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第41話 まあ、諦めるんだな
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王都襲撃の話を聞いて、すぐに荷物をまとめると馬車に乗り込んで移動を始めた。
馬に魔道具を付けているため早く移動できるらしく、数時間で到着すると聞いている。
俺が乗っている客車にはテレサしかいない。他の仲間は後ろの馬車だ。あそこにはメルベルもいるので意図的に分けたのだろう。
席の割り当てに俺は反対したかったのだが、汚染獣が暴れているので話し合いをしている時間はなく従ってしまった。
ちなみにドルンダや新勇者のプルドは王都の安全が確認できるまで村で待機しているらしい。
消えた大型が現れるかもしれないので、この選択に文句はない。
いくら光属性の適性が低いとはいえ、村人を逃すぐらいの時間稼ぎはできるだろう。そう願っている。
* * *
「汚染獣を倒した後は、どうされるのですか?」
窓から外を眺めながら景色を眺めているとテレサが聞いてきた。
「倒した褒美がもらえるだろうから、外国へ行く権利を手に入れて世界中を旅でもするさ」
世界には、まだ見ぬ美女が沢山いる。
一国にとどまっているなんてもったいない。
この国では娼館や未亡人と遊ぶのは失敗してしまったが、別の場所に行けば仲良くなる機会なんて山のようにあるのだ。
目の前にいるテレサは手を出したらドロドロしそうな気配があるので見送り予定である。
欲するなら自ら勝ち取りに行く。これが元勇者の生き方なのだ!
「その旅に私も付いていって良いですか?」
真っ直ぐで真剣な目つきだ。冗談で言っているようには見えない。ドロっとした重く粘着質な感情を発している。
早速ではあるが勘は正しかったと、証明されたな。
仲間が増えれば旅の安全度は上がる。夜番だって楽になるだろうが、テレサを連れて歩いたら娼館で遊べない。全力で止めてくるはず。
計画が崩れてしまうので受け入れるわけにはいかなかった。
「悪いが俺は一人で旅をしたいんだ」
「ということは、パーティメンバーだった三人も連れて行かないのですか?」
「正確に言うと連れて行けない、だな。トエーリエとヴァリィはこの国の貴族だ。国中を回るなんてことは許されない立場なんだよ。ベラトリックスも能力の高さを認められ、王国のために働くことを条件として準男爵の身分を保障され、金をもらっている」
魔法に長けた人物を他国に流出させて、こちらに牙をむくリスクを考えれば、囲い込むのために動くのが普通だ。どこの国でもやっている。
少なくとも当時のドルンダは愚か者じゃなかったので、敵対しないよう地位と金を渡す契約が交わされたのだ。
「そうですか……」
俺の意思が固いとわかり、テレサはしゅんとして下を向いてしまった。
罪悪感を覚えてしまうほどの弱々しさを見せられてしまったが意見は変わらない。
「まあ、諦めるんだな」
返事はなかった。
何か考え込んでいるようにも見えるが、優しくしてしまえば期待するかもしれない。ここはあえて冷たくするのがよい。
無視して再び窓を見る。
王都の外壁が見えた。
破壊されるようなことはなく無傷だ。
外周には避難した人たちの姿も見えるので、想像していたより被害は出てなさそうである。
中心部からは煙が上がっていて、さらには瘴気で作られた雲のようなものがある。
あそこじゃ生物はまともに活動できない。数日、へたしたら数時間で全身が汚染されて死ぬだろう。
早く助けに行かなければ。
