俺様ボスと私の恋物語

福山ともゑ

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(44)福山友明Side

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時は流れ、卒業間近の2月には医師免許取得して、3月の卒業式も終えた。
ひろちゃんは、あの見合いをした日から月2回か3回ぐらいの割合でここに来てる。
何しに?
聞きたかったが、聞くのが怖い。
ここからだと、ひろちゃんの病院には徒歩圏内で行けるからな。
それが理由か?

大学も6年間だと少しは愛着がわく。
でも、執着ではない。
なので、学長からの「大学に残ってほしい」という言葉は、即答で断ったものだ。

ヨウイチは、父親の跡を継ぐために地元に帰る。
サトルは、系列病院に通いながら、得意のコンピューターでも仕事をするという二足のわらじ。
マサは、国家公務員の試験にパスしたから父親と同じ警察関係の仕事。
ユタカは、福岡に帰るのかな?
ユウマは、北海道に帰るらしい。
タカは、都内で病院勤務。
ジュンヤは、モデルを本業にして、バイトで医者。
カズキは、大学の付属病院に勤務。
ワンは、香港に戻る前に付属病院で5年ほど頑張るらしい。


私は、どうしよう?
まだ、決まってない。
申請もしなかったから、内定もない。
まあ、とりあえず医師免許は取ったから、医者にはなった。
福岡に帰ろうと思えば帰れる。
だけど、そうなると・・・。
ひろちゃんとは、二度と会えなくなるだろう。


このもやもや感をすっきりとさせたいが、それにはひろちゃんが必要だ。
この半年ほど、ひろちゃんを身近に感じては一緒に寝起きした事もあった。
幸福感を味わっていた。
ひろちゃんには思い人がおり、見合いをして婚約者もいる。
分かってるけど、自分の気持ちに気が付いてるので何も言えない。
もっと傍にいて欲しい。
もっと見てもらいたい。
だけど、このマンションは父親の物だ。
借りて住んでるだけだ。 

今日は、ひろちゃんに言わないと。
衣類を段ボールに詰め込んで持って行こう。
そして、また怒られて殴られるのかな…

メールしとこう。

 『福山博人様。
衣類をお返しします。
東京を離れるので置いてはおけませんので。

友より』


うしっ、と。
段ボール準備OK!
詰め込んだら下に降りて、自転車に括り付けるぞ。
んでもって、そのままマンションまで持って走る。
苦戦しながら詰め込み終わった段ボールは後でエントランスで見せるので、テープより紐で結ぶことにした。
そして、メールの返信も着てないのを確認する。


エレベーターまで往復2回して、到着するのを待つ。
開いたエレベーターからは、ひろちゃんが出てきた。
え?
 「東京からどこに行くんだ?」
 「福岡に、家に帰ります。」
 「いつ、戻ってくる?」
 「分かりません。」
あ、ちょうどよかった。
この段ボールに、衣類全部が入ってるので。これから持って行こうと思ってたところですよ。
持って帰ってくださいね。

ひろちゃんは溜息をつきながら呟いていた。
 「仕方ないな。居なくなるんでは、置いておけないな。」
少し話をしよう。
段ボールは…、持って入ろうか。


きちんと、お別れの言葉が言えるのか。
それは嬉しいな。
そう思いながら、部屋に戻った。

部屋で話をしては、最後の言葉を口から紡ぎ出した。
 「ありがとう。」
そう言うと、ひろちゃんは私をギュッと抱きしめてきた。
 「幸せだな」と、ポツリと口から出てきた。

 「ねえ、聞いてもいい?」
 「ん」
 「あなたは、私の事をどう思われてますか?」
 「え?」
 「どういうつもりで、ここに来たり私を抱いたりしてるのか。それを聞きたい。」
 「まるで女みたいなセリフだな。」
 「でも、知りたい。あなたの本音が。」
だって、あなたには理想の女性もいれば、婚約者もいる。
そういう人が、どうして私を…男を抱きたがるのか。
それとも、そっちの方に目覚めたとか?


 「私には婚約者なんていないよ。
理想の女性もいたが、それは過去のことであって、今はいない。」


 「それで?」



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