い出されるからだろ」
ピクッと眉が僅かに上がったのを見逃さなかった。
俺が言ったことはプライドを傷つけたのだろう。ということは、事実と受け取って良さそうだ。
「正解。生存競争に負けて樹海に居場所がなくなると外に出るのよ」
ということは樹海にいる汚染獣は相当強いことになる。
厳しい戦いになりそうだ。
「でも、一つだけポルンは間違っている。私は争いに負けて樹海に出たわけじゃないの。相性が悪いと気づいて一時撤退しただけよ」
それを世間では負けというのではないのだろうか? と言ったら、生きているから勝負は付いてないとか言いそうだな。
撤退した先で勇者に封印されたクセにプライドだけは大きい。
「で、俺を使って最終的に勝つ計画なんだろ」
「そのとおりよ」
「だったら依頼達成の見返り、汚染獣を外部に出さない約束は守れるよな?」
「そうねぇ……外に出さないとまでは約束できないけど、逃げ出した汚染獣を私たちの手で殺すことはできるわ。それで良いかしら?」
「被害が出る前に倒すと約束してくれ」
「できる限り頑張るわ」
「それじゃ交渉決裂だな」
近くにいる四人へ声をかける。
「誰か俺を担いでくれないか。王都を出よう」
まともに話せるようになったが体は動かせない。運んでもらう必要があったので頼むと、ベラトリックスが駆けつけると俺を抱きかかえてくれた。
胸が当たる。柔らかい。良い匂いもするし、幸せだ。
「ね、ねぇ、本当に帰るつもり? もう少し話しても良いじゃないかしら?」
先ほどとは変わって余裕のなさそうな態度だ。
思った通りの反応だ。セレーヌの目的を達成するためには光属性に適性があるだけじゃ足りない。大型の汚染獣と対等以上に戦える実力が無ければ行けない。
そんな存在、世界中を探しても数人いれば良い方だ。実際に倒せた人に限定するなら俺ぐらいだろう。
別を探すと強気で言っていたが、適任者が見つかる可能性は非常に低い。また正体を現したことで情報は広まってしまうので、探している間に封印される可能性だってある。
情報が出そろった今、今回の交渉はセレーヌだって完全に優位というわけじゃないのだ。
「依頼達成の報酬すら約束できない相手と話すことはない」
大型の汚染獣相手に一歩も譲らない態度を取ると、俺を抱きしめているベラトリックスの鼻息が荒くなった。口が耳元に近づいて「素敵です」なんて熱っぽい声で言ってくる。
抱きしめられている状態でそんなことを言われたら下半身が元気になろうとしたが、少し離れた場所でトエーリエが無表情で俺を見ていることに気づき、興奮は急降下していった。
すごい恐怖を感じたが、交渉の最中だったので助かったぞ! そう思うことにした。
「わかった。わかったわ! 樹海の大半を支配できたら、外に出る汚染獣を出さないと誓う」
「その誓いにどれほどの価値がある? 依頼を達成した瞬間に裏切るなんて人類ではよくあることだ。信じられん」
「だったら契約の魔法を使えば良いじゃない」
後で切り出そうと思っていたが、相手から提案してくるとは都合が良い。
裏切りに着いての心配は【契約】の魔法を使えば解決する。契約条件が書かれた羊皮紙を体内に取り込むことで、お互いの言動を縛れるのだ。
もし条件を破ろうとしたら耐え難い痛みが続く仕組みとなっている。契約成立するとお互いの名前もわかるため、初対面で重要な取引をするときによく使われる魔法だった。
「いいだろう。だが、契約書の作成に時間がかかる。この場ではできない」
「では一週間後、例の洞窟で会いましょう」
「わかった」
「待っているわね」
セレーヌは跳躍すると屋根の上に乗り、そのままどこかへ行ってしまった。
王都の危機は去った。
「ポルン様、本当に契約するんですか?」
抱きかかえてくれているベラトリックスが聞いてきた。
集まってきている三人も同じ疑問を持っていそうだな。
「すぐにじゃないが、そのうちなら受けても良いと考えている」
自由になったのだから数年は女遊びをするつもりだ。満足したらセレーヌの話を受けても良い。
だから、こちらが用意する契約書には期限といった具体的なことは書かないつもりである。
気づかなければよし、もし文句を言ってくるなら封印して黙らせてやるさ。
「フラれちゃったわね。光教会を襲って適任者を探そうかしら。見つかるまで何人殺せば良いのか、今から楽しみだわ」
王都ではなく光教会を襲うと言い放った。
結局やること変わらないじゃないか!
