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(36)福山友明Side
しおりを挟む翌日。
ズキズキと痛む頭を押さえつつ、朝食の仕度をする為起きる。
時計を見るとまだ6時前だったので、顔を洗いピアノを弾きにクローゼットに向かった。
ここのウォーキングクローゼットは広いため、防音室が作られてピアノが置いてある。お父ちゃんが時々使ってるらしい。
ピアノって弾かないと音が出にくいんだよな。
数曲ほど弾いてると、いきなり拍手の音が聞こえてきた。
え?
音がした方を立って覗き込むと、ひろちゃんが居る?
「どうして、ここに・・・」
「ソファでは誰かさんが寝ていたので、ここで寝てた」と立ちながら言ってきた。
「ベッドは?」と聞くと
「あっちまで行くのが面倒」とのこと。
ったく、もう…、体調崩しても知らないよ。
ピアノの蓋をしめた私は勇気を振り絞り、口を開く。
「あ、あの…」
「ん?」
「昨夜は申し訳ありませんでした。」
いきなり謝られてビックリしたのだろう、少し驚いていた。
「気分よくされてる時にあんな事を言ってしまい、気分を害させてしまいました。
ごめんなさい。申し訳ないと思っております。
ただ私には思い出したくない事がありまして、その…興奮状態になり、そのまま思ったことをつい口に出して言ってました。本当に申し訳ありませんでした。」
ひろちゃんは黙っていたが、口を開いて何を言うのか予想がつかないため、私は逃げた。
「朝食の仕度してきますね。」
と、キッチンに向かった。
食後のお茶も飲み終わり、片付けにキッチンに行ったら、ひろちゃんも付いてきた。
1人で片付けられると言っても、中々動いてくれない。
仕方ないので、明日からのことを切り出す。
「明日からは実地が始まるのでそれに向けて最終チェックをしたいので、出来るなら…」
「あの頃のことはただ忙しかった。それだけかなぁ…。悪いな、何も役に立たないかも」
と考え込んでいたらしいが、アドバイスが欲しいわけではない。
人の話は最後まで聞いて欲しかったな。
出来るなら、私を1人にしてください、って言いたかった。
なので、新卒で勤務した当時の事を聞いたりして過ごした。
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