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第12話 消えろッッッッ!!
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汚染獣との距離を半分ほど詰めると数十ある触手が集結して並ぶとドクドクと脈打つようになる。
何をするのか知りたい。
攻撃される前に斬り落とすこともできたが、今回は討伐ではなく調査を優先している。腰を落として槍を構え、待ち構えることにした。
触手の先端部分が急速に膨れ上がると、大量の黒い液体が放たれた。もうこれは壁だ。数メートルの壁が迫ってきている。
周辺の瘴気はさらに濃くなり汚染がさらに広がっていく。倒した後のケアも必要となるだろう。
「はぁぁぁあああッッ!」
声を出しながら槍に強めの光属性の魔力を注ぐと光り出した。
僅かではあるが、触手の動きが鈍る。苦手な属性を前にして怯えているのだ。
黒い壁が目の前に来るのと同時に槍を突き刺す。
鉄よりも固い。僅かに刺さっただけで止まってしまう。押し返すなんてできずつぶされそうになるが、俺の攻撃はこれでは終わらない。
槍に溜めていた光属性の魔力を穂先から放出するッ!
「――――!!」
知能が存在しないはずの触手から驚きの声が聞こえたように感じた。
穂先で僅かにひび割れた箇所から黒い壁の内部に入り込み、光属性の魔力が全体に広がる。
ピシッ。
亀裂が走った。割れ目から光が漏れ出す。
黒い壁が脆くなった。
槍を前に押し貫通させると、勢いよく飛んで触手の先端に突き刺さった。
これだけでは倒せない。止めを刺すべく崩壊中の黒い壁を通り抜けて触手に近づく。
数十もの触手を鞭のように使って俺を狙ってきた。
体に当たりそうなものだけ回避すると触手は地面を叩く。ひび割れるほどの威力を秘めていた。当たり所が悪ければ即死だな。
一般兵や騎士なら為す術もなく倒されていただろうが、だが俺は違う。元とはいえ勇者として長年活動してきたのだ。パーティメンバー内では最弱だったが、それでも汚染獣の一部ぐらいなら一人でも勝てる。
五つもの触手が同時に狙ってきた。
回避する隙はない。
「消えろッッッッ!!」
光属性をたっぷりまとわせた右腕を横に振ると光の刃が飛ぶ。迫ってきた五本の触手を斬り落とし、勢いは衰えず上空へ消えていった。
相手が普通の動物や魔物であれば体に当たって終わるのだが、相手が汚染獣であればこれほどの威力を発揮する。
光属性とは浄化に特化した属性だ。
だからこそ、対汚染獣にのみ最大の攻撃と防御ができるのだった。
「斬り落とされた触手は黒くなってすぐに消える……と」
元が小型の汚染獣のものだとしたら一般的な結果である。不審な点はない。
大型はもうこの場から離れたのか? それともどこかで様子をうかがっているのか?
周囲を観察していたら、今度は十本の触手が俺を叩き潰そうとして迫ってくる。
両腕に光属性の魔力をまとわせてから、また光の刃を放つ。抵抗なくすぱっと斬れると触手はボトボトと地面に落ちた。
さらに続けて何度か腕を振るってすべての触手を切断し、残ったのは大本だけになる。気持ち悪くウネウネ動きながら、切断面から黒い液体をぴゅぴゅっと出している。攻撃部位を失ったので何もできない。
全身に薄く光属性の魔力をまとわせてから、根元を引き抜く。
地面に深い根があると思っていたのだが、なんと置かれているだけだったようだ。あっさり持ち上がってしまう。
根元の方を見ると切断面はグチャグチャになっていた。刃物ではなく強引に引き抜いたような、そんな感じだ。もし汚染獣が自らの意思で分離させたのであれば、切断面はもっと綺麗であることが多い。
小型とはいえ誰かが汚染獣と戦って肉体の一部を奪った。
そう考えるのが自然だろう。すると「なぜ」と「誰」の部分が気になってくる。
情報が足らなさすぎるので理由は何も思い浮かばず、今は後回しにするしかない。
犯人について精度はともかく推測可能だ。怪力自慢のトエーリエですら不可能な芸当であるため人間は除外される。
魔物や怪力自慢のドワーフ辺りなら可能だろうが、瘴気に耐えながら全力を出すなんてことは、さすがにできないはず。すると、俺や新勇者以外の光属性持ちのサポートがあった、と考えるのが自然だ。
だが周辺国も含めて近隣にいる光属性持ちは俺と新勇者しかいない。
遠路はるばるやってきた、ということになるのだが……。
「あり得ない」
首を横に振って非現実的な考えを否定した。
樹海から出てくる汚染獣対策のために光属性持ちは分散させなければならず、狭い地域に光属性持ちが三人もいるなんて話、聞いたことがない。
新勇者のように隠された光属性持ちがいる……可能性は考えにくい。親から子に遺伝する物でもないので狙って生み出せるものではなく、一国に三人も生まれるなんてことは、奇跡が起こらない限り実現しない。
想像したくはないが、大型の汚染獣が手を下したという結論が一番しっくりくる。
光属性の魔力を手に持つ触手の根元に注ぎ込んで消滅させた。
考えるのはやめだ。
後で情報を羊皮紙にまとめて、ベラトリックス経由で新勇者に情報を渡そう。
後は勝手にやってくれるはず。
俺は解決するまでこっそりと見守っていれば良いのだ。
何をするのか知りたい。
攻撃される前に斬り落とすこともできたが、今回は討伐ではなく調査を優先している。腰を落として槍を構え、待ち構えることにした。
触手の先端部分が急速に膨れ上がると、大量の黒い液体が放たれた。もうこれは壁だ。数メートルの壁が迫ってきている。
周辺の瘴気はさらに濃くなり汚染がさらに広がっていく。倒した後のケアも必要となるだろう。
「はぁぁぁあああッッ!」
声を出しながら槍に強めの光属性の魔力を注ぐと光り出した。
僅かではあるが、触手の動きが鈍る。苦手な属性を前にして怯えているのだ。
黒い壁が目の前に来るのと同時に槍を突き刺す。
鉄よりも固い。僅かに刺さっただけで止まってしまう。押し返すなんてできずつぶされそうになるが、俺の攻撃はこれでは終わらない。
槍に溜めていた光属性の魔力を穂先から放出するッ!
「――――!!」
知能が存在しないはずの触手から驚きの声が聞こえたように感じた。
穂先で僅かにひび割れた箇所から黒い壁の内部に入り込み、光属性の魔力が全体に広がる。
ピシッ。
亀裂が走った。割れ目から光が漏れ出す。
黒い壁が脆くなった。
槍を前に押し貫通させると、勢いよく飛んで触手の先端に突き刺さった。
これだけでは倒せない。止めを刺すべく崩壊中の黒い壁を通り抜けて触手に近づく。
数十もの触手を鞭のように使って俺を狙ってきた。
体に当たりそうなものだけ回避すると触手は地面を叩く。ひび割れるほどの威力を秘めていた。当たり所が悪ければ即死だな。
一般兵や騎士なら為す術もなく倒されていただろうが、だが俺は違う。元とはいえ勇者として長年活動してきたのだ。パーティメンバー内では最弱だったが、それでも汚染獣の一部ぐらいなら一人でも勝てる。
五つもの触手が同時に狙ってきた。
回避する隙はない。
「消えろッッッッ!!」
光属性をたっぷりまとわせた右腕を横に振ると光の刃が飛ぶ。迫ってきた五本の触手を斬り落とし、勢いは衰えず上空へ消えていった。
相手が普通の動物や魔物であれば体に当たって終わるのだが、相手が汚染獣であればこれほどの威力を発揮する。
光属性とは浄化に特化した属性だ。
だからこそ、対汚染獣にのみ最大の攻撃と防御ができるのだった。
「斬り落とされた触手は黒くなってすぐに消える……と」
元が小型の汚染獣のものだとしたら一般的な結果である。不審な点はない。
大型はもうこの場から離れたのか? それともどこかで様子をうかがっているのか?
周囲を観察していたら、今度は十本の触手が俺を叩き潰そうとして迫ってくる。
両腕に光属性の魔力をまとわせてから、また光の刃を放つ。抵抗なくすぱっと斬れると触手はボトボトと地面に落ちた。
さらに続けて何度か腕を振るってすべての触手を切断し、残ったのは大本だけになる。気持ち悪くウネウネ動きながら、切断面から黒い液体をぴゅぴゅっと出している。攻撃部位を失ったので何もできない。
全身に薄く光属性の魔力をまとわせてから、根元を引き抜く。
地面に深い根があると思っていたのだが、なんと置かれているだけだったようだ。あっさり持ち上がってしまう。
根元の方を見ると切断面はグチャグチャになっていた。刃物ではなく強引に引き抜いたような、そんな感じだ。もし汚染獣が自らの意思で分離させたのであれば、切断面はもっと綺麗であることが多い。
小型とはいえ誰かが汚染獣と戦って肉体の一部を奪った。
そう考えるのが自然だろう。すると「なぜ」と「誰」の部分が気になってくる。
情報が足らなさすぎるので理由は何も思い浮かばず、今は後回しにするしかない。
犯人について精度はともかく推測可能だ。怪力自慢のトエーリエですら不可能な芸当であるため人間は除外される。
魔物や怪力自慢のドワーフ辺りなら可能だろうが、瘴気に耐えながら全力を出すなんてことは、さすがにできないはず。すると、俺や新勇者以外の光属性持ちのサポートがあった、と考えるのが自然だ。
だが周辺国も含めて近隣にいる光属性持ちは俺と新勇者しかいない。
遠路はるばるやってきた、ということになるのだが……。
「あり得ない」
首を横に振って非現実的な考えを否定した。
樹海から出てくる汚染獣対策のために光属性持ちは分散させなければならず、狭い地域に光属性持ちが三人もいるなんて話、聞いたことがない。
新勇者のように隠された光属性持ちがいる……可能性は考えにくい。親から子に遺伝する物でもないので狙って生み出せるものではなく、一国に三人も生まれるなんてことは、奇跡が起こらない限り実現しない。
想像したくはないが、大型の汚染獣が手を下したという結論が一番しっくりくる。
光属性の魔力を手に持つ触手の根元に注ぎ込んで消滅させた。
考えるのはやめだ。
後で情報を羊皮紙にまとめて、ベラトリックス経由で新勇者に情報を渡そう。
後は勝手にやってくれるはず。
俺は解決するまでこっそりと見守っていれば良いのだ。
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