俺様ボスと私の恋物語

福山ともゑ

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(46)福山博人Side

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今夜は楽しみだな。
食後はあそこに行って、なにか飲んだりピアノを聞かせてもらったりしてもいいな。
抱いて明日の朝まで寝るのもいいな。
朝から、うきうきとしていた。


すると、救急が続けて3台来た。
この病院では、2人までが限度なんだけどな・・・
3人のうちの2人は、整形外科で予備のオペ室でも処置室でも十分に事足りるらしい。
が、残り1人は脳外科で来たみたいだ。
なるほど、だから3人ね。
ここら辺では、脳外科があるのはここだけだ。
整形なら手伝えるが、脳外のオペには立ち会ったことはない。
手伝えることはないかとオペ室に向かった。
オペ室に入ると、ベッドに目を向け患者の状況を診る。
そこまでは、私のいつもの習慣だ。
だから、スタッフ達は黙認してる。
でも、そこで目が止まってしまった。

え・・・!

動揺が隠せなかった。
思わず声に出ていた。
 「と・・・も・・・?」
違う、こいつは誰だと思いつつも…その服装には見覚えがあった。
今朝の出かけ間際に、友明が着てた服だ。
その笑顔と言葉に見送られて仕事に、病院に来たんだ。
 「行ってらっしゃい。夕方18時半ちょっと前に着くように行くから。」
という言葉に対して「それじゃ、あとで。」
そのやりとりが、耳の奥でリフレインした。

声が勝手に出ていた。
 「とも?
友明っ!友明、聞こえるか?
私の声が聞こえるか!」

 



手術後、右側側頭部を15針も縫って凹みもある。
顔も、少し欠けてしまった。
命に別状はない、と言ってるがどうなるかは分からない。
私は、何も言えずに院長室に入って祈っていた。
友明の弟の連絡先を知っていたので、連絡先として彼に電話を掛けるように指示をだした。

弟も来たらしく、入院手続きが終わったらしい。

友明のそばに付いていたいが、私は院長だ。
仕事を放っといて、入院患者に付いてることは出来ない。

午後のニュースで、この近くのスーパーが事故に遭った事を知った。
友明は、そこに買い物をしに行った時に事故に遭ったのか。
13時も過ぎて昼休みになった時に病室へ行ってみると、点滴チューブに繋がれた痛々しい姿の友明が寝かされていた。


今夜は、言おうと思ってたのに。
食後でも、マンションに移ってからでもいいから、と。
 「友明、お前が好きだ。
だから、お前を抱いたんだ。」
たった一言を言いたかったのに。
なんで、こんな目に?


その日の夜遅くに、父親が来た。
私は夜勤だったから、応対した。
すると、明日は母親が来るからと言って、友明の顔を見てすぐに帰って行った。

食事を食べる気もないが、サンドイッチを作って持って来てくれた栄養士に悪い。
喉に押し込み、飲み物で流し込んだ。


翌日。
私の気分とは違い、雪も降らず快晴だ。
友明の母親とも会って言葉を交わした。
とても可愛らしい女性で、友明の好きなタイプそのものだと思った。
なにしろ、友明は「女性とは胸がデカくて、背は低くてポッチャリとした可愛い人。」というのが理想らしいから。
やっぱりマザコンだったんだな、と思った。

病室で2人きりにして、私は仕事に戻った。
だけど、30分もしないうちに「脳外の患者さんが大変だ」というコールを貰った。
病室へ行くと、親は部屋から出されていて、医師や看護婦が忙しくしてる。
何事だと思い、声を掛けた。
 「院長、大変です。AED必要かもしれません。」
 「AED?どうしてAEDが・・・」
 「いきなり息が荒くなったみたいです。」
 「他は?」
 「それだけだそうです。」
 「心肺は?」
 「まだです。」
 「心肺を先にやる。AEDはいつでも使えるようにして。」
 「はい!」
上着を脱いで友明の傍に行く。
 「友明君、お母様が来てるよ。声を聞かせてあげて。」
と言いながら心肺の処置をしていく。
気道の確保をして、息を送る。
いわゆる人口呼吸だ。
でも、気管はなんともない。
 「布団を。」
 「はい!」
看護婦が布団を捲る。
 「寝間着を。」
 「はい!」
他の看護婦が寝間着の上部分を肌蹴させたので、胸部と腹部を触る。
 「AEDを。」 
 「はい!」
その時、何かを感じがした。
 「皆、部屋から出ろ!」
 「はい!」


ガチャン。
部屋のカギを掛けた。


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