体力を温存するために我慢していたが、ここまでくれば後は走った方が早い。
「ちょっと行ってくる。援護は四人に任せた」
ドアを開けると、魔力で体を強化してから飛び降りる。
ゴロゴロと地面を転がりながらも立ち上がって全力で走ると、すぐに馬車を追い越していく。
外壁近くまでくると避難している人たちが猛スピード進む俺を見る。
そして、拝んだ。
王都を拠点にして活動していたので顔見知りが多く、何をしに来たのか分かったのだろう。
群衆の中に宿の親父がいたので親指を自分に向けて任せろと伝えたら、にかっと笑ってから声援をくれた。
隣には娼館から逃げてきた黒服と娼婦たちがいたのでウィンクをしたのだが、こちらは無視されてしまう。どうして俺は娼婦たちに縁がないんだ。誰か教えてくれ……。
切ない気持ちを抱えながら外壁の門の前に来る。
「ご武運をッ!」
門番たちは敬礼して端に寄っている。素通りさせてくれるようだ。
「まかせろ!」
ウィンクをしてみたら、門番の男どもは声を上げて野太い声援をくれる。
やっぱり娼婦、いや女性にだけ無視されているかもしれない。クソ。この怒り、汚染獣にぶつけてやる。
門を通り抜けて王都へ入った。
街道には誰もいないが、王都から出ず建物に隠れている人たちも結構いるようだ。
窓から俺を見ている姿がいくつも見える。
路地裏から、このまえ花をあげた少女の姿もあって手を振ってくれていた。
単純な性格だと言われるが、俺はこれだけで戦意が高まっていく。
勇者をクビになったとしても、汚染獣と最前線で戦う人類の希望でなければいけない。
それが俺の生き方なのだ。もちろん、合間で女遊びはするするけどなッ!
さらに走り続けると平民街と貴族街を隔てる壁が見えてきた。門は開きっぱなしだ。警備の兵もいない。
瘴気が漏れ出していて周囲の空気は黒くなっている。
光属性の魔力を放出しながらスピードを落とさずに貴族街へと突入すると、周囲の調査を始める。
道に止まっている馬車の中を覗くと貴族の令嬢と思われる人が数人倒れていた。まだ肌は変色していない。これなら汚染獣を倒した後でも問題なさそうだ。
建物の近くで倒れているメイドも見つけたが、多少肌が黒く変色しているものの即座に手当が必要な状況ではない。
汚染獣から離れているので助かったのだろう。中心部にいけば、こうはいかないはずだ。
馬に魔道具を付けているため早く移動できるらしく、数時間で到着すると聞いている。
俺が乗っている客車にはテレサしかいない。他の仲間は後ろの馬車だ。あそこにはメルベルもいるので意図的に分けたのだろう。
席の割り当てに俺は反対したかったのだが、汚染獣が暴れているので話し合いをしている時間はなく従ってしまった。
ちなみにドルンダや新勇者のプルドは王都の安全が確認できるまで村で待機しているらしい。
消えた大型が現れるかもしれないので、この選択に文句はない。
いくら光属性の適性が低いとはいえ、村人を逃すぐらいの時間稼ぎはできるだろう。そう願っている。
* * *
「汚染獣を倒した後は、どうされるのですか?」
窓から外を眺めながら景色を眺めているとテレサが聞いてきた。
「倒した褒美がもらえるだろうから、外国へ行く権利を手に入れて世界中を旅でもするさ」
世界には、まだ見ぬ美女が沢山いる。
一国にとどまっているなんてもったいない。
この国では娼館や未亡人と遊ぶのは失敗してしまったが、別の場所に行けば仲良くなる機会なんて山のようにあるのだ。
目の前にいるテレサは手を出したらドロドロしそうな気配があるので見送り予定である。
欲するなら自ら勝ち取りに行く。これが元勇者の生き方なのだ!
「その旅に私も付いていって良いですか?」
真っ直ぐで真剣な目つきだ。冗談で言っているようには見えない。ドロっとした重く粘着質な感情を発している。
早速ではあるが勘は正しかったと、証明されたな。
仲間が増えれば旅の安全度は上がる。夜番だって楽になるだろうが、テレサを連れて歩いたら娼館で遊べない。全力で止めてくるはず。
計画が崩れてしまうので受け入れるわけにはいかなかった。
「悪いが俺は一人で旅をしたいんだ」
「ということは、パーティメンバーだった三人も連れて行かないのですか?」
「正確に言うと連れて行けない、だな。トエーリエとヴァリィはこの国の貴族だ。国中を回るなんてことは許されない立場なんだよ。ベラトリックスも能力の高さを認められ、王国のために働くことを条件として準男爵の身分を保障され、金をもらっている」
魔法に長けた人物を他国に流出させて、こちらに牙をむくリスクを考えれば、囲い込むのために動くのが普通だ。どこの国でもやっている。
少なくとも当時のドルンダは愚か者じゃなかったので、敵対しないよう地位と金を渡す契約が交わされたのだ。
「そうですか……」
俺の意思が固いとわかり、テレサはしゅんとして下を向いてしまった。
罪悪感を覚えてしまうほどの弱々しさを見せられてしまったが意見は変わらない。
「まあ、諦めるんだな」
返事はなかった。
何か考え込んでいるようにも見えるが、優しくしてしまえば期待するかもしれない。ここはあえて冷たくするのがよい。
無視して再び窓を見る。
王都の外壁が見えた。
破壊されるようなことはなく無傷だ。
外周には避難した人たちの姿も見えるので、想像していたより被害は出てなさそうである。
中心部からは煙が上がっていて、さらには瘴気で作られた雲のようなものがある。
あそこじゃ生物はまともに活動できない。数日、へたしたら数時間で全身が汚染されて死ぬだろう。
早く助けに行かなければ。
体力を温存するために我慢していたが、ここまでくれば後は走った方が早い。
「ちょっと行ってくる。援護は四人に任せた」
ドアを開けると、魔力で体を強化してから飛び降りる。
ゴロゴロと地面を転がりながらも立ち上がって全力で走ると、すぐに馬車を追い越していく。
外壁近くまでくると避難している人たちが猛スピード進む俺を見る。
そして、拝んだ。
王都を拠点にして活動していたので顔見知りが多く、何をしに来たのか分かったのだろう。
群衆の中に宿の親父がいたので親指を自分に向けて任せろと伝えたら、にかっと笑ってから声援をくれた。
隣には娼館から逃げてきた黒服と娼婦たちがいたのでウィンクをしたのだが、こちらは無視されてしまう。どうして俺は娼婦たちに縁がないんだ。誰か教えてくれ……。
切ない気持ちを抱えながら外壁の門の前に来る。
「ご武運をッ!」
門番たちは敬礼して端に寄っている。素通りさせてくれるようだ。
「まかせろ!」
ウィンクをしてみたら、門番の男どもは声を上げて野太い声援をくれる。
やっぱり娼婦、いや女性にだけ無視されているかもしれない。クソ。この怒り、汚染獣にぶつけてやる。
門を通り抜けて王都へ入った。
街道には誰もいないが、王都から出ず建物に隠れている人たちも結構いるようだ。
窓から俺を見ている姿がいくつも見える。
路地裏から、このまえ花をあげた少女の姿もあって手を振ってくれていた。
単純な性格だと言われるが、俺はこれだけで戦意が高まっていく。
勇者をクビになったとしても、汚染獣と最前線で戦う人類の希望でなければいけない。
それが俺の生き方なのだ。もちろん、合間で女遊びはするするけどなッ!
さらに走り続けると平民街と貴族街を隔てる壁が見えてきた。門は開きっぱなしだ。警備の兵もいない。
瘴気が漏れ出していて周囲の空気は黒くなっている。
光属性の魔力を放出しながらスピードを落とさずに貴族街へと突入すると、周囲の調査を始める。
道に止まっている馬車の中を覗くと貴族の令嬢と思われる人が数人倒れていた。まだ肌は変色していない。これなら汚染獣を倒した後でも問題なさそうだ。
建物の近くで倒れているメイドも見つけたが、多少肌が黒く変色しているものの即座に手当が必要な状況ではない。
汚染獣から離れているので助かったのだろう。中心部にいけば、こうはいかないはずだ。
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