汚染獣にとって人類なんてゴミ同然という扱いなのかもしれない。
「……それは許さない」
「だったら依頼を受けてくれるかしら?」
「依頼と言ったな。だったら、報酬はあるんだろうな」
「へぇ、そうくるのね。面白いわ」
別に金や物が欲しいから言ったわけではない。
奴隷のように一方的に使われる関係ではない、対等であると意思表明するために言ったのだ。
「うーん。そうねぇ……報酬なんて考えたことはなかったわ。何があったら嬉しいの?」
「汚染獣が二度と樹海から出ないようにして欲しい」
本当は撲滅なのだが、俺の代で達成するのは不可能だ。そのぐらいは分かる。
だが被害を減らすことなら可能だろう。
特にセレーヌが縄張りを拡大して樹海の大半を支配できるようになれば、実現性はグッと上がる。
「良いわよ」
「簡単に約束するじゃないか。本当に守れるのか?」
「もちろん。私たちは本来、住み心地の良い樹海から出たくないのよ。それでも仕方なく外に出なきゃ行けないときがある。なぜだか分かるかしら?」
「セレーヌみたいに他の汚染獣から追い出されるからだろ」
ピクッと眉が僅かに上がったのを見逃さなかった。
俺が言ったことはプライドを傷つけたのだろう。ということは、事実と受け取って良さそうだ。
「正解。生存競争に負けて樹海に居場所がなくなると外に出るのよ」
ということは樹海にいる汚染獣は相当強いことになる。
厳しい戦いになりそうだ。
「でも、一つだけポルンは間違っている。私は争いに負けて樹海に出たわけじゃないの。相性が悪いと気づいて一時撤退しただけよ」
それを世間では負けというのではないのだろうか? と言ったら、生きているから勝負は付いてないとか言いそうだな。
撤退した先で勇者に封印されたクセにプライドだけは大きい。
「で、俺を使って最終的に勝つ計画なんだろ」
「そのとおりよ」
「だったら依頼達成の見返り、汚染獣を外部に出さない約束は守れるよな?」
「そうねぇ……外に出さないとまでは約束できないけど、逃げ出した汚染獣を私たちの手で殺すことはできるわ。それで良いかしら?」
「被害が出る前に倒すと約束してくれ」
「できる限り頑張るわ」
「それじゃ交渉決裂だな」
近くにいる四人へ声をかける。
「誰か俺を担いでくれないか。王都を出よう」
まともに話せるようになったが体は動かせない。運んでもらう必要があったので頼むと、ベラトリックスが駆けつけると俺を抱きかかえてくれた。
胸が当たる。柔らかい。良い匂いもするし、幸せだ。
「ね、ねぇ、本当に帰るつもり? もう少し話しても良いじゃないかしら?」
先ほどとは変わって余裕のなさそうな態度だ。
思った通りの反応だ。セレーヌの目的を達成するためには光属性に適性があるだけじゃ足りない。大型の汚染獣と対等以上に戦える実力が無ければ行けない。
そんな存在、世界中を探しても数人いれば良い方だ。実際に倒せた人に限定するなら俺ぐらいだろう。
別を探すと強気で言っていたが、適任者が見つかる可能性は非常に低い。また正体を現したことで情報は広まってしまうので、探している間に封印される可能性だってある。
情報が出そろった今、今回の交渉はセレーヌだって完全に優位というわけじゃないのだ。
「依頼達成の報酬すら約束できない相手と話すことはない」
大型の汚染獣相手に一歩も譲らない態度を取ると、俺を抱きしめているベラトリックスの鼻息が荒くなった。口が耳元に近づいて「素敵です」なんて熱っぽい声で言ってくる。
抱きしめられている状態でそんなことを言われたら下半身が元気になろうとしたが、少し離れた場所でトエーリエが無表情で俺を見ていることに気づき、興奮は急降下していった。
すごい恐怖を感じたが、交渉の最中だったので助かったぞ! そう思うことにした。
「わかった。わかったわ! 樹海の大半を支配できたら、外に出る汚染獣を出さないと誓う」
「その誓いにどれほどの価値がある? 依頼を達成した瞬間に裏切るなんて人類ではよくあることだ。信じられん」
「だったら契約の魔法を使えば良いじゃない」
後で切り出そうと思っていたが、相手から提案してくるとは都合が良い。
裏切りに着いての心配は【契約】の魔法を使えば解決する。契約条件が書かれた羊皮紙を体内に取り込むことで、お互いの言動を縛れるのだ。
もし条件を破ろうとしたら耐え難い痛みが続く仕組みとなっている。契約成立するとお互いの名前もわかるため、初対面で重要な取引をするときによく使われる魔法だった。
「いいだろう。だが、契約書の作成に時間がかかる。この場ではできない」
「では一週間後、例の洞窟で会いましょう」
「わかった」
「待っているわね」
セレーヌは跳躍すると屋根の上に乗り、そのままどこかへ行ってしまった。
王都の危機は去った。
「ポルン様、本当に契約するんですか?」
抱きかかえてくれているベラトリックスが聞いてきた。
集まってきている三人も同じ疑問を持っていそうだな。
「すぐにじゃないが、そのうちなら受けても良いと考えている」
自由になったのだから数年は女遊びをするつもりだ。満足したらセレーヌの話を受けても良い。
だから、こちらが用意する契約書には期限といった具体的なことは書かないつもりである。
気づかなければよし、もし文句を言ってくるなら封印して黙らせてやるさ。
24
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる